第14話
「皆そろそろ腹も膨れたであるな!この度新たに我がエルグランティ領の伯爵となった一家を紹介したいのである。オラフ=オブ=ワンアイズ、この名を知らぬ者は居ないであろう。エレメントマスターとして今をときめく宮廷魔道士である。その一家がこのエルグランティ領の伯爵に就任したのである。彼は我が友であり、良き冒険者であった。この度の受勲、盛大に祝おうではないか!」
会場が湧き上がる。
隻眼のオラフ、その名は今やただの冒険者だった彼とは違う。エレメントマスターの称号を手にした宮廷魔道士である。あれから日々強くなったのはエルス達だけではない。
「紹介に預かったオラフ=オブ=ワンアイズだ。所謂貴族としては未だ未熟な部分はあるがよろしく頼む」
当主がそんな短い挨拶でいいのか!と思ったがここはバロン公爵の派閥というだけあってかなり砕けた感じの貴族達が多いらしく特にブーイングがある訳でもない。
というよりこの国の貴族の性質的にそういう輩が多いのだとか。
その理由としては魔物しかりダンジョンしかり、貴族としての義務で領民を守らねばならない故、本人自体の強さも求められる。テーブルの上で策略を巡らせるだけしか能がない貴族は貴族ではないのだ。
それ故元を辿れば冒険者の血筋の者が多く、又そういった側面がより求められるのだと思う。勿論だが如何にも貴族らしい輩もいるのだがそういう人間はこの派閥には残らないのだろう。恐らくあの筋肉ダルマはそう言うのが嫌いだから、有無を言わさずその筋肉による粛清を行なったに違いない。
そして次々と家族の紹介も終わり最後天使の番を迎えると会場は大いに盛り上がった。
「うむ。一通り紹介が終わったのである。後は個々に交流を深め、適当に解散するのである」
公爵の締めの言葉が終わると俺たちの周りに多くの人が集まって来て父上やら母上と話をしている。
そうした中俺たちも貴族の子供達同士交流を深めるのだが
「初めましてマドモアゼル。僕はテテュス侯爵家次期当主たる長男のホルスだ。君のような天使に会えて僕は天にでも来てしまったのかと錯覚してしまったよ」
「抜け駆けはよくないぞ!ホルス!俺はダインズ伯爵家長男のラインだ!よろしくな」
「おいおい君達僕が最初に彼女に目をつけたんだぞ!僕はハムチキン伯爵家長男のフライだ!よろしく!」
「ふん、君達にこの天使はふさわしくない。大人しくそこのエルスとやらと仲良くしていればいい」
「てめー侯爵家だからっていつも鼻に触るんだよそのキザったらしいセリフ!」
「ぼ、僕こそ君にふさわしいんだ!」
こう言った場に慣れてないと言うか家の人以外と余り接することがながったユリーは壁の花ではなく壁に天使の羽根が生えていた状態だったのだが、こうなるよね。
見事に俺は眼中にない感じ。
「こら!あんた達ユリー様が困ってるじゃない!辞めてあげなさいよ」
「「「出たな女番長アイナ!」」」
「あら?いい度胸ね?鉄拳制裁をくらいたいのかしら?」
「そ、それだけは勘弁を」
「悪かった!俺が悪かった!」
「いくら公爵家令嬢を蔑ろにしたとは言えご慈悲を!」
「エルスも見てないでなんか言ってやりなさいよ」
「んーいやさ、俺以外とちゃんと話せるかなと思って。まぁこうもぐいぐい来られたら流石にあれだけど天使だから仕方ないさ」
「ですよね!義兄さま!」
「お前に義兄さまと呼ばれる筋合いはない!ユリーを嫁に欲しいなら俺の屍を越えてゆけ!!!」
「いや、それ俺のセリフだからね?」
ここで父上登場。
「父上が出るまでも有りませんよ!」
「そうは言ってもな父親として言って見たいセリフNo.2くらいのセリフだよ?ね?」
「だが断る」
「おにいちゃんとお父さんを倒せたらお嫁になる」
おいユリーそんな事を言ったら!ここが戦場になってしまうぞ!
なんか大人までこちらを振り向くし!
「何を楽しそうな事をしているのである!我輩も混ぜるのである!」
酒で酔ってゆでダコみたいになった公爵までもが乱入して来た。もうカオスだよこれ。
「ちょっとバロン!あなたが混ざってどうするの!それなら私が相手してあげる」
母上、怖い、怖いよその笑顔。
「エ、エリー殿、ここは大人らしく我慢するのである」
「公爵だと言うのに全く困った父上ですわ」
「そ、それよりエルス!僕は君に勝負を挑む!」
「お?そこは空気読んで大人しくお話してればよかったものを」
「でもエルス生産系スキルばかりじゃない。戦えるの?」
「ばかいえ!俺には狩人とかほらあれとか…」
うん、無いわ。
き、基礎魔法でさなんとか戦えるよね?いや錬金術もさ君の手で切り裂いてとかさ言ってるし!
「え?あの宮廷魔術師オラフ様の息子なのに?長男のライオ様は魔術師学院を卒業後魔導騎士団に入ってご活躍されて、次兄のトール様は教会の聖教騎士団に光と治癒魔法が目にとまりスカウトされたのに?三男のエルスくんは生産系スキルばかりなの?てっきり魔法スキルばかりだと思ってたけどそ、それなら僕でも勝てる気がする」
「うるさいぞフライドチキン」
「ふ、ふらいどちきん…」
「ハムカツが良かったか?」
ハムカツ美味しよね。半◯衛のハムカツは至高。あのチープさがいい。
「よし、ならば戦争だ!ハムカツ!抜け駆けはよくないからな!」
「ラインにハムカツも僕が1番に声を掛けたんだがね」
「ハムカツって言わないで!」
「うむ!若いとはいいことである!我輩とオラフも昔はよくぶつかりあっていたのである!盛大に暴れるのである!!!」
公爵の許しも出たので、さてひと暴れしますか。
俺たちは公爵に連れられるまま外に出る。
他の貴族達も余興が始まったとばかりに付いてくる。
賭けも始まった。胴元は我が母である。
倍率はホルス1.1倍、エルス1.3倍、ライン1.4倍、フライ3倍の大穴である。
かわいそうなフライである。
事前にスキルはある程度公表され、いつの間に用意したのかボードに色々書いてある。
ホルスが1番人気だ。まぁ侯爵家なのだから順当と言えば順当だろう。
「レディースエンドジェントルマン!これより父である俺を差し置いて我が娘ユリーをめぐる小さき男同士の戦いが始まろうとしております。この勝負の行方や如何に!司会進行は私、オラフ、解説はバロン公爵と我が妻エリーが勤めさせていただきます。バロン公爵、この度の戦いどうみますか?」
ノリノリである。意味がわからない。なにその拡声器見たいな魔道具。それに椅子に机まで用意されてるよ?
「うむ、順当に行けばオッズ通りの結果であると思うがあの大賢者様の教えを受けたエルスが生産系スキルでどう戦い抜くか見ものである。何しろ戦闘系スキルは弓、投擲くらいなのであるから」
「そうね、それを生かして生産系スキルで武器を作って対抗するくらいはすると思うわ」
「残念なことに俺の持つスキルでエルスが持つのはテイマースキルのみだからな。それにまだ魔物をテイムしていなかったと思う。さて他の対抗馬はどうでしょう?それでは各父親に聞いてみたいと思います」
「ズルズ=オブ=テテュスだ。我が息子は火魔法と風魔法が得意なのだがいかんせん気取りたがりなのがたまに傷なのだ。相手の実力を見極め驕りを捨てればいいのだが....」
「カール=オブ=ダインズです。ラインは剣術、武術が得意で身体強化もそれなりにやれるからそこから繰り出される速攻はなかなかのもんですよ。ただ魔力と体力がまだまだなので短期で決めてくれればと…」
「ボイル=オブ=ハムチキンだ。僕の息子がまさか名乗り出るとは思わなかったよ。防御魔法が得意でね。如何に防いでカウンターを決めれるかにかかってるかな?ただ意気地なしなのによくも前に出てくれた!僕は嬉しいよ!」
「以上観客席からでした。それでは今回のルール説明ですが、なんとエルス1人に対し3人の勝ち抜き戦です。ホルス、ライン、フライの順で挑むことになります。1番最後のフライは有利だが他を出し抜いての大穴だ。エルスは勝ち抜く事が出来るのか?負けても父さんがいるから安心して負「あなた?エルスが負けるわけないでしょ?」「はいそうでした。それでは審判のレフィーアの合図で第1試合、エルスvsホルスの戦いが始まります。それではレフィーア宜しく!」
「ふふふ面白いことになったじゃないエルス」
「主にうちの両親とバロン公爵のせいだけどね」
「まぁいいじゃない。今までの特訓のせいか見せてやりなさい。鑑定したところあなたじゃ負けることはないと思うわよ?」
「大賢者様のお墨付きを貰ったところ悪いけど、僕も負ける気は更々ないのでね。せめて楽しませてくれよ?」
「来いよホルス」
「では試合開始!」
ゴングが鳴り響く。こいつらどんだけ準備がいいんだよ!と心でツッコミを入れたい。
かくしてユリーをかけた戦いが今幕を開ける。
安心しろ、兄さんは絶対に負けないからな!
1週間ぶりの投稿となります。かなり期間空いてしまい申し訳ありません。明日も更新できたらなと思います。
ブクマ120超えました(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎評価も少しずつですが頂いております。皆様読んで頂き感謝感激雨霰。さらなるブクマや評価、感想を頂けると励みになりますので宜しくお願いします!




