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魔王討伐編一話、お金のためなら何でもします!

「金っ!金っ!金づるだぁぁぁぁ――――!」

 頭に大きなリボンを付けた少女が「金」と連呼し叫びながら草原を疾走している。とうてい人間には出せそうにないスピードだ。その少女から額に赤い宝石の付いた緑色の狐のような生物が逃げている。ものすごく必死の形相だ。少女が右手に剣を持っているのだから仕方がない。緑色の狐は捕まったら殺されると思っているし、その通り少女は捕まえたら殺すつもりだ。緑色の狐はなかなか愛くるしい見た目をしているので、殺すのは忍びないような気もするが、金に目が眩んだ少女を止めることは出来ない。緑色の狐は額のガーネットも高く売れるし、毛皮は上等で高く売れるし、肉はおいしくて高く売れるのだ。追いかけている少女の名はリヴィエラ・C・ラグランジア、好きなモノはずばり《金》、三度の飯よりお金が大好きという金の亡者だ。緑色の狐は疲労で徐々にスピードが下がっているが、金を前にしたリヴィエラが疲れを知ることはない。

ついに緑色の狐にリヴィエラが追いついた。

「使用・五〇〇〇ゴルディ―カーバンクルをとらえる檻を環金!」

 リヴィエラが言い放つと緑色の狐の周りに檻が出現し閉じ込められる。《ゴルディ》とは大陸共通の金の単位でカーバンクルとは緑色の狐のことだ。《錬金術》が卑金属から金を作り出す術だとしたら、リヴィエラが使う術こそお金から万物を作る《環金術》。5000ゴルディ払うことによって檻を環金したのだ。金が大好きな人間が金を使わないと術を使えないとは皮肉な話だが。

 リヴィエラがなぜ、カーバンクルを殺さなかったかというと、生きたままなら金持ちのペットとして更に高く売れることを思い出したのだ。

「やったぁ!六二〇万ゴルディ獲得!」

 リヴィエラが右手に持った剣を鞘に収める。虹色に煌めく不思議な剣だ。《オーリキャルカム》という特殊な合金でできている。この一本で家が買えるぐらいの値段がするほど高いが、とても丈夫で切れ味も良く魔法も跳ね返す。リヴィエラは守銭奴だが、必要であれば金を使うことをためらわない。

「あれ、イングリットは?」

 リヴィエラが周りを見渡すがカーバンクル以外は何も居ない。草原がひたすらに地平線が見えるほど広がっており、強い風が吹いている。イングリットとはリヴィエラのパートナーの男だ。一緒に旅をしながらリヴィエラにこき使われている。

 リヴィエラがポケットから機械で装飾された石を出し、レバーを動かす。

「もしもーし?イングリット?どこに居るのよ?」

『はぁ……はぁ……お嬢……はぁ、オマエ足早すぎだ……ぜ』

 石から低い男の声が聞こえてくる。息がかなり乱れている。この石は遠話石(テレフォストーン)という遠くにいる人と話すための《魔法機械(テクノマギ)》だ。《魔法機械》とは、魔法を知識がない者でも誰でもインスタントに使えるように作られた道具だ。便利だが値がはる。

「さっさとこっちに来なさいよ」

『いや……はぁ……はぁ…、お嬢がどこにいるかなんてわからないぞ』

「そう、じゃあ仕方ないわ。街の宿で合流よ」

『了解……はぁ、なんで、お嬢は息か全く乱れていないんだよ?』と聞こえた後、通話が切れた。

「じゃあ、帰ろう」と、カーバンクルの入った檻を持ち上げるリヴィエラ。檻を合わせて10キログラムほどするのだが軽々と持っている。リヴィエラの見た目は華奢な少女だが筋肉はかなり付いている。

「時は金なりっ」

 と呟き、「うおー」と、ものすごい勢いで草原を駆けていくリヴィエラ。見渡す限り草原が続いており、道はなく目印もないが迷うことなく突き進む。カーバンクルも驚きだ。

 草をかき分けながら進んでいくと、街が見えてくる。街と言っても少し発展した村のような場所だ。商人や職人も居るが、街の住人は農民が多い。《ウッコ》と言う名の、《フォドピャノワ王国》の北に位置する街だ。城壁はない。

 街に到着し速度を歩む程度にし、一つしかない宿屋に向かう。畑を抜け、木造の家々が続いている。屋根が藁の者もある。商店街の前を通ると、呼び込みの声が聞こえる。よろい戸を開き、上の戸を屋根の下の戸を机代わりにしている。開きチラと見るがリヴィエラは必要な物しか買わない。特産品を大量に買い転売することもあるが、この街にはこれと言った名産はない(カーバンクルが生息しているが市販していない)。通り過ぎ、職人通りを突き進む。親方の怒鳴り声が聞こえる。リヴィエラがなめし革職人の家の前を通り過ぎ、臭いにわずかに顔をしかめたが、今日は儲けたのですぐにニコニコ笑顔に戻る。

 宿屋に着き部屋に行く。二人部屋でイングリットと同じ部屋だ。イングリットはまだ帰ってきていなかった。カーバンクルが入った檻を床に置き、ベッドに座る。遠話石を取り出しイングリットにつなげる。

「もしもーし。今どこよ」

『ん、ああ、お嬢か、どこと言われたら草原だよ。街が遠くの方にうっすらと見えるな』

「さっさと帰ってきなさいよ。時は金なり。人間は、寿命の時間を切り売りして、暮らしているような物なのよ。時間が過ぎるというのはその分寿命が減っているってこと、だから、時間を無駄使いするってことは金を浪費しているのと同じなのよ。わかっている?」

『……了解。はぁ』

 通話が切れた。遠話石をしまう。

 今度は腰の袋からケースを取り出す。その中から錠剤を取り出し、水袋(素材は動物の膀胱だったりするが。あまり気にする人はいない)の水で飲む。薬を飲むと言ってもリヴィエラが病気な訳ではない。《エタミン》の補給のためだ。《エタミン》とは気、魔力、マナなども言う人間の生命力の様な物だ。環金術などの《超常現象術》を使うと、体内に貯蓄されていた《エタミン》が減る。エタミンは普通に過ごしていれば生産される。が、人が一時間生きるのに八九〇〇E消費し、足りないと生命機能が下がる。そして最悪の場合――死ぬ。万能に見える《環金術》もなかなか縛りが多いのだ。

 リヴィエラは、カーバンクルの檻をベッドの上にのせ、指を檻の隙間から差し込みカーバンクルと少し戯れ休憩した後、街にでる。時は金だ。

 冒険者ギルドに向かうのだ。冒険者ギルドでは、冒険者に仕事を斡旋してくれる。カーバンクルを売るために都市に向かう必要があるので、ついでに都市まで護衛の仕事をしよう、と言うわけだ。

 冒険者ギルド《莫迦な阿呆鳥の集会所(フーリッシュ・アルバトロスネスト)》、通称トロの扉を開ける。扉に付いていた鐘がカランカランと鳴る。話していた人たちの目がリヴィエラに集まるが、すぐ興味をなくし散る。無骨な鎧を着た者も居れば、ぼろ布をまとっただけのような者も居る。壁には大量の羊皮紙が貼ってある。依頼の内容が書いてあるのだ。リヴィエラはそれらに目をとめることなく受付に向かう。

王都バグラチオン行きの護衛依頼はないかしら?」

 がっしりとした体つきでごつい顔をした男の受付に話しかける。男は置いてあった紙の束を一つ取りめくり、一枚の羊皮紙を取り出す。

「王都への護衛、依頼主《モンタナ商会》募集人数五人、前払金なし、成功報酬八万ゴルディ。出発は三日後。現在応募人数ゼロ人。この一件だけだ。受けるか?」

「それで良いわ。その依頼を二人で受けるから、五人分の報酬もらえるかしら?」

「無理だ――」

 リヴィエラは左胸に付いている虹色に煌めく阿呆鳥のバッチを指さす。

「オリハルコンバッチだと……!いいだろう。それなら商会も納得するだろう」

 驚いた様子の男。《トロ》の会員にはランクがあり、会員証のバッチがそのランクの証明証になっている。ブロンズ、シルバー、ゴールドの順にランクが高くなり、最高クラスがリヴィエラの持つオリハルコンバッチである。このバッチが《トロ》では何よりも信頼の証となる。男の声を聞きギルド内にいた人たちがリヴィエラを眺めている。

 男が挿しだした契約書にサインする。

「契約成立ね」

「ああ、まったく、こんな胸の頼りないガキがオリハルコンバッジとは」

「……何か言った?」

 人を殺せそうな眼力で男を睨み付けるリヴィエラ。

「いや何にも……そういえば知っているか魔王討伐の依頼」

「魔王?」

 男が無言で壁に貼ってある一枚の羊皮紙を指さす。一番大きな紙だ。そこにはこう書いてあった。

 魔王討伐依頼――《フォドピャノワ王国》、《スコリナ領》にて統率された《冥獣(プルートガルム)》により五つの街と二三の村が占領された。《冥獣》を率いる男は自らを《冥界魔王(アンダーワールドキング)》と名乗り、《フォドピャノワ王国》に宣戦布告した。男を討伐した者に金貨一万枚、すなわち一億ゴルディの報酬を約束する――フォドピャノワ王、マルティーボフ四世。依頼を受ける者は《バグラチオン城》に出向くこと。

 《フォドピャノワ王国》とは今現在リヴィエラが居る国のことだ。《冥獣》とは《エタミン》の異常活性化により、現存の生物が突然変異して生まれた生物のことだ。カーバンクルも《冥獣》の一種だ。

まあそんなことより、一億!一億!リヴィエラの目がゴルディマークになっている。王国に属する軍を使う軍事費より一億の方が安いからと、だめで元々として企画したのだろうが一億を前にしたリヴィエラの敵はないように見えた。

「ん、ガキ。字、読めたか」と男。

「読めるわよ!」


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