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ボロい筆箱を拾ったのは理系の秀才でした!?  作者: 表 裏淳
OVA【洋風と和風の真弓】
14/27

最終話【真の物語り・後編】

お久しぶりです。皆さん。今回の後書き担当の襟沢綾と!

天咲雪海です。

ユキちゃん、いよいよ番外編も最終話だね。

そうですね。

もう、最近この作品のジャンルが分からなくなってきたね。

そうですね。

……ユキちゃん。髪切った?

そうですね。

もういいよ! 何、その、『笑って○○とも!』ネタ! わざとなの?

そうですね。

いい加減にしてよ! ユキちゃん!

それでは、皆さん。ボロ秀番外編最終話【真の物語・後編】をどうぞ。

私の話に耳を傾けてぇぇ!


 熱気(ねっき)が渦巻いていたのは先程。今はすっかり冷めてしまった。何故なら――――。

 「で、俺が優勝したわけだが……実際何にも命令することが無いんだよな」

 最後に歌ったのはあまり、乗り気でなかった秀さん。だがこれが凄いことに和風(わふう)ロックな曲を熱唱(ねっしょう)して九六点を出した。

 これによりそれまで一位だった稲未さんの九三点を凌駕(りょうが)した。

 (ちな)みに僕達の点数は、翼さん・九〇点、茜さん・八八点、僕・八五点、詩稲さん・八五点、兄さん・六四点。

 「だったら、私に優勝を譲ってくれないかしら? くれたら楽しいことしてあげますよ? せ・ん・ぱ・い」

 真田(スイッチが入ってる方)さんが秀さんを誘惑(ゆうわく)してる……。翼さんが殺意の(こも)った目で二人を凝視してるよ……。

 「秀。デレデレしてないでさっさと命令しろ。見っとも無い」

 「別にデレデレしてねぇよ。見ろ、鼻の下伸びてねぇだろ?」

 「……。確かに」

 真田さんがくっ付いている秀さんの顔を覗き込んだ翼さん。そして、鼻の下が伸びていないことを確認すると秀さんの右隣に座った。

 「さぁ! 秀、命令しろ!」

 兄さんが再度(うなが)すと秀さんは翼さんの頭に手を置いた。

 「今、こいつに命令しただろ? 『見ろ』って。これでもうチャラだ」

 隣で翼さんが蒸されたみたいに蒸気を出し、兄さんは如何(いか)にも不満顔で秀さんと目を合わせる。

 「呆気ねぇなぁ。もっと普段できねぇことを命令しろよ。例えば、そうだなぁ……『翼の膝枕が味わいたい』とか、『茜のコスプレ姿が見たい』とか、『真の女装が見たい』とか色々あんだろ?」

 「全部お前の願望じゃねぇか。自分の弟にまで何変な事しようとしてんだよ……」

 「兄さん、流石に僕でもひくよ……」

 「マジでひくなよ!? もの凄い嫌な顔もするなよ!?」

 僕達がひいていると兄さんがもの凄く(さび)しそうな表情でこちらを見ている。

 あまりにも(あわ)れな子犬みたいな表情でちょっと可哀想。

 「自業自得(じごうじとく)だ。言い出したお前が悪いだろう? 変人」

 「追い打ちをかけるなよ! 俺泣くよ?! 泣いちゃよ?!」

 「もう泣いてんじゃねぇか。みっともねぇ」

 翼さんの追い打ちと秀さんの不意打ちで兄さんのライフはもうゼロだ。

 「姉と私、帰宅する。さようなら」

 「え~もうちょっと遊ぼうよ~。シーナー」

 時計に目を合わせた真田詩稲さん。スイッチが入ったままの真田稲未さんを引っ張って扉に手を伸ばしている。それに対して引っ張られている真田さんは子供のようにダダをこねている。

 「姉、幼児化。面倒(めんどう)

 「シイちゃん、お姉ちゃんは大切にしようよ。そんな風に怒っちゃダメだよ?」

 「おい、その言い方は(あに)より姉が欲しかったって言いたいのか?」

 「怖い顔しないでよ~兄々(にいにい)。兄々が早く結婚してくれれば私にもお姉ちゃんが出来るんだからさ~。それで我慢するよ~」

 「そのにやけた顔はなんだ? 俺に何か恨みでもあるのか?」

 「自分の胸に手を当てて考えてみたら?」

 「……思い当たらねぇな」

 「白々(しらじら)しいよ! この前、私の『猫も喜ぶマタタビイチゴゼリー』食べたじゃん! 食べ物の恨みは恐ろしいんだよ!」

 「ああ、アレか。マタタビの味がするかと思ったらしっかりとイチゴの味がしたな、美味かったぞ。今度(おご)ってやるよ」

 「わーい。ありがとー兄々」

 流石は秀さんだ。茜さんを笑顔にさせるのに随分と慣れている。それにしても、茜さんが笑顔になってよかった。やっぱり、茜さんは笑顔の方が可愛い。

 「秀は妹に甘すぎる。もっと厳しく接するべきだ」

 「兄々に命令しないでよ! 何様(なにさま)さ?!」

 「お前より二つ年上のお姉様だ。因みに秀と私は互いに命令しあえる関係だ」

 「どんな関係だよ!? 俺、お前との関係を見直なきゃいけねぇ気がしてきた!」

 「何か、今更だなー。秀は翼に甘くて翼は秀に甘い。それだけじゃねぇか」

 「「変人は黙ってろ」」

 「そうそうこういうのだよ!! てか息ピッタリで酷いな!?」

 「真君……たまに思うんだけどさ……」

 「奇遇(きぐう)だね、茜さん……僕もだよ……」

 互いに兄を持つ弟、妹である僕達は息を揃えて、呆れながら言う。

 「「お笑い芸人……?」」

 (いま)だに兄さん達は言い争いを続けているが真田姉妹は出口に向かおうと身支度(みじたく)を済ませた鞄を持ち立った。

 「あ、待って。二人共」

 「? 何?」

 僕が呼び止めると詩稲さんが首を傾げながら振り返った。すると何故か稲未さんが口元をあげた。

 「あら? 告白? それとも人気のないところに連れていってくれるのかしら?」

 「ち、違うよ! 僕は君達に確認したいことがあるんだよ」

 「確認?」

 「なぁに? 真君?」

 「真田稲未さんが何で唇を湿らすのかわからないけど……ええと、君達は茜さんとちゃんと自己紹介したのかなって。ほら、茜さん、誰にでもあだ名を付けて親しくしちゃうから」

 苦笑しながら喋る僕に二人は不思議と暖かい視線を送ってきた。なんで?

 「問題無い。お互いのことは知り尽くした」

 「そうそう。私達のこともちゃんと名前で作ったあだ名で読んでくれるから、心配する必要はないわよ。それより、貴方はなんで私達のことを名前で読んでくれないのかしら?」

 「未然(みぜん)。それに私達、姉妹。『真田』では呼ばれたとき困る」

 えー…………何この状況。どうしてそこまで名前で呼んでほしいの? 僕が茜さんを名前で呼ぶのは秀さんがいるからであってそれと同じってこと? でもフルネームで一々(いちいち)、呼ぶのは面倒だからね。

 「わ、わかったよ。ええっと、稲未さん」

 「『さん』は取って」

 「……稲未」

 「うん。なあに?」

 向日葵(ひまわり)に例えることができる笑顔。

 「……詩稲さん」

 「『さん』は不要」

 「……詩稲」

 「?」

 微かに口元を緩ませて首を傾げる。

 姉妹揃って満足といった面持ちだ。誰しも笑顔が一番輝く表情だと僕は思っている。でも誰かが暗い顔をしなければ笑顔になれないというのは、許せない。

 「おい。真。ちょっといいか?」

 「秀さん? 何んですか?」

 扉付近で美少女姉妹とのやりとりを終えてすぐに二人の女性を手玉にとった人から声が掛かり振り返って応対する。

 秀さんは無言で立ち上がり無言で顔を近づけて――――。

 「……送ってやれ」

 「え?」

 一言耳元で(ささや)くと秀さんは定位置(ていいち)に戻って行く。そして、大切な人達に笑顔を見せる。

 その横顔はこれから先も僕の憧れで超えなければならない存在として在り続けるだろう。

 「待って二人共」

 「あら、何かしら?」

 「?」

 扉を開けて退室しようとしていた同じ顔の二人を呼び止めた。

 「送っていくよ。もう遅いし、外は暗いからね」

 秀さんの一言で僕の中で決心がまた一つ増えた。

 「ふふふ。大事にされるって嬉しいものね。詩稲」

 「同意。稲未」

 また、笑ってくれた。

 「お、なんだ。帰っちまうのか? これから二次会なんだけどな~」

 「おい、何勝手なこと言ってんだよ。大誠」

 「秀の言う通りだ。だが、お前が会費を全て出してくれると言うのなら参加してもいいが?」

 「それなら、私もー!」

 「お前等無茶言うな! 俺の財布をガリガリにする気かよ!」

 兄さんが平和に生きていくと言ってから僕の周りは本当に平和だ。

 「それじゃあ、真君お願いね」

 「護衛。頼む」

 「うん。じゃあ行こうか」

 二人と共にスタジオから廊下に出る。

 そして、今回のメンバーにとって思い出の場所となった此処からも出る。


 僕はこの平和がいつまでも続いてほしいと思う。

 もしも、また、この平和が崩されようものならばその時は。


 (兄さんと秀さんと一緒に戦おう)


 そして、大切な人達を何があっても守り抜こう。

 

 *


 「それにしても今日は楽しかったわねー。詩稲」

 「……(コクリ)」

 真が家まで送ってくれたおかげで無事に帰宅できた私達姉妹。

 稲未は今日何度目かわからない同じ台詞を口にする。

 かく言う私も同感だ。今日程楽しいことはそうそう無い。

 弓の手入れをしながら頷いた私に稲未は。

 

 ガシッ


 後ろから抱き着いてきた。まるで、私よりある胸部を自慢するかのように。

 「真君は私達どっちの方が好みなのかしらねー?」

 「知らない。第一あいつにそんな気はさらさら無いと思う」

 見る限り真は恋愛には向いていない。優しく顔立ちもいいのだが長所を上回る程の鈍感という短所がある。それ以前に私達にはそう言った感情は抱いていないだろう。

 弓の手入れを何時もよりも念入りにしていると姉が耳元で。

 「真君に見せるから綺麗にしておきたいんだー。詩稲も可愛いことするじゃない」

 「勘違い。それに私はあいつのことを何とも思っていない」

 「またまたー。詩稲は照れ屋さんなんだから」

 にやにやと勝手な想像を押し付ける鬱陶(うっとう)しい姉。

 

 「私には多分、真君が王子様だと――――」

 「違う」

 昔、私達はある絵本に出てくる王子様に憧れていた。だが私ももうそんな歳ではない。今更、そんなことを考えることすら馬鹿らしいく思える。

 だが、稲未は今でも信じているようだ。

 私達を変えてくれる王子様が現れるのを。


 無駄なことと思いつつもやっぱり期待はしていることに私自身も気づいていないことに姉は気づいている。

 

……ねえ、ユキちゃん。私、何か悪いことしたかな?

いえ。特には。

……なら、なんでさっきユキちゃんは私の話を無視して勝手に一人で前書きをやっちゃったのかな?

…………。

ユキちゃん。答えてよ……。

……前回……。

え?

前回、私は自分勝手な行動で貴女に余計な事をさせてしまいました。なので今回は私一人で切り盛りしようと思ったからです。

ユキちゃん……。

本当に申し訳ありませんでした。(ぺこり)

頭を上げてよ。ユキちゃん。こういう会話は次回にとっておこう、ね?

……そう、ですね。はい。

うん! じゃあ読者の皆さん、会話の流れで大体の察しはついていると思いますけど。次回は私達がメインのお話しです!

作者の気ままなストーリー構成には困り果てたものですが、第一章とはどこかで連結させるつもりだと言っていました。なので、ちゃんと、筆無君の意味不明な肉体強化、謎の黒い直刀についても記述がある筈です。

あと、神乃さんの正体についても詳しくお願いしたいね。ユキちゃん。

そうですね………………アーちゃん。

ん? ユキちゃん、今、最後にボソってなに言ったの?

……いえ、なんでもありません。

そっか。じゃあ今回はこの辺で! 

さようなら。

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