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ひとつ砂山を作って

作者: 見崎志念

 公園のベンチに腰掛けて、いつものようにタバコをふかす。習慣になった日曜日の散歩。毎回ここでひと休みして、家に帰る。

 今日はやたらと快晴で、公園中の木々が陽の光に当てられて命の光を輝かせていた。眩しいような、心地いいような。暖かい、いい日だ。


 煙をひとつはいて、遊具の方に目をやった。今日は親子がふた組に砂場で一人で遊んでる子供にサッカーやってる五人組。普段だったらジョギングしてるおっちゃんとかいるんだが、仕事かなにかだろうか。


「まあ、忙しい時もあるよな」


 そう思いながらぼんやり眺めていると、砂場で山を作って遊んでた子供の方へサッカーボールが飛んでいき、山を崩してしまった。

 ここからじゃ何を話してるのか聞こえなかったが頭を下げる様子もなくボールを取りに来た子供は仲間の方へ戻っていった。

 酷いもんだ。まあ、子供だから仕方ないのかもしれないが、あれじゃあ可愛そうだ。

 泣いてしまうんじゃないかと思い、タバコを捨てに行くついでということで、砂場の子供に声をかけようと近づいた。

「よし、もういっちょがんばろー!」

 えいえいおー、っと一人で掛け声を出してまた砂山を作り始めていた。


 頬に水が流れてたけれど、その子はそんなこと気にもしないで、十分くらいかけてせっせと砂を集めて、ちっちゃくて、とても粗末な城を作った。

 その子は満足げに笑っていた。今一番幸せだと思っている顔で笑っていた。

 この子にとって、この粗末な城が今一番掛け替えのないものなのだろう。

 

 明日、少しは俺もボロっちい城の続きを作ろう。完成した時に、笑えるように。

一番大切なものって、その時で変わるわけで。

しかもその大切なものって他人からすればどうでもいいものなわけで。

でも、それでも手にしてる間って、幸せなんだよね

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