Episode:11 神話
◇Imad
「やっぱ昼間とは、雰囲気違うな」
「うん」
茜に染まった夕暮れン中、俺とルーフェイア、また港へ降りてきたところだ。ちなみにシーモア他の連中は、気を利かせてちゃっちゃと学院へ戻ってる。
――けどなぁ。
気を利かせたのが悪いってこたねぇけど、ルーフェイアの場合はンなものどっかへ落としちまってるわけで。
「すごい、海が金色!」
なんせこの調子だ。
もっとも年より見かけが幼いから、これもけっこう似合っちゃいる。しかもいつもと違って可愛らしいカッコしてるから、言うことナシだった。
「こんな色……初めて」
たしかにこいつの言うとおり、今日の海はきれいだった。夕焼けに染まった海が、陽の光に煌めいて、文字通り金粉でも撒いたみたいだ。
「撮影機でも、持ってくりゃよかったな」
「ううん、いい」
写すと色が消えるっていうのが、こいつの言い分だった。
「それに戦場じゃ、そんなの写すヒマ、なかったし……」
「――そうだよな」
こいつの心から、やるせないほどの悲しさが伝わってくる。
優しくて泣き虫で――なのにこいつが育ったのは、地獄とも言える戦場だ。
その辺のことは、俺はこいつのお袋からある程度聞かされてた。しかもついでに、保護者を頼み込まれてる。
ただ……昼間の騒ぎを見る限り、実際はもうちっと複雑らしかった。少なくともでかいバックを持ってるのは、間違いない。
少しだけ迷って、俺は口を開いた。
「昼間のナティエスじゃねぇけど……お前って、ホントはなんなんだ?」
ルーフェイアのやつがうつむく。
「別に言いたくなきゃ、かまわねぇんだけどよ」
「――シュマーなの」
「はい?」
思わず妙な返事を返す。
っつーか、今とんでもないこと聞いた気が……。
「まさかとは思うけどよ、シュマーって――あのシュマーか?」
「イマドがどのシュマーを言ってるのか、わかんないけど……。でも多分、そうだと思う」
「――マジかよ」
ほかに言いようがなかった。
シュマーってのは、軍事関係者の間じゃ裏で有名ってやつだ。っても実態はなんだかほどんど分かってなくて、代々傭兵をしてて、ガキを戦場で少年兵として育てちまうって話だけが知られてた。
けどまさか、この華奢なこいつが、その「シュマー」って……。
しかも昼間の様子じゃ、同じシュマーでもルーフェイアのヤツ、そうとう上のほうの身分(?)だろう。
ただどっか、俺は納得もしてた。
「どうりでお前、上級傭兵並みなワケだよな。つかシュマーなら、そうじゃないとダメなんだろうし」
こいつのバトルはたまに目にすっけど、はっきり言って上級の先輩たちをヘタすりゃ上回る。
だけど俺の一言に、こいつときたら、メチャクチャ悲しげな表情になった。
「それ……違うの」
「違う?」
泣き虫のこいつが泣かないのが、コトの重さを表してた。