表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

眠らない街



私がリーダーを務めるパルクールチーム・Ui(うい)の活動拠点である街は眠らない街だ。

日が沈むと全てのビルが煌々と明かりを灯し、店のネオンが様々な色に街を染める。昼間より明るいほどに。

街のあちこちで路上ライブが行われ、色街には人が集まり、カジノには観光客がお金を落とす。

飲食店も夜のが客が多いくらい。

夜に寝ようなんて人間はこの街で暮らしたりなんてしない。煩くて眠れやしないもの。


ナイトレスシティ・イカルガ。 基本、ナイトレスシティと言えば伝わる。

元々は斑鳩一家という組織が資金源にするため、荒野のど真ん中に歓楽街として拠点を立ち上げたっていうのが始まり。

でも果たして裏組織の一家だけでこんなに大きな街を作れるのか?と。

立ち上げから100年近くたった今では、もう都市伝説の様になってしまっている。


私、斑鳩麗亜(うるあ)はそんな都市伝説の様にされてしまった斑鳩一家の娘の一人。

実際、この街は斑鳩一家がイチから都市開発したもので間違ってはないし、今も支配している。

私の上に居る姉二人はこの街を裏から支えるボス…だったりする。勿論両親だってそうだった。今は引退してのんびりイチャイチャと毎日過ごしているけど…。今年16歳になった私に弟か妹ができそうな勢い。

今の医療技術なら寿命が数百年なんてザラだし、老けもしないから有り得なくないのが怖い。



斑鳩一家がこの街の支配者ではあれど、対外的な表向きのトップは当然いる。

それだって一家の息のかかった一人でしかないけれど。


そんな訳だから、この街はこの街だけの法があり、執行者も斑鳩一家の人間。

とは言っても、こんな細かい裏事情を知っているのは一家の者か、うちに深く関わる人間だけ…。

いわゆる堅気の人達には無縁の話だ。それでも”斑鳩”という名前を出せば絶大な力を持つことにはかわらないが…。

街の名前になっているくらいだからね。余程察しが悪くなければ気がつくし、都市伝説みたいになっているとはいえ、噂に尾ひれがついて名前が街に浸透はしている。


ナイトレスシティは“巨大国家・神楽”に属してはいるけど、神楽の法も権利もこの街では通用しない。

これにも大きい様で対して大きくない理由があるのだけど…

「うるあ、そろそろ行ける?」

「う、うん! 今日こそあの人の正体を掴んでやるんだから!」

「相当入れ込んでるよね。一目惚れでもした?」

「煩いよカリン! 顔も名前も知らないのに一目惚れもないでしょう」

「いやいや、わかんないよー。身のこなしにころっとやられたーなんてウチラの界隈ではあり得るでしょ」

…そうね。実際に私がそうだから反論もできない。


「でも本当にいるの? ドローンより早く街を駆け回り荷物を届けるなんて流石に盛られてるよね」

「カリンがそう思いたいならそれでもいいよ」

私は実際に見た。まるで飛ぶようにビルからビルへと翔けて行く姿を。ドローンを足場にして、この私を軽々と追い抜いていった。

一瞬だった。黒いマスクで口元を隠し、キャップを被った横顔。私に見向きもせず追い抜いていった背中。

ダボッとしたパーカーに、下はぴっちりとしたスパッツ姿でかなりの美脚だった。女の子なのか、細い男の子なのかはわからないけど、もう一度会いたい…。


多分これを一般的には一目惚れと呼ぶんだろう。

あの横顔が、後ろ姿が忘れられない。

チームの仲間にスカウトしたい人を見つけた、と探し始めてそろそろ一週間になる。


「よし、チームUi。今夜も翔るぜー!」

「「「おー!」」」

ナイトレスシティにはいくつものパルクールチームがあるけど、うちは基本女の子のみで構成された総勢12名のチーム。

彼氏持ちの子も当然いるし、集会につれてくることもあるけどチームメンバーではない。

だってほら…男の取り合いでチームが瓦解なんてよくある話だもん。

うちの子たちなら仲間の彼氏に手を出す…なんて事しないだろうけど、万が一がある。

そんなトラブルを避けるため、正式メンバーに加入させることはない。

下部組織扱いで、仲間の彼氏や兄弟が集まったものがあるし、しょっちゅう交流もしてるけど、それはそれ!

だってルールを厳しくしすぎたら堅苦しいじゃない。


チームUiの集会場でもあるビルの一室の窓から次々と飛び出していく仲間たち。

私はそんなみんなを見送ってから、最後に飛び出す。

「“うるあ、早速トラブル発見! 女の子が絡まれてる!”」

隣のビルへと跳んでいる最中に、仲間からインカムに報告が入る。

「対処できそう?」

「“通報もしたから平気。ってカリンが蹴り飛ばしたわ“」

「ははっ…。じゃあ縛り上げて引き渡して」

「”りょーかーい“」

「引き続きパトロールよろしくね。あと例の人も…」

「”あいよー!”」

今の会話を聞いてもわかる通り、うちらのチームUiはこの街の自警団だ。

表向きの警備だけでは目の届かない小さなトラブルとかを解決してる。

当然、斑鳩一家としての仕事だから、資金は斑鳩(うち)から出ていて不自由しないし、装備も最新式の物を揃えてる。


左腕から射出するワイヤーフック、型式名IK230もその一つ。秒速ニ百メートルほどの速度で飛び、最長百メートルまで伸びる。

射出されたあとにフックが展開、様々な場所へと引っ掛け、身体を預ける。

手元の操作だけでフックの折り畳みや、ワイヤーの巻取り回収もできるから、再利用サイクルも早い。

今も十数階建てのビルの窓枠飾りに引っ掛けて、振り子のように身を預けてる真っ最中。


次の着地場所を見極め、フックを収納、ワイヤーの巻き取りをして華麗に着地。次の跳躍先を即座に決めてまた飛ぶ。

フィーーーンっと少し耳障りな音が近づいてくる。

「ドローンか…」

このドローンも斑鳩(うち)の開発したプロペラのない最新のもので、下部にはワイヤーフックをかけられるパーツがついてる。

つまり、ドローンにぶら下がって移動もできるし、なんなら足場にだってできる。それなりの反応速度が必要にはなるけど…。

Uiでそんなことができるのは、まだ私かカリンくらい。


少し悩んだけど、ドローンの行き先が私とは違うから無視。

左右のビルの壁と壁を交互に蹴りながら上へ。

三十階をこえる高さのビルのてっぺんに上がり、周りを見渡す。


前にあの人を見かけたのはこの辺りなんだけど………。



「“うるあ! それっぽい人見つけたかも! 旧式のIK100番タイプ使ってる!”」

「どこ!? すぐに行くから、見失わないように追いかけて!」

「”疾っ…。Jブロックのライブステージの上をKブロック方面へ向かってる! 近場の子いたら手伝って! 速すぎて置いてかれる!“」

Jブロックって…ここからじゃかなり距離が! しかも更に離れる方向へ向かってるの!?


「無理はしなくていいけどできる限り食らいついて」

「“りょー!“」

靴につけられた跳躍増幅ダイヤルを最大まで回転。ビルの屋上を走り、縁を蹴って空へと躍り出る。

間に合えっ!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ