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無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


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2/7

運び屋


……side……


「…………」

なんか追いかけられてる。

ここ何日かの間に同じような事が数回あったから間違いない…。


毎回、ボクと同い年くらいの女の子ばかり…。

何か気に触ることでもしたっけ…。

ドローンからドローンへと飛び移りながら思い返すも、恨みを買うような覚えも、トラブルを起こした記憶もない…。


そもそもボクはただの運び屋だ…。

しかもワケアリのものとかでもなんでもなく、緊急時に病院へ輸血用の血液を運ぶ。

この街は複雑に入り組んでいるし、車では間に合わない。大型ドローンでも運んではいるんだけど、ボクのが速いからって依頼が来る。

先ずは一パックだけでもあれば命を繋げるから…ドローンの到着までに先んじて運んでほしい。って…。


そんな依頼が頻繁にあるわけないと思うかもしれないけど、この街はあまり治安が良くはない。

当然トラブルも多い。撃たれた、刺された、なんて理由で頻繁に必要とされる。

なのに献血する人は少ないからどこも不足してて…。

っと…。病院到着。

屋上のヘリポート兼ドローンポートへ着地。

待っていた人に小さなクーラーボックスを手渡す。

受け取った人は、直ぐにスタッフへとクーラーボックスを手渡して指示を出してる。

すぐに輸血が必要な人がいるんだろうから…。


「いつもありがとう。本当に助かるわ。あなたってドローンより早いから」

「仕事だから…」

「これが報酬よ。少し色を付けといたわ。またよろしくね」

「ありがと…」

受け取ったカードをポケットへ仕舞う。

「”ガガッ…ナオ、次の依頼だ。 届け先はCブロックの街営病院ガガッ…O型を一パック…“」

「依頼、もう行く…」

「ええ。頑張ってね」


一度取りに戻らなきゃ…。

病院の屋上から跳躍して、隣のビルへ着地。屋上を駆け抜ける。

倉庫からCブロックは遠い…。ここからのが近いからO型ならボクが直接行けば…ってそんな事したら今夜は動けなくなっちゃう…。

仕方ない素直に戻ろう。


倉庫方面へ向かうため、ワイヤーフックを行き先のビルの屋上にある柵へと射出。引っかかったのを確認後、空中で手繰り寄せていく。壁へと身体が着くまでには柵に手が届く。

最新式ならもっと長距離まで届くし、自動で巻き取ってくれるけど、あんな高額なもの手が出ない…。


走りながら数メートルほどのワイヤーを手動で巻き取り、再使用可能状態にしておく。

不便だからあまり使わないけど無いよりは…。


……。

そういえば忘れてたけど、追われたんだっけ…。

病院で止まったから追いつかれた…?

ま、いいか。ここから先はワイヤーもいらないし、この時間ならドローンも多い。


壁から壁へと身を翻し、広すぎる幅なら空中で身体を回転させて跳躍距離を稼ぐ。

そうこうしている間に追手も撒けたらしい。


倉庫でまたクーラーボックスを受け取り、Cブロックにある街営病院へ向かう。

「”ガガッ…ナオ…急げ…相当緊急…しい…ガガッ“」

「急いでる…。そろそろインカム新調して…古すぎて聞き取りにくい…」

「”そんなガガッ…ないっ!“」

だよね…。街すべてをカバーできるほど高性能な通信機は当然高額。

中古でさえ買うのがギリギリだったって言ってたっけ。

街の人の命に関わるのに、予算があまり貰えてないとか…。


この街では、一度街の中心に集められた血液とかが各病院へと最低限割り振られるのだけど、しょっちゅう足りなくなる。

だからこそ中心にある倉庫にある程度の備蓄を残し、緊急時に対応できるようにしてるとか言ってたっけ。足りなくなった病院へ備蓄に余裕のある病院から運ぶよりは早いから…。

稀に近くの病院から病院へと運ぶこともあるけど、本当に稀。


倉庫より医療現場へのが予算が必要なのはわかるけど、もっと献血に力を入れるとかやりようはあるだろうに…と素人ながら思う…。

どうせ権力者は何かあっても優先的に治療を受けられるから、関心が薄いんだろうね…。

結局、モノを云うのは金と権力。

ボクはそんな奴らより、一人でも助けられる可能性のある命があるのなら疾走る。それでいい…。



病院へとクーラーボックスを届けたタイミングでインカムに通信が入る。

「”今日の仕事は…りだ。 血液パックが尽きたからな。 …つかれ。そのまま帰っていいぞガガッ…”」

「りょーかい…」

届けるものがなくなれば仕事もなくなる。当たり前の話。


前の仕事もそうだった。高性能なドローンが普及したせいで脚で運ぶ必要がなくなり、所属していたトランスポート会社が人員の削減をした。

ボクはたまたま人一倍足が早かったおかげで、社長から次の職場を紹介されて今に至るけど、他の人は…。


便利になればありがたい反面、職を失う人がいる…。

上にいる人にはそんな下々の事情なんて関係ないのだろう。

ボクみたいに次の仕事があるだけマシ…。


トボトボと家への道を歩く。

キャップを脱いでマスクも外し、まとめていた髪も解く。

「ふぅ〜…」

「見つけた!!」

…!?

追手…? 撒いたと思ったのに!


マスクを着けキャップ被りながら走る。

何なの…?

「待って! 話を聞いて!」

ん…?はなし…?


声からして女の子だろう。ここ最近追いかけられたのも必ず女の子だった…。

相手が話があるというのなら、聞くべきかもしれない。これ以上付きまとわれて仕事の邪魔をされても困るし…。

立ち止まり、振り返る。

そこに居たのは、セミロングの茶髪をポニーテールに纏めた、可愛らしい顔をした女の子。可愛いのに目つきだけはスキがない…。下手に動いたらヤラれそうって錯覚するくらいには…。

体型はスレンダーで身のこなしが軽そうだな…って思うのは、ボクがこういう仕事をしているから…。


「なに…?」

「ありがとう。止まってくれて。ここまで走り続けてきたから、正直今逃げられたらもう追いつけなかったよ」

じゃあ逃げればよかったかも…。

でも、この子…正直だな。そんな情報をボクに与えるなんて。バカなだけって可能性もあるけど、それはないとカンが言ってる。

嘘偽りなく、真正面からボクと向き合おうとしてるんだ…。

どのみち事情を聞きたいんだから逃げても仕方がないしね…。


「私は斑鳩麗亜。 チームUiのリーダーだよ」

チームUi…聞いたことがある。

最新式装備を身に纏い、街の治安維持に貢献している自警団…。

助けられた人は数知れず、捕まった悪党も数知れず…。

そんなチームのリーダーがボクに何のよう…?






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