第一話【漫才は相方が居てこそである】
どうも、はじめまして。表 裏淳です。
プロローグの「~バカ」というのはアレ自分の心の声です。書いていて思ってしまい誰かに言いたかったが生憎誰も居なくてどうせならと思い書いちゃいました。
さて、自己紹介は終了。前書きです!
今回は実質プロローグ『続』みたいなものですので気楽にどうぞ。
新キャラ登場は勿論あります。
それではどうぞ!
あ!追伸・今回は主人公視点です。
「だァ~疲れた~」
一限目の難関(英語)を乗り切った俺こと筆無秀は机に倒れ込む形をとり溜まりに溜まった一言を吐き出した。
見てグッタリしているとわかる俺に軽い足で近づいてくる男子が一人。
「お疲れだな、親友っ!」
俺を親友と呼ぶこいつの名前はナンパ王変態。
…………というのは冗談で本名は貝塚大誠。中学からの付き合いでよくつるんでいた俺の悪友だ。互いに背中を任せあった仲でもある。
真っ黄色なニコニコ顔を真っ青なグッタリ顔の俺に向けてくる悪友に俺は現在出せるだけの力を振り絞って――――
「助け舟も出さねぇ親友なんて俺は知らん」
そっぽを向いてやった。そんな俺の反応を待っていたと言いたげな人は机に倒れかかっている俺に目線を合わせる為、その場にしゃがみこむ。
「助け舟なら俺以外の奴がきっと出すって思ってたからな!」
「お前だけじゃなく皆そう思ってるだろうぜ」
俺はそう言うと一秒ほど大誠から目線をずらし楽しくワイワイ喋っているクラスメイト達に合わせた。
『!……プイっ』
全員が見事にシンクロして俺から目を逸らした…………本当に息ピッタリだな。
「まぁ、済んだことは気にしない方がいいぜ。あんまり根に持つと女にモテないぜ!」
「ほっとけ。馬鹿」
「馬鹿って俺のことか……?」
「さぁな。それよりお前、俺の筆箱知らねぇか?」
「え?筆箱?机の中にねぇのか?」
「無いから言ってんだ」
「なら俺が知ってる訳ねぇだろ」
「お前が隠したんじゃないだろうな?」
「親友を疑うのかよ!?」
「言ったろ。助け舟も出さねぇ親友なんて知らん。今俺が疑ってるのはムカつくぐらい爽やかな好青年だよ。あと昔染めた金髪が今も残ってる元不良だ」
「それを言うならお前だってそうだろ?昔と同じで真っ黒じゃねぇかよ?」
「頭がおかしいのか?日本人ならこれは地毛だ。それと眼鏡も一応家にある」
「そうだったのか!?」
「本気で頭がおかしかったのかよ!?」
自分の言ったことを後悔しているこいつとの会話は実に暖い。
さっきみたいに冷たいノリは好きじゃない。というか耐えられない。寒い。
「でもよぉ、実際あの春日先生に立ち向かうなんて流石だよな。天咲って」
「糞っ!理系の問題ならあんな冷徹教師に負けねぇってのに……」
思わず寝ていた体勢から起き上がり拳を握り締める俺を教室の出入口から見ている奴がいるようだが、今は関わりたく無いので無視。
「流石だよな。天咲って」
「おい、何同じ事二回も言ってんだ?」
「お前にとって大事なことだからだ。それとお前が気づかないかなぁと思ってよ」
「何にがだよ?」
「……はぁ。駄目だコイツ」
「だから、何がだ?」
「もういいや」
「おい。何勝手に諦めてんだ?」
「お前のせいだよ!!」
「人のせいにするな!!」
全く、俺が何をしたって言うんだ?意味が分からん。
「はぁ……で。お前、どうするんだよ?」
「ん?ああ。筆箱か?そうだなぁ…………おい大誠。シャーペン一つ貸しやがれ!」
奴の胸ぐらを掴んだ俺はそのまま関節技でもかけてやろうかと思っている。
「何で襲いかかってくるんだー!?」
「うるせぇ!黙って貸しやがれ!!」
「わ、分かった!分かったよ!だからもう止めろ!!」
「品を受け取るまで技は解かないぜ!」
「じゃあシャーペンも取れないな!?」
「大丈夫だ!右手は……」
「……解いてくれるのか?」
「骨を外す!」
「理不尽だー!!」
ギャアギャアと五月蝿い奴だな。右手のついでに喉もエグッテオクカ?
俺が関節技を完全にキメようとしたその時――――
「ちょっと!男子二人!絡むならいいけど騒ぐなら静かにしてよね!!」
邪魔が入った。
うちのクラス、二年C組で見たところ半分以上の女子を支配下に置いている自称・聖母アリア様の剣閒アリアサマ(笑)が出しゃばってきた。
「……おお、恐っ!それでよく聖母だなんて名乗れるな。アリア」
「う、五月蝿い!下の名前で呼ばないでよ!」
「オイオイ……今更何言ってんだよ。俺とお前の仲じゃねぇかよ?」
「お……おちょくらないで……貝塚」
「どうしたアリア?昔みてぇに『大誠』って呼んでくれよ」
「う、五月蝿い!バカ!!」
顔を真っ赤にして大誠を睨みつけ剣間はトリマキの女子達の元に戻っていく。
……今まで静かにしていたがコレって…………
「夫婦漫才のご披露お疲れ様でした。リア充」
「ハハッ!まぁ幼馴染みだからな。これぐらいは披露しないとな!!」
決め顔で親指を立てるコイツをクラス……否、学級全体の男子を代表して俺がブチ殺そうかな?
「そんなに怒った顔するなよ、秀。大体お前にも幼馴染みがいるじゃねぇか?」
「アイツは恋愛には全く興味無いと思うがな……しかも今日も休んでるし」
「そんなことないと思うけどなぁ……」
「お前アイツの事どれぐらい知ってんだ?」
「あー……そう言えばあんまし知らねぇな」
「だろ」
正直、引き篭りのアイツに毎日プリントを持っていくハメになる俺の気持ちが理解出来るのか?と言いたい。何故ならそのプリントを俺に渡す人物が――――
「筆無君。築谷さんにプリント、よろしくお願いします」
「ああ。分かってる。アイツの代わりに礼を言っておくぜ、天咲」
「いえ。私は仕事をしているだけですので」
俺達二人に一礼をし教室の出入口付近にある自分の座席に向かって歩いていった。最後まで無表情。歩く度に切るのが面倒だから伸ばしているだろう髪と親から授かった豊かな胸部がそれぞれ揺れている。それを見た男子は――――
バタリ!!
……貝塚を含む男子が鼻から赤い液を沢山垂らして一斉に倒れた。俺と女子達を除いて今度は男子のみのシンクロを拝んだ。因みに何故俺が無事かというと簡単に言えば苦手だから、興味も無いということ。
シンクロの元凶は座席に座り次の教科である理科の予習・復習をしだした。
…………
「おーい。男子一同、生きてるかー」
俺の呼び掛けに一番近くにいた大誠が倒れながらも首を横に捻る。鼻からは赤い液が垂れている。
「……なぁ、秀」
まるで死にかけのような声を出し俺の名を呼ぶ。その声を聞いた俺はさっきのお返しに今度はコイツに目線を合わせる為にしゃがみこむ。そして冷たい言葉が浮かんだので取り敢えずそれを口に出した。
「何だ?遺言なら聞いてやるぜ?」
そんな俺にいつもならツッコミを入れるはずだが今回は「……フッ」と微笑む。
「……生まれ変わるなら俺は、猫になりたい。そして女の子に愛でられる日々を送るんだ」
「そうか。それならお前はデブい猫で男の子から毎日虐められてそうだな」
「ちょっと!?筆無!!アンタ何言ってるのよ!?」
トリマキに戻った筈の剣間がドシドシと足音を立てこっちに歩いてきた。顔がスゴイ事になっている。 主に怖い方向で。
「大……貝塚大丈夫!!死んじゃダメだからねバカ!!」
「へっ……だからいい加減『大誠』って……(ガクリ)」
「貝っ……たいせェェェぇぇい!!!」
何だ……この茶番劇?剣間の奴マジで涙流してるよ…………
実際の処、大誠は勿論生きている。指がピクピクと痙攣しているのは笑いを堪えているからだろう。思いの他、剣間が真剣に大誠の事を心配しているのでついそのまま死にかけの演技を通したというところか。やっぱりコイツ等夫婦漫才の才能があるな。
キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪
休み時間終了の合図である鐘が鳴った。それと同時に倒れていた男子達は自らの座席へと帰っていた。
ガラガラガラ
「はい、オメー等さっさと教科書に名前書いて折り目付けて……仕舞っとけー」
「最終的に使わないのかよ!?」
理系教師、松寺光尾(36歳、バツイチ)先生は大誠のツッコミをゆるりとスルーし二年C組の生徒名簿を教卓の上に普通に置く。音を立てる訳でも無く普通に置いた。
そして、今日という日の中に含まれる学校生活においてこれ以上挙げる事は無い。
重要なのはこの後。
筆箱が消えるという摩訶不思議な出来事が呼び起こすのは――――
出会い。
その出会いから生まれるものは――――
始まり。
始まりから始まるのは――――
女神の新たなる日常。
そして――――
理系の秀才にとっては――――
波乱万丈な非日常。
全員の未来が今変わり始める。
いや~本当に読んでいただき有難うございます。
主人公の男友達も登場して更にその幼馴染みも登場しました。
これからもキャラは恐らく増え続けます!いや!増やします(断言!!)
因みに襟沢綾はまだ出てきません。
次回はいよいよプロローグの最後を締めたあの方が登場します!
お楽しみに~
それではサヨナラ、サヨナラ。