第三話【幾千もの感謝を君に……あげる?】
四日ぶりですがお久しぶりです。表 裏淳にございまする。
本日はいよいよ妹&幼馴染みの登場です。
それでは前置きはこの辺にして、
どうぞ、見てください『ボロ秀』。
そして謝罪します。
今回襟沢綾がでてません。深く謝罪申し上げます。
「うへぇ……ホコリ臭ぇ……」
「……まったくだ」
『出馬文防具屋』に入店した俺達二人は第一印象を口走ってしまった。悪いとは思っているが反省はしていないがな!!
だって、鼻を手で覆わないとホコリが鼻の中に入ってしまうだろうし。
「……いらっしゃい」
『うわっ!?』
入店した俺達の後ろから不吉で震えている声が冷たい風に乗って聞こえてきた。
振り返って見ると恐らく七十歳はとっくに過ぎていそうな婆ちゃんがそこに居る。
年寄り特有の背骨が曲がっている立ち方で俺達を下から目線で見据えている。
「何か……ご用ですかな?」
「あ、あーいやー……」
歯切れが悪い大誠は……使い物になりそうも無いな。
「筆箱を探している」
「ほぉ……筆箱ですか」
「ああ。今日、急に無くなったんだ。急いで代えが欲しい」
「ほぉほぉほぉ。なるほどなるほど」
「何だよ?」
「……それでしたらついさっき打って付けの物が入りましたよ」
婆ちゃんはゆったりとした歩みで店の奥に入っていった。
「なぁ、秀。お前、あの婆ちゃんが俺達の後ろにいたの気付いてたか?」
「いや……全く気が付かなっかった。何モンだ?あの婆ちゃん?」
「俺が知るかよー」
このタイミングで婆ちゃんはゆったりとした歩みで店のレジまでやって来た。
「……こちらに」
レジにそっと座ると婆ちゃんは手招きをしている。こっちに来いと言うことか。
「オイオイ。まさかとは思うけどよ、秀、お前此処で筆箱を買うつもりじゃねぇだろうな?」
「あ?さっき言ったろ。急いで代えが欲しいって」
「止めとけ。絶対に悪いモンが付いてるって。絶対に!!」
「何でそう決め付ける?」
「何でって……」
「わからねぇだろ?此処がもし何かに祟られてたりしたらソン時はソン時だ。兎に角今は何がマイナスだろうが不幸になろうが俺には筆記用具がいる」
「……はぁ。お前また頑固になったのか?まぁお前がそこまで言うのも納得できる理由がお前にはあるもんな。親友っ!」
「五月蝿い。それに俺は別に頑固だった覚えはねぇぞ」
「自分で気付いてなかっただけだろ?」
「お前、後で、ナグリコロス」
「ぎゃー。ご勘弁をー」
大誠は手を合せて俺に現在謝っている。上辺だけだろうがな。
俺はそんな親友の合わさった手を包み込み九十度に指を曲げてやりレジに向かって歩いた。
「ギャー!!マジで冗談抜きでイテェええええ!!!!」という店内で叫ぶ変人を背にして。
「……これが『品』でございます」
「色は……白か」
「……ご希望でしたら、違う色も御座いますが?」
「否、これでいい。あんたが持ってきたんだろ?」
「さようでございます」
「本音を言えば、もう少し綺麗なのがよかったがな」
「……申し訳ございません」
「代金を安くしてくれるなら問題無い」
「うわっ!コイツ金を値切りやがった!」
何処ぞの変人の要らぬ突っ込みは勿論スルー。
「……ご心配無く。お代は要りません」
「お、おい婆ちゃん。何もそこまでしなくてもいいんだぜ?いくらこいつが値切りに走ったとしてもタダじゃあそっちに利益なんて微塵も無いぜ?」
「お前は黙ってろ。これは俺の買い物だ」
「…………」
婆ちゃんは大誠の質問には答えなかった。とうとう他人にまで変人だと思われるようになったか。
「なら、『これ』遠慮無く貰っていくぜ。婆ちゃん」
「……有難うございました」
俺が『筆箱』に触れる刹那、婆ちゃんは少し笑っていた。今まで表情を変えなかった人形が笑った。
*
店を出る時中から妙な音がしたが今の俺には無関係だ。
兎に角今は代えが出来た事に一安心。
「お前、本当にそれ持って学校行くのか?」
「筆箱は学校生活の中じゃ必須アイテムだからな」
「でもようその筆箱、柄が付いてねぇから地味だな」
「細かい事を気にしてんじゃねぇよ」
「事実だろ。白い筆箱なんて見たことも聞いたことも無い」
「それはお前の目がイカレてるからだ」
「さり気に酷い!」
「黙れ」
「そして冷たい!」
「黙れ」
「二回も言われた!」
「鬱陶しい」
「意識して違う言葉を使った!」
「ダ、マ、レ!!」
「そんなに怒るなって!」
そろそろ本格的にイライラしてきた……次喋った内容がふざけてたら、どうしてやろうか。
「そういやお前何で色買えなかったんだ?白の無地って地味すぎるだろ?」
「……はっ」
「あ!今鼻で笑いやがったな!!」
「お前気付いてなかったのか?」
「ん?何の事だよ」
「あの店にこれ以外の色なんかねぇよ」
「えっ!?だってあの婆ちゃん『違う色もございますが』とか言ってただろ!」
「なら何でその違う色のやつを持ってこなかった?」
「面倒くせぇからだろ?」
「客相手に面倒くせぇなんて思ってたら商売やってけねぇと思うが?」
「まあ確かに。客に気を使って無い店員なんてよっぽどの奴だろうし……」
「そして、あの店にはまだ店員がいる」
「え?何でそんな事が分かんだ?」
「あの婆ちゃん俺達が少し会話をしていた間に戻ってきただろ。七十はとっくに過ぎた婆ちゃんがそんな短い間に筆箱を探す事が本当に出来ると思ってんのか?」
「つまり、婆ちゃんが店の奥に入って他の店員がその筆箱を探して婆ちゃんに渡してレジまで歩いたってことか?」
「その通り。よくできました」
「何でそんなにガキ扱い?」
それは精神年齢が中学生辺りのままだからだよ。
まあ正直、もう少ししたらコイツとは別れ道だからこれを言ってまた鬱陶しい返しがくるとそれこそ面倒だ。だから、敢えて言わない。
「お、もう別れ道か。じゃあな、親友」
「ああ。またな変人」
そう言って互いに背を向け反対方向に歩いて行く。途中「あ!変人に突っ込むの忘れてた!」と自分に自分で突っ込んで何になる?と俺は心の中で呟いていた。
*
家に着いた。とうとう着いた。
長かった。本当に長かった。
怪しい店で筆箱を買って、変人に何度も絡まれて本当に大変だった。
だがそれも終わり。
俺はとうとう世界で一番のんびり出来る場所に辿り着いた。
そして俺はその扉を手で握り開いた。
そして――――
「おーかーえーりー!!兄々!!」
「フッ!」
「アベラッ!?」
最愛の家族の中で最も愛すべき妹からのハグを身を捻ることで躱した。
その後妹は壁に激突。
女の子が出していい声なのか分からないが俺の妹なら問題無いだろう。
「ぶぅー兄々のケチィー」
「ケチじゃねぇ……照れてるだけだ……」
「兄々可愛ゆ!?」
突然我が妹である茜は鼻血を出してしまった。その勢いに負けて今にも倒れそう。
「親父とお袋はどうした?」
「デート」
「……そうか……何時まで高校生気分なんだろうな」
「多分何時までも……私と兄々は今日も二人っきりだね」
「そうだな。今日は夜飯何がいい?」
「うーん……兄々のあい――――」
「よし、今日は出前にしよう」
腹が減った。急いで何か食べないとな。
「やっぱり、兄々はケチだよー」
「分かったよ」
そういうと俺は妹の頭に手を置き撫でてやった。
「フニャ~」
「猫か!お前は!」
「通称、紅猫だよ!」
「マジで!?」
「マジもマジ!大マジだよ!」
知らなかった。妹に猫の遺伝子が紛れ込んでいるとは――――
♪~♪~
「兄々メール」
「分かってる」
妹に言われてしまい少し見る気が失せたがこの時間帯でかけてくる奴は一人ぐらいだ。
分かっているが一応内容を確認する。
『時間割』
そう誰であろうか、と聞かれたら「引き篭り」と四文字で説明が付く俺の幼馴染みだ。
余りにも短いその文に対してはいつものように返す。
『短絡過ぎる』
それがまずお互いが本人である事を確認する為の俺達の意思表示だ。
そして恐らくすぐに返信が来る。
♪~♪~
『放って置け。それより時間割』
『明日は来るのか?』
♪~♪~
『行くつもりだから聞いている』
『筋が通った説明をありがと。プリントをポストに入れておいた。その中に時間割も書いてある』
♪~♪~
『感謝する』
『そんな心がこもりにくい文じゃなくお前の声で聞きたい』
♪~
今度は電話が鳴りおった。
『感謝する』
『ああ。どういた――――』
プープープー
切りやがった。あの野郎。俺の要望は答えたからもういいだろとか思ってるんだろうな。
「兄々……気にしない方が良いよ……あの人にとってはいつもの事だから……」
妹の励ましに今俺はもの凄く感謝している。
そう。あいつはいつもああだった。
俺がどんなになろうともあいつは唯一態度を変えなかった。昔からそうだ。
今だから言える事だがあいつには何度も救われている。そんな幼馴染みが明日は学校に来る。
これほど嬉しいことはあまり無い。
「(有難うな。翼)」
心の中で何度目か分からない感謝の言葉をあいつに向かって投げた。
如何でしょう?本日のボロ秀は?
アテナは登場しませんでしたが次回はアテナがメインになります。
翼も学校に登校し主人公の周りが段々と揃って参りました。
そして、ついに手にした新しい筆箱。主人公はどうなるのか!?
次回は11月の上旬か中旬になると思います。
それではサヨナラ、トリックオアトリート、サヨナラ。