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ボロい筆箱を拾ったのは理系の秀才でした!?  作者: 表 裏淳
第二章【友達の為に舞う雪】
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第十四話【兆候】

神乃アテナだ。

それにしても、作者め最近は他の作品も同時進行しているようではないか。

生意気な者だ。このボロ秀ですら完結には至らず、この前まで、逃げていた愚者のくせに。

だが、私達を想う気持ちだけは捨ててはいなかったようだな。

食えない作者め。

読者諸君、くれぐれも作者に騙されるな。

アイツは優柔不断の三日坊主のクズだ。

今回の話しも駄文でしかないからな。

む? 筆無。貴様もこちらにこい。前書きを私一人に押し付けるな。

な、なんだ? 『タイトル名→「どうぞ」』。

書かれた通りにしろと言うのか? 馬鹿者め。私が貴様の思い通りになるとでも思っているのか。

今度は嫁か? なんだというのだ。

ボロ秀……第十四話【兆候】……始まり?

はっ! 嫁、謀ったな! 紙に書いて読ませるなど……私がまるでマヌケのようではないか! 

 昼休み終了後、五、六と授業を受けるのがかったるい俺は現在保健室で転寝(うたたね)をしていた。


 白いシーツに皺をつけつつボーと天井を見上げていると保健医が、閉めていたカーテンのシャアというクセになる音を奏でた。


 「体調はどう? なーんて訊くまでもないっか」


 俺の仮病を容認してくれたこの眼鏡美人の保健医は皮肉混じりの笑みでそんなことを言った。名前はよく覚えていないが優しい人で、俺の場合、長考したいときはもっぱらこの保健室で時間を過ごす。


 白衣を着ているためか清楚感が増し、落ち着いた印象を与えるこの人は腰に手を当てて、寝転がっている俺を見下していた。悪い意味でなく、そのままの意味だ。


 「一言余計ですよ。まあ、おかげさまで大分(だいぶ)、頭の中を整理できました」


 寝ていた体を起してお礼を言っておく。すると、満足したような微笑を残して、保健室から立ち去った。恐らく、いない間に出て行けという合図だろう。この人は稀にこうする。


 「さて、放課後だし、帰るか」


 ベットの下に置いていた鞄からスマホを取り出す。ラインを開くと通知が四件。ほんの一〇分ほど前だ。


 『サボり魔め。保健のよっちゃんに手ぇだしてねぇだろうな?』


 変人からだった。既読だけつけて放置。次。お? 珍しい、剣間から。


 『わたしだがたいちようのほうは問だいないかる』

 『今の神乃だから。私じゃないから』

 『ちなみよめはさっき貴様がよく話していスイミンしようじよと喧嘩していたぞ』


 剣間のスマホで神乃が打ったらしい文面。無茶苦茶になってはいるが言いたいことはわかった。

あるよな、『?』を『る』って間違える時。それにしても……コイツ、さてはスマホ初心者か? いやまて、そもそも携帯すら知らないんじゃないか? ぷっ、笑える。


 「心配するなんて(がら)にもねぇな、神様。てか、睡眠少女って……翼のことなのか?」


 確かによく寝ているからな。そのあだ名は思いつかなかった。


 翼、一体なにをして剣間と喧嘩なんかしたんだ? 大方、他愛もないことだろうけど、念のため後で訊いておくか。

 大誠はまだ校内にいんのか? スマホでアイツの生命の安否を確認しよう。


 『生きてるか? 生きてるなら、いまどこにいる?』


 打ち終えて送信するとすぐに既読がついた。この変人、まさかずっとラインの画面だったのか?


 『返事がない。ただの屍のように校門前で待ってる』


 返事してるし、ただの屍が待ち伏せしてたら軽くホラーだろ……馬鹿か。

 とはいえ、返信が早いのはこちらとしても好都合だ。既読無視で閉じてスマホを、ズボンのポケットに入れる。

 保健室を出る寸前、一拍呼吸を置く。さっき、頭の整理とある決心をした。それを翼たちに明かすことは躊躇(ためら)われるが、仕方無いんだ。

 あの果たし状は伏線に過ぎない。北方絆騎総長と名乗る奴の後ろには必ずいる。

 ソイツを畳んでしまわないことには(はなだ)との戦いは終わらない。

 頭を潰さない限り動き続ける。不良なんてものはそんなものだ。因縁吹っ掛けて、どこまでも付き纏う。


 俺達が今の状態に至るまでかなりの苦労を有した。売られた喧嘩はなるべく買わないようにしたし、殴られても反撃はしないことを意識してきた。その労力のかいあって今の平和がある。世界的に観れば小さな平和だろうが、俺達にとってはやっと訪れた癒しの時。


 プライドを捨てて、手に入れた『今』を荒らされて(たま)るものか。


 大誠も気持ちは同じはずだ。


 アイツはいつもの馬鹿調子で俺を待っているだろう。


 「……なんだかんだ言っても、あいつの意思次第だな」


 無理をしてまで、この因果に係わらないでいい。もしもの時は俺一人でケジメをつけるから。


 意を決して、扉を開こうとすると、勝手に開いた。


 「え?」


 その正体はさっきの保健医だった。てっきり、もうしばらく留守だと。


 「いい顔してるじゃない。なんだかよくわかんないけど、頑張ってね」


 「は、はい」


 困惑気味に頷いたが、俺は一体どんな顔を……。


 横開きの扉の窓を向くと……まあ、笑える顔だ。久しぶりに見た、俺のこんな表情は。


 思わず、微笑みが零れて、笑っている男子が下校するという変な絵図になってしまった。


 こんな顔だと、あの変人になんか言われそうだな。まあ、言ってきたら、逆に反撃してやるけどな。


  *


 日が沈むには、もうしばらくかかる色合いの空。レンガ作りの校門と学校の名が刻まれた銘板(めいばん)に寄り掛かった大誠。日に照らされたサラサラな金髪が爛然(らんぜん)として変人に似合わず、クールな様だ。


 「よう、待たせた」


 「いやいや、用があったからさ」


 姿勢を変える様子を見せず、いつもの気さくな調子で話題を切り出してくる。


 こいつの深い激動を俺はこの時から感じていた。


今回の話しもよく分からんな。

筆無のサボり癖が表沙汰になっただけではないか。

それはどうでもよい。私がまず、言いたいのは嫁!

この小娘が! 神を謀るなど言語道断! 成敗してくれるわ!

筆無! 邪魔だ。そこをのけ! その手に持った紙束ごと切り裂くぞ!

ええい! その舐めきった顔も黒鉛筆(ブラックシュペルン)で真っ二つだ!

逃れられると思うなよ! 二人共!


悪ぃけど、今回はこれで幕下ろしってことでby大誠


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