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紅の鎖  作者: 華宮 優
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第2話

村の中央、昼間の賑わいの最中に起こった。この惨劇によって広場は、年老いた者たちと子どもたちの血によって赤黒く染め上げられた。異形の者たちは、身体を裂き血肉を食らうべき者を選択し容赦無く実行した。


これによって、村の生き字引である知識人たちと将来の村を支える希望が消えた。




女は、目の前の突如として起こった出来事に茫然としていた。あっという間の出来事だった。


スカートが赤く赤く染まっていく。


今まで隣に居て、手を繋いでいた弟の腕のみが女の左手に握られていた。


ピンとはった糸が切れた時、一気に周りから 悲鳴と怒声があがり、大地を震わせた。



それを楽しむかのように羽根を鳴らし、嘴を鳴らし、異形の者たちは再び空へと舞い上がった。入れ変わるように、黒き翼を広げた男が遺された者たちの前に優雅に降り立った。



この世の者とは思えない美しい男は、誰もを魅了する透き通った声で言葉をはなった。



「我の運命の花嫁を差し出せ。さすれば、穏やかな暮らしが訪れよう。もし、我の前に異なる者を差し出せば、屍になるであろう。」


「3日のうちに、この衣のみを着せ、羊と共に縛り付け、ここに捧げよ。」


男はそう言い終わると、淡く紫と青く光を放つ薄い衣を林檎の木の枝にかけると飛び去った。



広場は恐ろしい程に静寂していた。




その後、村中の若い女がかき集められた。

あの一方的なまでの力の行使によって、人々は自分たちには到底逆らえないことを知る。


「犠牲を最小限にする」には、あの黒き翼の男の言うとおりにするしかない。


「1人の命が大勢の命を助けるのだ。これは、これは、、、これは、やむを得ないことなのだ。あの黒き悪魔に誰かを差し出さねば、私達は無残な血肉の塊に成り果てるだろう。そう、これは、、、ゔぅっ」


悲痛な顔を覆い堪えきれずに嗚咽を洩らす。周りの女たちも涙を流した。

村を纏める役目のこの男は、残酷な仕打ちをこの年若い者たちにせねばならぬ責め苦に嘆き悲しんだ。けれど、時は待ってくれない。

やらねばならない。残酷な選択を。







広場の中央に、白の花弁が敷き詰められた上に衣のみを羽織った女が、羊と共に麻縄で縛り付けられている。この女は、自分がいくと手を上げた者の1人。先の惨劇により、まだ乳のみの息子を殺された。恨めしい男に復讐を。そして、この村に救済を。我が身を犠牲にする覚悟を決めた。




男衆は、槍や剣、斧を持ち取り囲む。

女たちは、宿屋の食堂に身を寄せ合いながら見守っていた。




異形の者が、聞くも悍ましい鳴き声で主人に知らせたー・・・


準備が整ったことを。






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