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紅の鎖  作者: 華宮 優
3/13

第3話

異形の者たちは空を舞い、村は再び闇に侵された。異形の者たちは悲鳴のような叫び声のような鳴き声をあげている。村人たちは震え上がった。



村人たちの脳裏には、ほんの1日前に起きた惨劇が浮かび上がる。


暗黒の空、恐ろしい鳴き声、血の海、噎せ返るほどの鉄の匂い、大切な人の無残な成れの果て。



ある者は意識を失い、ある者は嘔吐し、ある者は悲鳴をあげた。


年老いた父親を殺された男は、憎悪の目を異形の者たちに向け、尊敬していた師を殺された男は、拳を固く握りしめた。

子どもから永遠に引き離された女は、今まで虚空を見ていた目に光を戻し、その目を吊り上げ外へ飛び出し異形の者たちへ叫び、呪いの言葉を吐いた。それに続いて出て行った孫を肉の塊にかえられた女は、怒りを石に乗せて投げつけた。




空を舞う者たちはケタケタと笑い出す。


それが始まりを示すのだった。


下の者たちは、異変を感じて静まり返る。







人間の顔と牛の身体をした化け物が、生け贄の女の前に降り立った。化け物は鼻を鳴らし、女にニヤリと笑って見せた。鉄と汚物を混ぜた臭いが鼻を刺激する。女は顔を背けた。化け物は顔を近付け女の耳元で囁いた。


低い重い声だった。女は唇を噛み締めた。


「女、お前は我ら主の運命の花嫁か?それとも、ただの肉の塊か?


我らは、主の花嫁を望む。

若い娘、そして生娘よ。


お前、子を産んだことがあろう?


赤子を産んだ匂いがするぞ。

あぁあぁ、乳が出てるな。


この匂いに、、、、この味、


どこかで、どこかで味わったなぁ。


いつだったか、いつだったかなぁ。


そうさ、そうさ最近だぁ。


うんうん、あの肉は乳で出来てるのかと感心するほどだった。


あの肉は、美味だった。


そうだ、そうだ、あの肉も、こんな乳の味だったなぁ。


あの幼子の肉は、お前の乳の味がして美味だった。



ギャヒャヒャヒャヒヒヒヒーーーイギャアァァァアアアーーっっ!!!」





化け物の喉元から緑の液体が飛び散った。

女は鬼の形相で、刃物を化け物に何度も何度も突き刺した。


刃物は羊の腹下に隠してあった。隙を見て悪魔に突き刺すために。女は復讐を誓っていたのだ。


だが、相手はコイツだったのだ。

復讐する相手はコイツだったのだ。


女は、縄を切り離し、憎悪の刃を化け物の喉元に突き刺した。


あぁ、あの子は可愛かった。

私とあの人の子ども。

くるくる表情を変えて、私たちはそれを見るのが好きだった。

成長が待ち遠しかった。


あぁ憎い憎い憎らしい。


あの子を奪った化け物め。


殺しても足りない。


あの子の未来を奪った化け物め。


お前も、あの子のようにーあの子より酷く殺してやる。


ーーーーー・・・



ドサリ



黒き悪魔は、塵を捨てるように投げ捨てた。

それは生け贄の女だったもの。肌は赤茶色に変色し、干からびていた。顔は歪み面影も無い。




「我に刃を向けるなど考えるとは愚かな。ククク。」



悪魔は人間たちを見回しながら、赤く染め上がった唇を舐めた。


「異なる者の末路よ。次は2日のうちに差し出せ。」




顔は人間、身体は牛の化け物は羊の首根っこを加えて飛び立つ。



「羊は、有難くいただいて行く。」




黒き悪魔は村の長の追う声を無視して、村をあとにした。





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