†エピローグ†
†エピローグ†
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孤独と書いてヒトと読み、
一人と書いてゼロと読む。
――これは、俺がヒトになるまでの初めの一歩。
――これが、俺がヒトになるまでの初めの一歩。
生まれたときから二人だった俺は、きっと人間以前のモノでしかなくて。
傷つけられることだけを恐れていた俺は、たくさんのモノを切り捨てて、ようやく人並みのヒトになった。
その代償として、たくさんのものを犠牲にした。友人とか年月とか、――ひとりの少女の、あらゆる全て。もう謝ることの出来ない場所へ行ってしまった人もいるけれど、恐らく現時点ではまだ、謝罪をしてはいけないんだと思う。俺がこの世界で、どうにかこうにか生きている内は。……それでもいつか、頭を下げに行こう。全てが終わり、でもどこかでは何かが始まっている、そのときに。
だから、今はただ、傍にいる彼女だけを精一杯想おう。
本当に――彼女には、あるいは彼女たちには、感謝を尽くしても尽くし切れない。人間以前だった俺に、一体何を感じたのか。何故遥か高いところから、その手を伸ばしてくれたのか。その問いに彼女は、ただいつものように笑って、答えてくれなかった。……それでも、伝わるものはあった、気がする。今の俺には、少しだけ理解出来た。
かくして、この物語は幕を閉じる。
けれどもちろん俺の汚濁と血の匂いに塗れた旅路は続く。
この壊れかけた世界で。みんなを救ってくれるとは限らない、冷たくもどこか優しい、淡雪のような儚さを持ったこの世界で。
確かな足場などない。日常は常に不安定で、ふとした拍子にぐるりと反転し、喉元に刃を突き付けてくる。
それでも。
殻を振り払った俺は、まだ未熟者だけど。
彼女が隣にいる間だけは、どうにかこうにかやって行ける。そう、確信していた。
――一度名前を捨ててまで、ずっと隣で俺を想い続けてくれたその強さは、痛みを感じるほどに胸に刻み込まれているんだから。
最初の一歩目は、愛する彼女と共に。
いつか、死が二人を別つその日まで。
さぁ、人間を始めよう――――
……こ、今度こそちゃんとエピローグです、完結ですよ! うん。その筈です。ようやく終わりました。
無駄な所で右往左往ありましたが、とにもかくにも、ここまでのお付き合いありがとうございました。余計なことは語らずに、静かに幕を閉じたいと思います。では、また機会があれば、そのときに。
……もっかい見直してこようっと。