第7話
血を吸われた亡骸は、降りてきた醜き者たちに肉を噛み千切られ、咀嚼され、吐き出された。
飛び去っていく異形の者たち。
その場に残されたのは、周囲に飛び散った肉片と項垂れる人々だった。
早朝、女の悲鳴が村中に響き渡った。
集まった人々は、林檎の木の枝に首を括った男を目の当たりにした。
憎悪と悲壮を浮かべるその表情は、見る者たちを畏怖させた。
この日、人びとは村を纏め導く者を失ったのだった。
3人目の生贄は、死を覚悟した表情で羊に縛り付けられている。
縛り付けている若い男は悲痛な顔を浮かべ、その場を立ち去った。
女は数ヶ月前に愛する男を亡くし、数日前に大切な弟を亡くしていた。
たった1人の肉親を残して逝く事が女に心残りを抱かせたが、決心は揺るがない。
女の母親は、女たちに支えられながらも娘の運命の分かれ目を見届けようとしている。
静寂の中、
女の運命を握る黒き悪魔が降り立った。
この日、女の運命が大きく変わる。
女が男に縛りつけられているのを、村を見渡せる丘の上で睨みつけているのは体中が毛で覆われている男。
隣には、大きな狼。
男は大地を震わせる声で命令を下す。
狼は山々に行き渡る鳴き声をもって、決行の合図をした。
「時はきたー・・・。」