プロローグ【人は皆不平等】
『人は皆平等である』とどこぞの偉人はそう言った。
だが、現代社会において本当にそれは正しいのか?実現されているのか?
そんな訳が無い。何故なら、人は得意な事、不得意な事が全く、一mmの誤差が無いぐらい同じでは無いから。
現に今、一人の男子高校生が絶望的な表情をしている。その発端が――――
「それではこの英文を訳して貰おう。そこのお前やってみろ」
文系の教師に指を指されてしまったからである。英語が苦手な生徒でも難なく訳せるような英文だった。だが、指名された男子生徒、筆無秀は…………立っても苦笑いしか出来ない。
「…………わかりません」
国語、社会、英語と言った中学生レベルの科目でギリギリ半分の点数が取れるぐらいの腐った脳味噌をお持ちなのである。それでよく高校に進学出来たな、と言いたくなるほど酷い脳味噌だ。
故に冬明けの高校二年最初の英語の授業で詰まるのも仕方ないと言えば仕方ない。
「貴様、私の授業に参加する気があるのか?」
担任の春日凪先生は眉間にしわを寄せ、座ろうとする秀を睨みつけた。
担任になってからこの人は毎日「少しは苦手を克服しようとは思わんのか? 馬鹿者」と言っている。にも関わらず秀の苦手は改善されない。
こんな時に助け舟を出してくれるのが――――
「先生。私が解きましょう。ですから、これ以上授業を止めないでください」
クラス委員長の天咲雪海様で、それに対しての返しが――――
「貴様には関係の無い事だが……まぁいい。やれ」
「では」
この見ていて冷たくなるやり取り。何というか温度差が周りとは五度ぐらい違う。
そんな温度差を覆す役割の人が秀の真横にいる襟沢綾なのだが、生憎今日は体調不良で欠席している。
つまりこの授業の間ずっと冷気が漂っている事を指すので一クラスメイト達としては堪ったもんじゃない。
「筆無。貴様にはまず基礎の基礎である英単語の書き取りを宿題として提出する。明日の放課後までに持って来い。さもなくば、氷の隣に席替えを強制する。いいな!」
氷とは助け舟を出した委員長の事である。これを聞いたクラス内の男子|(秀を除く)は一斉にこう思った。
『(羨ましいィ!!)』
雪海は性格こそ冷めているが外見は、通り過ぎる彼女持ちのリア充男子をも振り向かせるほどの『美少女』だ。
だが、秀は何故かこの委員長が苦手だった。
自分を何かと、助けてくれるのだが不思議と苦手なのである。それに対して秀はこう考えている。「先祖が酷い目にあったんだろう」と。安易な発想で人の気持ちを無視しているとも知らずに、実にバカ。
秀は自分の机の上に筆箱が無いことに突然、気づいた。クラス担任の横暴に耳を傾けようとせず溜め息を吐いた不意に気づいた。何の溜め息だ? バカ。
机の中を探しても見当たらない。
だがそんな事はどうでもいい。
今はただ早く理系の問題が解きたいと秀は頭の中で円周率を呟いていた。
これは文系が糞な男子高校生が奇妙なある物を拾う事で起こる学園ストーリーだ!byアテナ