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紅の鎖  作者: 華宮 優
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第8話


黒き翼の男は苛立ちを堪えきれずに側に置いてあるワイングラスを叩き割った。

異形の者たちは怯えた表情で主を見つめている。


それに溜め息を吐いて近付いていくのは顔が人間の女、身体が牛の化け物。元は人間だったが、この男によって化け物にされた。男がはじめて襲った場所の1人目の生贄だった。


男は一瞥すると、手を女の頭に置いた。

話すことを許された女は、話し始める。

「主よ。気を落ち着けて下さいまし。主の花嫁は必ず見つかりましょう。聖女カルマハは此の世に再び生を築いております。その証拠が主、貴方様本人が充分承知してるはず。まだ封印される以前の力を全て取り戻してはいないにせよ。」


女は口を一旦閉じ再び話し始めた。

男の手は、まだ頭に置かれている。

機嫌が損なわれれば女の身はこの世にないだろう。言葉を選びながら続けた。


「聖女カルマハの転生により、主の力は戻りました。それは以前の半分にも満たないものでありますが、人間が恐れる力に変わりありません。時間はかかるでしょう。この世界には国が13もあり、人間の数は星の数程いるといいますから。ですが、必ずや探し出せましょう。この国にいることは分かったのですから。あとはひとつひとつ潰していけば良いのです。どうか怒りをお鎮め下さい。」


男は女の髪を掴み上げ顔を向かせた。


「分かっていることをゴタゴタと。口煩い化け物だ。その口、喋れぬようにしてやろうか、あぁ羊の顔にでも変えるとするかな。ちょうど羊がいることだしなぁ。」


女の首元に牙を当てる男。女は空を見た。

村を監視している化け物が、こちらに向かっているのを目に捉えると口元をあげた。


「主よ、花嫁が捧げられました。」


男は、スッと顔を離し降り立った化け物を見やると、誰もを魅了する笑顔を浮かべた。



主が飛び去った後、女も飛び立とうと入り口に向かう。側にフードを被った者が寄る。気配を消し、音も無く近付いたこの者に鼻を鳴らす。裏で化け物たちを牛耳る者だ。


「ふっ、命拾いしたな。良きタイミングであった。」

「ふんっ、命拾いなど・・・この命など捨てたも同じ、どうなろうと私は構わない。が、気が変わってねぇ。私は運命の花嫁さんとやらを拝むまでは化け物でいるさ。」


女は飛び立とうと翼を広げた。すると背に重みを感じた。

珍しいこともあるものだ。


「お前も行くのか。」

「ああ、今日はなんだか高揚していてね。見に行くことにしたのだ。」


女はフンと鼻を鳴らすと飛び立った。


フードを被った者は、あの時と同じ高揚に笑みを浮かべていた。


(この高揚。ヤツを見つけ出した時と同じものだ。今日の生贄、もしかしたら本物か。くくく。漸く・・この日が来たか。くくく。)






黒き悪魔は空から、捧げられた女を見る。

衣を羽織り羊と共に縛り付けられた女。

此方に気付くと睨みつけてきた。


(ふっ、この村の女は気が強い者が多いな。他の女たちは泣き喚くというのに。)


男はニヤリと笑んだ。


生暖かい風が巻き上がる。


化け物たちの異臭と共に、かすかな香りが鼻をくすぐる。



ブワッ


男の脳内を駆け巡る。はるか昔の記憶。



男は歓喜の表情をし、天を仰ぎ見る。今日は暗黒の雲が重たくかかっている。


「私の勝ちだ。神よ。」


男は、再び女を見つめ、狂気の笑みをもって降り立った。


目の前の女からは、芳しい艶やかな香り。強い生命の匂い。

男は力が漲るのを感じ取った。

女は鋭い眼差しを向けてくる。


「女よ、そなたは我の運命の花嫁か?ただの肉の塊か?」

(見つけた、見つけたぞ、お前は我の運命の花嫁だ。)

「さぁ、運命を我に委ねるのだ。」


男は顔を女の首元にうずめ、香りを肺一杯に吸い込む。

目眩がするほどの女の匂い。

今にでも犯したいほどの欲望にかられる。




(この女が聖女の生まれ変わり。くくく。さぁ我の血となり力となれー・・・)


口をあけ鋭く尖った牙を突き立てるー・・





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