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Pseudo World  作者: 織田 伊央華
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第一章「演習」

第一章「演習」

 2054・10・21 水曜日 10:23 第二東京都5区 武蔵野高等武術学校

「えーでは、昨日の続きから始めます」

 まだ残暑残る十月、力を弱めた日差しが窓際の生徒たちを心地よく照らしている。教室の前中央に置かれた教壇には頭を白くした初老が、古びて皴の入ったスーツに袖を通している。

 初老は机に寄りかかりながら教員用の携帯端末を左手で操作、背後の電子黒板に次々と資料を表示させていった。

「えー、前回も話したとは思いますが、15年前の西暦2039年4月25日に我々人類は未知なる敵と初めて遭遇しました。これらは不思議なことに宇宙からの来訪者ではなく、ゆがんだ次元のはざまから来たと学者たちの中では呟かれていますが、今現在に至っても彼らの出現のプロセスは解明されていません。ロシア北部の山岳地帯に突如出没した彼らは当時の証言から背丈や骨格、容姿などは人間とほぼ同じでした。しかし彼らは我々と異なる言語を話し、接触直後いきなり襲い掛かって来ました。この時は奇跡的にも接敵したのが山岳部隊だったため事なきを得ました。のちにこの事件はファーストコンタクトと呼ばれるようになりました。」

 初老は一度そこで話を切ると再度端末を操作、別の資料を黒板に表示させる。

「この画像は有名ですね」

 そう言った初老は一枚の画像を拡大表示させる。

「ファーストコンタクト当時にネットなどでたいへんよく流れていましたね。やがてこの生物の姿・形がファンタジー世界のそれと似ていることからオークと言われるようになりした。捕獲されたオークの知能は我々の言語を理解するどころか、赤ん坊並みでした。襲撃の際に使用した武器類はナタや剣など、技術力からして我々の歴史で言う数百年前と同等ほどしかありません。そのことも理由に当時の国連はこの事態に大した策も打たず、放置してしまいました。」

 しかし、と初老は声のトーンを一つ下げる。

「2039年9月9日。世界各地でオークが出没。なんの対策も打たなかった国連諸国は当時90億にまで迫ろうとしていた人口を激減させました。これが後に語り継がれる大戦です。ではなぜ世界最強を誇っていたアメリカをはじめとする最新の武器に身を固めた軍隊が敗北を余儀なくされたのか、ですが。残念なことですが我々は古代からある戦法に敗北したのです。人海戦術。この一言で説明がつきます。残念なことに当時の軍人の数は総人口に対して1%足らず、長い間人類はあまりにも平和すぎました。20世紀の第二次世界大戦後、大規模な戦争は一度も起きず、各国とも軍事力を衰退させてゆきました。これが仇となってしまったのです。」

 初老はひとつ、深いため息を吐き出す。

「大戦の際に確認されたのは何もオークだけではありませんでした。巨大なナタで武装したトロル。これらには通常の弾丸は役に立ちません。高機動を戦法に取り入れ、巨大なハイエナを乗りこなすレーグ集団。これには色々と手を焼かされたと聞いています。長い首と鋭利な歯を持ち、翼竜のように自由に空を飛ぶグリーク。これは個体数は少ないものの戦車を持ち上げ、護衛艦をも大破させたとの事例もあります。」

 そこまで話した初老は何を思ったのか少し間をあけた。

「それから15年。大変な痛手を受けた人類は復讐に身を燃やしました。それは戦後武器を自ら持つことを禁じていた日本を立ち上がらせるほどのものでした。そして急遽改正した憲法の元、民間軍事会社による傭兵制度が発足しました。我が校も弓月民間軍事会社が設立した養成学校です。自ら武器を取り、たた・・・」

 そこまで話した時、不意に終業のチャイムが鳴った。何年も変わらないチャイムの音を出すスピーカーに軽く視線を向けた初老の講師は、続きは来週です、と短く言うとゆっくりとした足取りで教室から出ていった。

 そんな萎れたスーツ姿の講師を見送った少女はふと外から吹く風に目を細める。視線の先に広がるのは、記憶にはないが15年前とは様変わりした町の様子だった。立ち並んでいた高層ビル群は軒並みなくなり、せいぜい20階建てのビルの高さが一番といえる。当時世界最高の高さを誇っていた電波塔・スカイツリーは視力の良い少女でも辛うじて視界の端に捉えられるほどに遠い。

 第二東京都。15年前、世界でも有数の経済特区だった首都東京は廃ビルの並ぶ廃屋と化している。大戦でほぼ壊滅した東京は辛うじて政府機能を維持させつつ、旧八王子あたりに新たな都市を形成させた。規模も何もかもが以前の東京に劣ると言われてはいるが、政府はそれほどもまでには廃れていなかった。当時首相だった森山最言もりやま さいげんは一代にして日本を復興させていた。ほぼ全滅した自衛隊の代わりに警察を中心とさせた即席の自警団を各県ごとに形成、その後憲法を改正させ、自ら武器を取り国民に宣言した。武器を取り、奴らを殲滅させよ、と。家族や友達を失った人々はその怒りを力に変え、その手に武器を取った。以後、日本は戦国時代のような燃える時代へとなりを変化させた。もともと技術大国と言われていた日本はその神髄を発揮させる。新しい武器の開発、それに伴う戦場での生存率の向上。

 そこまで物思いにふけっていた少女・坂上柚葵さかがみ ゆずきは友人の声によって意識を戻した。

「ユズキー、次の授業に遅れるよ」

 長い黒髪を頭の左右で結んだツインテールの少女が呼びかける。

「次って実習だったけ?」

「そうやー、担当は李先生やから遅れるとヤバいんよー」

「そうね」

 返事をした柚葵は自分の机の上にのっていた教科書類を中に押し込むとドアに寄りかかって待っている友人の元へと急いだ。

 私立武蔵野武術高等学校。現在日本には二種類の学校が存在する。それは傭兵になることを前提とした武術学校と通常の勉学を学ぶための学園。後者は言うまでもなく21世紀初期における普通の学校と差はない。しかし前者の武術学園は全く違う。まずはカリキュラムだ。通常の勉強、特に数学や歴史・政治など必要不可欠な教科は通常通りに勉強する。しかしそれは3割ほどにしか満たない。残りの7割は傭兵としての勉強だ。元軍人や自衛隊の現役の傭兵が教官となり、卒業までに最低限の武力を身に着ける。これが政府主導の元行われた政策の一つである。

 

 茶色い土と芝生に覆われた校庭に異様な集団が整列している。LPA社製GIN‐021正式名強化外骨格に身を包む少年少女だ。防刃と防弾を主要目的に2000年ごろから開発され、人口の筋繊維を織り込むことで通常の数倍の筋力を発揮させることができる。体にぴったりと張り付く簡易型の強化外骨格を身に着けた少年少女たちはよく見てみると個人個人で改造を許されており、邪魔になる部位をパージしていたり、新たに取り付けたりとしている。通常はこの上からそれぞれが所属するPMCの制服を着るのだが、訓練に着る必要はない。

 色とりどりのSES(強化外骨格Strengthening Exo Skeleton)を台の上から見下ろしていた女性が声を張り上げる。

「これより訓練を開始する。今日はスペシャルメニューだ」

 教官の口から出た言葉に少女たちは不平不満を吐き出した。

「まあ、うれしがるのもわかるが。今日は転入生も来ている、来い」

 李教官はそう言うと手招きをして一人の少年を呼ぶ。背丈は170センチほどで、細身の体だ。

轟木とどろぎ かおるだ。こいつはいままでアメリカにいて10歳で国立の養成機関を卒業、その後はシールズに2年いた現場たたき上げの傭兵だ。今回は日本のことを学ぶことと諸君らの戦力の底上げをするために私が呼んだ」

 李教官はそう言うとおどおどしている薫を蹴飛ばすように少年たちの中に入れる。

「冗談だ。博多から転入してきたんだよ。まあ、あそこの特殊クラスからの転入だからレベルはお前たちよりはるかに上だがな」

 わっはは、とオヤジのような下品な笑い声を響かせながら李教官は端末を取り出した。

「まあ自己紹介はこんくらいにしてさっさと始めるぞー。今日はチーム戦でレースをしてもらう。スタートはここ、んでゴールは演習林を抜けて第一射撃場だ直線距離で約3キロ。勝利条件は個人ポイント制、だが最初にも言ったようにチーム戦だからな。ああ、言い忘れてたが妨害は何でもありだ。何が起きても臨機応変に対応しろよ、以上。じゃ、所定の位置からスタートな」

 そこまで言うと李教官はズカズカと校庭を後にする。するとふと思い出しように途中で振り返る。

「ああ、言い忘れてたが轟木は3班な。坂上、面倒はお前が見ろな」

「は、はい」

 ほんとに面倒を押し付けられたなーと思いつつもユズキはは返事をする。

「よろしくね」

 形式的な挨拶をお互いに交わす。ユズキの班、3班は人数が5人で形成されており先ほどのユズキの友人も見える。

「まずは軽く自己紹介ね。私はこの班で班長をしている坂上柚葵、武器はM1911コルトガバメントと高周波振動型サバイバルナイフ」

 ユズキはそう言いながら腰のジョイントから銃とナイフを取り出して見せる。その動作で揺れるショートカットの髪がシャンプーの匂いか、オレンジのような柑橘系のいい匂いがかすかに香る。

「んじゃ、次はわたしか」

 そう言ったのはユズキの隣にいたツインテールの少女だった。身長はユズキよりも少し低めでまだ幼いころの面影が顔に残る。

「私は中島由里なかしま ゆり。武器はマグプルマサダのカスタム。ショートバレルにしててストックを畳めるようにしてるんや。あとはナイフが二本。ポジションはユズキと同じ前衛や」

 首を少し動かし、それにつられて揺れる黒髪はサラサラでかすかに柑橘系の匂いがする。

「次は俺の番だ」

 そう言って一歩前に出たのはなかなか体格のいい少年だ。180センチに迫る身長にがっつりと付いた筋肉は強化アーマーの上からでも解るほどに盛り上がっている。

「俺は横山勇気よこやま ゆうき。こんなナリしてるが工作と衛生兵を兼任している。荷物類の移動も俺に任せろよ。武器はメインにP90でサブにベレッタを持っている」

 にいっと笑うユウキの笑顔は小学生のような無垢さを感じさせる。

「次は私ですね。」

 先ほどのユウキの自己紹介と対照的に小さな声を発したのは小さな女の子だった。150センチもないほどの身長のためか背中に背負う長大な狙撃銃が見える。

結城彩音ゆうき あやねです。ポジションは偵察と狙撃で武器はL96のカスタムです。いつもはバレットを使っているんですが今日は対人訓練のようなのでこれにしました。個人的にはドラグノㇷのほうが・・」

「はいそこまで。銃のことになるとアヤネルの話は長くなるからねー。ああ、ちなみにアヤネルは銃の改造とか制作までこなすガンオタだよー」

 そう言ったユリの背中を子供の用にポカポカとアヤネが丸めた拳で叩いている。顔が真っ赤だ。

「ほんとはもう一人男の子がいるんだけど・・・」

 そこまで言ったユズキの顔が曇る。俯いたユズキの後を受け継ぐようにユリが口を開いた。

「えっとね、山城っていうんだけどね、この前の演習でポカやって厳罰中なんだ。あと一週間で更迭が解けるからまたその時に説明するね」

 ユリの言葉の後には気まずい沈黙が続く。そんな重い空気を背負いながらも仕方なく薫は自己紹介に踏み切った。

「轟木薫ポジションは基本的にどこでも構わない。武器はLPA‐34のカスタムとシグP226とDE50のカスタムだ。LPAの方はオーバーホール中だから今日は余っている装備を貸してくれ」

 そこまで説明したとき煌々とした瞳が薫を見つめていることに気付いた。

「えっと、なにかな結城さん」

 カオルは仕方なく話をアヤネの方に振る。

「LPA‐34って新進気鋭のLPA社の最新モデルじゃないですかっ!それもカスタムだなんて!もともと34は高性能ですが値段が高すぎて軍でも一部の部隊しか扱ってない珍品ですよ!それ持っていて、かつ改造が難しいLPA社のアサルトライフルをカスタムしてるなんて・・・・うらやましすぎますっ!」

 一気に喋ったせいかアヤネの肩は上下している。

「アヤネル、そこまで興奮しなくても・・・・それくらいすごいの?カオル君が持ってるのって」

「すごいってもんじゃないですよー。しかもさっき出してたシグとデザートイーグルだって一目見ただけでも様々なカスタムがしてありました。あそこまでできる技術者は国内にも数人しかいませんよ・・」

「ま、まあアーちゃんがそう言うならそうなんでしょ、それよりそろそろ準備しないと始まるよ」

 呆れ半分のユズキの言葉でようやく動き始めた面々は各々に準備を完了するとスタート位置へと足を向ける。

「とりあえずM4が余ってたからこれを使って」

 そう言ってユズキがカオルにアサルトライフルを渡す。重量約4キロ。現在グラスファイバーやカーボンが主流のアサルトライフルにしては大分重い。しかし、その重量をあえて気に入っている傭兵も多く。999事件以前に生産されていた銃を自分なりにカスタムすることが主流となりつつある。

 カオルはそんなM4を受け取るとホロサイトを確認し、折り畳み型の透けるとインストックを展開させた。使用弾頭は通常5.56ミリNATO弾だが、今回は演習用に事前にスタン(高電圧の電流を弾頭頭部から一気に流すことによって相手を無力化する弾。模擬弾とも呼ばれている。)とペイント弾を使用。念のためワンマガジン分の通常弾は携帯することになっているがほとんどがこの二つの弾に入れ替えられている。

「スタンか・・・」

 装填のチェックをしていたユウキが低い声でつぶやく。その表情は何か苦い思い出があるように取れる。

「ユウキは前回の演習で丁度首に当たって二日間動けなかったんだよねー」

 ユウキの顔を見て即座にユリが攻撃を仕掛ける。

「くうっー、あの看護師にされるがままの状態を思い出させないでくれ・・・恥ずかしくなる」

 怒り半分恥ずかしさ半分の表情しているユウキを器用なやつだなーと思いながらカオルは装備の点検を終えた。

「さて、からかうのもそのくらいにして作戦会議を始めるわよ」

「うい」

「うっす」

「はい」

「・・・」

4者⒋様の返事を返した瞬間それぞれの表情が一変する。

 ここで補足説明しておくが一般的な武術学園の卒業率は89%。これは途中で授業や演習についていけないなどの理由で退学した者も含まれるがそれは1%にも満たない。では残りの10%はなんなのか。それは卒業までの3年間で生き残った数である。2年生からは本格的な訓練が始まり、実戦に勝る経験は無し、という傭兵のポリシー的なもので全さ回答して2年時から実戦に投入されている。大体は本隊の後方支援や残党の掃討などの仕事だが、激戦区になるとそうは言ってられない。日本では東京エリアと博多エリアがそれにあたるが両エリアでの初戦での死亡率は3割を上回っており、平均生存時間は10分と短い。それを乗り越えてようやく傭兵としての仕事に就くことができる。なお初戦後に自ら退学する生徒も後を絶たない。

「第一目標は無傷でのエリア到着だけどおそらく他の部隊との衝突は避けられないわ。そうなると一番効率がいいのは敵と接敵しないこと、なお接敵した場合は速やかに離脱。なるべく戦闘を行わずに目的地に到着する。フォーメーションは目のいいアヤネを先頭にした索敵陣形。右翼を私、左翼をユリ、中心にユウキを置き予備武装の運搬をお願い。そしてしんがりを轟木くん、お願い」

 口早に説明したユズキは場馴れしているのか、それとも演習だから落ち着いているのかはわからないがはた目からは落ち着いて見える。

「カオルでいいよ。わかった、しんがりは俺が務める」

「ありがとうカオル」

 この時ふとユズキが見せた笑顔にカオルはドキッとさせられたことは周りになんとか悟られずに済んだ。

「じゃあ行軍速度重視で行くわよ」

「「了解」」

 全員の返事と同時に無線にCPコマンドポストから作戦開始の指示が届く。

「作戦開始、以後回線はオープンに」

「「了解」」 

 全員の大きな返事と共に演習が始まった。



 『前方クリア、前進』

 薄暗い森の中、時々吹く風が緊張を少し和らげる。夏でもないのに銃を構えたままの行軍は神経をすり減らしていく。先頭を歩く人間はなおさらだ。敵の待ち伏せ、罠、考えられる限りの予測を立てて進まなければならない。

 しかし、アヤネはこれは自分に向いていると思っている。三度参加した実戦でも配属された小隊で先頭を行軍した。一度目は3体。2度目は小隊規模の敵と遭遇、かすり傷を負いながらも無事生還できた。三度目の参加ではビルの上からの狙撃で仲間を援護した。しかし、一度目二度目と三度目では達成感のようなものが違った。それに気づいたときは自分に呆れた。スリルを楽しんでいる。アヤネはそう思った。極限状態での戦闘はかけがえのない何かをくれる。しかし狙撃にはそれがない。スコープに映る敵に照準を合わせてトリガーを引く、この動作の繰り返し。たまたまアヤネの銃弾は敵によく当たるため、周りの人間は才能だとか天からの贈り物だとかいう。アヤネはそんな言葉が嫌いだった。この世に神なんかいない。そんなとき突如前方数十メートルで草むらが揺らいだ。

 その瞬間アヤネのは今までの思考を吹き飛ばし、右の拳で後ろの仲間の動きを止める。それから流れるような動作で手にしていた狙撃銃のスコープで草むらに視線を向ける。

 止まる時間。アヤネの人差し指がトリガーに触れた時、草むらから白い丸い物体がぴょこっと顔を出した。

「・・・ウサギかぁ」

 後ろの緊張が一気に解れていくことを背中で感じながらアヤネは行軍を再開した。作戦開始から20分。移動距離にしてそろそろ4分の⒈に差し掛かるはずだ。しかし、ほかの班はおろか罠の一つも現れない。GPSで現在位置を表しているゴーグルには仲間のシグナルが青自分のシグナルが緑で点滅している。何かがおかしい。アヤネはそう感じた。いつもの演習では最後まで他の班と会わないことは多々ある。なにせ広大な敷地に存在する演習場だ。もともと東京都で唯一残っていた大自然の一角にこの学園はあるのだ、敷地内には山までも存在している。

 しかし、とアヤネは考える。

 静かすぎる。一回目に参加した実戦では山中の行軍で丸々二日間山で過ごした。心も体も疲弊する中で自然と感じたことがあった。森が静かすぎる時には気を付けろ。と、脳のどこか奥が警鐘を鳴らしている。自分の経験を信じるか。アヤネは迷った。

 しかし、と自分に言い聞かせる。戦場での迷いは命を失う。特に先頭を任されている今のような状態では仲間の命までも危険にさらしてしまう。その瞬間にはアヤネは決断していた。思考と同時にアヤネの右手が上がる。

『どうしたの?』

 アヤネの不思議な行動に気付いたユズキが素早く尋ねる。無線と重なって聞こえるユズキの肉声からはアヤネと似た緊張が感じ取れる。

『何かがおかしいです。森全体が沈黙しているようです。ほかの班の発砲音も聞こえません。そろそろ開始30分を迎えます』

 アヤネはそう言いながらもトリガーから指を外さなかった。

『俺も同意見だ。なにかおかしい、そんな気がしてならねぇ』

 とユウキも同意した。

『・・・わかった。コマンドポスト、こちら3班班長の坂上です。予期せぬ事態が起こっているものと感じます。』

 数拍の間。しかし、無線からの返事はなかった。

『コマンドポスト、応答せよ、コマンドポスト!』

 何度も問いかけるユズキの肩を一番後ろにいたカオルが止める。

『通信の感度は良好。これはおそらくわざと回線を遮断しているか、本部に何かが起きたかの二択になる。』

 カオルの冷静な分析に班の全員が息をひそめる。

『・・・わかった。班長権限で全員武装を通常弾に換装、警戒態勢で行軍する。むやみな発砲は控えてね、フレンドリーファイアなんてまっぴらごめんだから』

『『了解』』

 全員はそう答えると素早くマガジンを交換する。

『しかし、通常弾はあんまり持ってきてないわよ』

 自分のライフルの残弾を確認しながらユリが言う。

『わかってる。行軍速度を二倍に上げる。足音を殺しながら15分以内に目的地に到着するわよ。アヤネお願い』

『『了解』』

 再び緊張を全員の体に浸透させながら行軍を再開させた。

 

 ☆


 不気味ね。

 ユズキの率直な感想はそうだった。いつもは聞こえるかすかな葉音も聞こえない。不気味な静寂の中をユズキは進んでいく。

 進みながら自然と右手に握るガバメントに力が入る。手汗が尋常ではなく、何分かに一度は握り変えている。そんな現状に無様だと自分に罵る。実戦の参加は2度だが、二度とも命からがらの戦闘だった。通常、オークとの戦闘は中遠距離武器である銃での戦闘だ。これはオークが飛び道具など遠距離武器を弓しか持っていない事からも理解できる。しかし、乱戦になるとアサルトライフルなどは効力を失い、オークたちの持つナタや剣などが猛威を振るう。そんな中ユズキが見つけたのが二丁拳銃による格闘戦だった。土壇場の戦場で思いついた戦闘方法だが、このおかげで生き残ることができたとユズキは理解している。

 そんなことを考えていると不意に行進が止まった。もちろん先頭を行くアヤネの指示だ。無言の中、アヤネがジェスチャーで自分の両目を指さし、その後前方を指さす。

 その指のさす方向に視線を向けたユズキは驚愕した。視線の先には何度見ても見慣れないオークの姿があった。毒々しい黒々とした肌に荒い作りだがしっかりとボディあーあまーを身に着けている。右手には一メートルを超えるナタを握り、何かを探すように首をキョロキョロさせている。数は二体。ユズキはさらにいるのではないかと辺り一帯を見回すがそれ以上は見つからなかった。

 それを確認すると素早くアヤネの肩を二回軽く叩いた。首だけ振り向いたアヤネはユズキの指示で素早く狙撃銃にサイレンサーを取り付ける。狙撃の最大の利点は遠距離からの攻撃と、それを敵に悟られないことだ。しかし、後者は発砲音にて居場所がばれる場合がある。そのためスナイパーには常にサイレンサーの携帯が義務図けられている。ゲリラ戦を繰り広げるようになった現代ではサイレンサーの消音能力の向上が著しかった。2054年現在ではデフォルトで消音機能が付いたモデルも発売され、旧型の拳銃に取り付けるタイプではほぼ排莢音だけしか聞こえなくなるまで高性能化している。

 そんなサイレンサーを銃口の先端に取り付けたアヤネは素早くボルトアクションのL96狙撃銃の薬室に銃弾を送り込む。身長のせいで射線に入らないのかアヤネは立ったまま銃を構えている。重さ約7キロほどもある狙撃銃を構えるアヤネの姿勢はその銃の重さを感じさせないほど綺麗なものだった。

一拍ほどの無音。

アヤネは心拍を一定に保ち、照準をオークの頭に合わせる。声も上げさせずに目標を沈黙させる。これができない場合は仲間を呼ばれる危険がある。距離は50メートル、狙撃銃にしたら近すぎる距離だ。だが障害物の多い森の中での狙撃はこの距離でも難易度を跳ね上げる。

その時不意に照準が重なる。アヤネは無意識のうちにトリガーを引いていた。撃鉄が作動し、銃弾の信管を叩く。それと同時に爆発する火薬の勢いで銃口から無音の銃弾が飛び出す。毎秒900メートルにも及ぶ亜音速の銃弾が目標に向けて飛翔する。

直後に来る重い反動。アヤネはそれ肩で受け流しながら素早く次弾を装填する。再度の狙撃。排莢から次の狙撃までのタイムロスは一秒以下。その光景を後ろで見ていたカオルは感嘆の息を漏らした。通常立った状態からの狙撃は命中率を大幅に下げる。理由は至極単純だ。それは支えが自分の腕しかないからだ。通常の狙撃は伏せた状態からが常道だ。しかも銃事態を安定させるためにバイポッドなどを取り付けてから行う。しかしアヤネはその常識を打ち破るかの如く二発ともオークの頭を正確に吹き飛ばした。

『ナイスショット』

 ユズキは短くそう言うと足早に倒れたオークに近づいていく。

『全員周囲を警戒』

 倒れたオークの遺体を軽く調べながらユズキは素早く指示を出す。

 了解という返事を全員が返すとともに等間隔に円を描くように広がる。

『・・・どうやら斥候のようね。身に着けている装備からレーグに乗っていたようだわ。この森は結構密集しているから中までは入ってこられなかったようね』

 そう呟くとユズキはすぐに立ち上がった。

『事態は緊迫してるわ。この近くに中隊か少なくとも小隊規模のオークが出没してる』

 その言葉に全員の顔に驚きの表情が一瞬あわれた。

『死体はこの場に放置、最優先事項は集合場所に向かうこと、弾薬の予備も少ないし現状での戦闘はなるべく避けるべきだと考えます』

『それには同意だ』

 そう声を上げたのはカオルだった。

『しかし、このまま事態を放置すると最悪近隣の住民に被害が出る。だからこそ存在すると思われる最悪のシナリオは俺たちの手で確実につぶすべきだと思う』

 カオルの言葉に皆は沈黙する。ユズキとてそれは考えた。しかし、班の安全を第一に考える班長の責任を全うすることの方がユズキは最良の選択だと考えた。

『リスクが大きすぎるわ。敵の数は未知数。なおかつどこにいるのかすらも把握していない現状では危険すぎる。私は他の班と合流した後にオークの殲滅に向かうのが最良だと判断します』

 ユズキの瞳は揺らいでいた。そんな揺らぎを捉えたかのようにカオルが反論する。

『目標地点に到着したとしてもそこに他の班が合流するとは限らない。ましてや銃撃音一つ聞こえない現状は考えたくもないが全滅したと考えて行動するべきだ』

 カオルの意見ももっともだとユズキは思う。確かに合流地点に他のはんが来る保証はどこにもない。無線からの呼びかけもない現状では最悪のシナリオだがそう考えるのが妥当ではある。しかし、とユズキは再び考える。残弾の少ない現状で敵部隊との衝突はリスクが高い。

 そんなユズキの肩にふと手が置かれる。ユリだった。

『今回ばっかりはウチもカオルに同意や。リスクも高いけど、この付近には小さい子供もすんどる。あの子たちが死んだりしたらウチは自分を確実に恨む』

『俺も同意見だ』

 しばらく無言でやり取りを見ていたユウキもカオルの意見に同意した。ユズキはそれを見て決心した。

『わかったわ。最優先事項をオークの殲滅に変更。ただし、全員無傷で無事に帰ることこれが大前提です。これが損なわれると判断した場合は直ちに撤退します』

『『了解』』

 返事を返す班員たちの顔には笑顔が見れる。その笑顔をみた瞬間ユズキは思った。これでよかったのだと。

 戦場では時に最良の選択よりも最悪の選択をする場合がある。そんな無謀な作戦は吐かずとも失敗に終わるわけではない。人の意志とは時折奇跡を起こす。そんなときはたいていが地獄のような戦場で土壇場でひねり出される。

 指揮官がなぜそのような命令を出すのか。それは士気を上げることが勝利への近道だからである。人の意志はそのまま力へと直結する。歴代の英雄と呼ばれる人々もまたこれに準ずるものである。

 士気が跳ね上がった3班は武装を再度整えると索敵体系に散開、等間隔に散らばった。その状態でしばらく探索しているとユズキの無線に連絡が入る。

『ユズキ、見つけたで。11時方向の小高い丘の上に陣取っとる。ここから見える範囲ではレーグが5匹オークは20匹くらいおるな』 

 無線越しにユリの震える声が伝わってくる。ユズキはそんなユリに後退して合流してと言うと他の班員たちを集めた。


「敵は視認できる限りでは中隊規模のオーグ。武装は剣などの近接武器がメインよ。厄介なのはレーグね。確認できただけでも5匹はいるわ」

「見た感じけっこう統率がとれてたから指揮官がおるはずや。その指揮官さえ倒せれば・・・」

 実際に見てきたユリが拳を握る。

「そうね、一番いいのは誰かが囮になって集団からレーグを切り離し、その混乱に乗じて奇襲、指揮官を倒し、混乱した残りのオーグを殲滅するのが一番いいとおもうけど・・・」

 地面に図を描きながら説明するユズキの顔は今一つさえない。ユズキ自身もこれが一番いい方法だとは思っていないらしい。そんな時、カオルがふと顔を上げた。

「じゃあ、俺が囮をやる」

 その声に一同が驚きの声を上げる。この作戦では一番重要なポジションだがリスクが高すぎる。森の中とはいえ、レーグ5匹を同時に相手をするというのはどう考えても自殺行為だ。そんな全員の思いをカオルは押し切る。

「ただし、少し訂正させてもらう。俺が囮になってレーグを引きはがすのはそのままだが、最初何発か発砲してオークたちを混乱させる。この混乱を利用して指揮官を見つけ出しアヤネが狙撃でこれを撃破。混乱した敵を十字砲火によって一気に殲滅する。」

 話し終えたカオルにふと思いついたようにアヤネが言う。

「じゃ、じゃあレーグはどうするんですか?一人ではとても・・」

 そこまでアヤネが言った時、かすかにカオルが笑った。

「ユウキ、クレイモアか何か持ってきてないか?」

 その言葉にユウキがハッとする。

「解った、クレイモアはないが工作兵としての技量の見せ所だな」

 一瞬で理解したユウキに驚きながらもカオルは軽くうなずくとユズキに向きなおった。

「わかったわ、それで行きましょう。各自散開、作戦は5分後の1204に開始します」

「「了解」」


 ☆


 急がず、丁寧にとユウキは自分に言い聞かせる。

 木々の葉で遮られた日光がちらちらと手元を照らす。右手には圧力感知型の指向性地雷。SAL社製の旧型モデルだが、火薬からゲル状の科学物質にすることで従来のクレイモアなどに比べて大きさや威力が大幅に改良されている。

 そんな地雷の外装を取り外し、中央にある信管を丁寧に抜き取る。そして中央の信管の真下にある圧力感知用の装置を取り外す。その際に引き出された細い銅線を切断しないように細心の注意を払う。そこまでの工程を終えたユウキは深く息を吐き出す。

 夏でもないのにユウキの額からは大量の汗が噴き出していた。その汗を右手の甲で拭いながら背中のバックパックを地面におろし、中から細いワイヤーを取り出した。糸ほどの細さで構成されたワイヤーはかすかに差し込む日の光で鈍く輝いている。

 ワイヤーを慣れた手つきで切断すると、短いワイヤーの先端を先ほど取り出した圧力感知装置に速効性のボンドで張り付ける。数秒で固形化したボンドはワイヤーの先端をしっかりと装置に張り付けていた。それを軽く引いて確認したユウキは地雷を元通りに戻すと残りの二つも同様にワイヤーを付けていく。

 1分ほどですべて完了したユウキは先ほど長く切っておいたワイヤーに三つの地雷を次々に結び付けていく。等間隔に並び、垂れ下がる地雷は魚釣りの仕掛けを連想させる。

しっかりと結びついていることを確認したユウキは手ごろな枝を二本見つけると、先ほどの長いワイヤーの両端をその枝に結び付け、大きな木と木の間の地面に突き刺した。古典的な仕掛けだが、時には有効な打撃に代わる。

 最後に地雷を土の中に入れ、遠隔スイッチでオンにする。

『こちらÅ地点、地雷の設置は完了した』

『了解、こちらも準備はできた。速やかに目標地点へ移動してくれ』

『了解』

 淡々と指示を出すカオルの冷静さに舌を巻きながらも指示通りの場所に向かう。その時ふと見たゴーグルの右端の時刻が12:04に迫ろうとしていた。あと一分、心の中でそう呟いたユウキは足を速めた。



草むらに潜むカオルの心拍は一定のリズムを刻んでいた。時折吹くかすかな風に前髪を揺らしながらゴーグルのディスプレイを見る。そこには中央の点が点滅しながら時刻を表示していた。

実戦は久しぶりだ、とカオルは思う。ひと月前を最後に、その後は事務処理や引っ越しの準備などで忙しかったからだ。アジアでは激戦区の日本ではあるが、急速な復興によって人々は以前の暮らしへと徐々に復活してきていた。

しかし、と自分の右手を見る。そこには黒々と光るM4アサルトライフルが握られている。それは無力な人々を守るための力だ、とカオルは握る手に力を込める。そんな時、無線にユズキの声が聞こえる。

『時間よ、作戦を開始します』

 いつの間にか作戦の開始時刻になっていた。様々な思いを奥歯で噛み殺し、カオルは一歩目を踏み出した。

 自分の役割は重要だ。最初の突撃でなるべくオークの数を減らし、すべてのレーグを引きつける。大胆にも繊細さを兼ね備えた役割だ。カオルは走りながら、もう一度考える。レーグたちがいる場所とは正反対の位置に自分はいる。なるべく接近に気付かれずに近づきたい。

 オークたちに近づくにつれて木々が徐々にまばらになっていく。

 見えた。

 一段と高い大木の周りに20数体のオークの姿を肉眼で確認した。

 距離は30メートル。

 20、15

 あと数歩と言うところまで接近した時、一匹のオークが不意に振り向き、カオルの姿を確認した。その直後に驚愕に開かれるオークの瞳に5.56ミリ弾が殺到した。

 ワンマガジン分の弾、30発を数秒で撃ち尽くしたカオルは踵を返し、再度深い木々の中へと飛び込む。その直後をレーグに乗ったオークが猛スピードで通過する。

『突撃』

 必死に走るカオルの無線にユズキの声が聞こえる。その直後の遠くでの発砲音。どうやら無事に司令官の狙撃に成功したようだ、安堵し胸をなでおろすと同時にレーグの唸り声が至近距離で聞こえた。振り返る暇はない。カオルはレーグの通れないような木々の隙間を盾にしながら距離を一定に保っている。

 あと少し、そう思った瞬間、首筋に悪寒が走った。カオルは本能に従い、頭を下げた。その直後、辛くも獲物を逃したレーグの顎が鋭い牙と共に空振りをした。

 くそ。カオルは舌打ちしながら勢いを殺さずその場で転び、その瞬間で腰のジョイントからナイフを抜いた。

 レーグはすでに二度目の攻撃に入ろうとしている。地面にうつぶせに倒れたカオルの上にのりかかる。虎よりも大きな前足を間一髪で交わしたカオルは首からかけていたM4をナイフと一緒に持っていた。その直後、レーグが再度の噛みつき。今度は空を切ることはなかった。同時に鈍い金属音が鳴る。

「どうだネコ、金属の味は・・」

 そう言うカオルの顔の数センチ手前でレーグの顎が止まっている。カオルの持つライフルをガジガジと噛むレーグは不服とばかりに後退しようとする。しかしライフルが口から外れない。よく見るとライフルに着いたベルトがレーグの首に絡まり付いている。

「・・・くたばれ」

 ライフルから手を離したカオルは無表情でそう呟くと右手のナイフを逆手で持ち、レーグの首筋にブスリとさした。音もなく倒れるレーグから素早くナイフを抜くとカオルは再び走り始めた。

 先ほど倒したレーグにはオークが乗っていなかった。おそらく乗っていなかったため、早く追いつくことができたのだろうとカオルは考える。後続が徐々に近づいてきていることが全身が感じ取っている。

 ここだ、ほんの数秒走ったカオルは大きくジャンプした。そのすぐ足元で鈍い金属の光が見える。

数メートル先まで勢いで進んだカオルはふと振り向いた瞬間、莫大な音量と共に熱と爆風が襲った。



『状況終了。各員被害状況を報告して』

 小高い丘の上で足元に転がるオークたちを足でつつきながらユズキは無線で呼びかけた。視界の端にはユリとユウキを確認している。残弾を弾倉を抜いて確認しながら冷や汗を流す。二丁とも残り2発。おそらく他の二人も同じくらいだろう。

 そう思ったユズキは二人をジェスチャーで呼びながら数百メートル先で煙の上がる方に視線を向ける。

『・・・轟木君、返事をして。轟木君!』

 唯一返事のないカオルに呼びかけるユズキの頭の中をいやな予感がよぎる。やはり井堀で囮など無謀ではなかったのか。そう考えてしまう。

 その時、木々の間から黒く煤けたカオルがピョコと飛び出してきた。

「わりー、爆風で無線機とゴーグルがぶっ壊れちまって・・・」

 そう言いながらもカオルの足はしっかりと地面を踏んでいる。

 カオルの姿を確認したユズキはようやく全身から力が抜けた。


 これは余談になるが、今回のオーク出没事件は学園内で大きく話題となった。実際には他の班はとっくに集合エリアに到着しており、なぜか無線の通じない3班を捜索しようとしたとき銃撃音と大きな爆破音によって事態を把握した本部は、教員たちで部隊を結成して救出に向かった。しかし、到着してみたら辺り一面オークどもの死骸が転がっており中央の大木には寄り添うようにして3班全員が座っていた、というのだ。まだ実戦経験の少ない2年生で緊急事態にも関わらずオークの中隊規模を相手にほぼ無傷で勝利したことは世間をも騒がせた。のちの報告によるとオーク34体レーグ6体と言う数に3班の面々も驚いたほどだ。約一名を除いて。


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