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紅の鎖  作者: 華宮 優
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第4話

広場には村人全員が集まっている。皆が悲壮に満ちた顔をしていた。抵抗できない圧倒的な力の差。未知なる者の恐ろしい力。僅かな希望さえ打ち砕かれた。



女の遺体は、墓地に埋葬された。隣には夫の墓と子どもの墓。夫はほんの数ヶ月前に亡くなった。ようやく立ち直ったところだった。2人で生きていくと周囲に強く誓った女は、もうこの世にいない。あの世で親子3人で会えただろうか。黒き悪魔に一手もあげれなかった自分たちを許してくれるだろうか。




あの時、人々は動くことも、息をすることも出来なかった。



異形の者たちがケタケタと不気味な笑い声をあげてから、女の様子が変わった。目は虚ろに、口をだらしなく開け、身体を揺らし始め、牛の化け物が女に近付いて何かを口にすると目を充血し獣のような呻き声をあげた。空から黒き悪魔が降り立ち、女の首に顔を埋めると聞くに耐えない叫び声をあげ身体から汗や涙、唾液に汚物を撒き散らしながら絶命した。




自分たちを監視しているのだろう悪魔の手下たちは、村人を嘲笑うかのように宙を舞っている。




2人目の生け贄の決定は、ぎりぎりまで村人たちで話し合われた。




村の長は、悲痛な顔で広場中央の人物を見ていた。薄い衣は裸体を隠す役目などせず、生まれたままの状態を周囲の者たちに晒す。まだ嫁入り前の身体を、あんな恥ずかしい格好で悪魔に捧げなければならないことに、それをどうすることも出来ないことに、親として情けなく自分に怒りを覚える。


あの娘は、お転婆だが人一倍正義感が強かった。周囲の人々を愛し、そして愛され、真の通った女性に成長した。

男は、娘が連れてくる生涯愛すると決めた男を1度は追い返してやろうとか、孫には沢山の玩具を作ってやろうだとか、孫の子どもを見るまでは生きたいななんて、妻と笑いながら話し幸せな将来を楽しみにしていた。だけど、現実はこれだ。これが現実だ。



娘はあの恐ろしい悪魔の花嫁になろうとしている。

もし、もし花嫁でなかったら・・・男は口を抑えた。はらはらと涙が頬を伝う。



娘は、ただ一点を睨みつけていた。



黒き翼を広げ此方に向かってくる悪魔を。



男は願う。どうか花嫁であってくれ、と。


あんな悲惨な末路を辿ってくれるな、と。




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