05話 答えよ神!!
ぜんぜんブクマつかないのでタイトル変更します。内容もタイトルと微妙に違ってたし。
――「兄ちゃああああん!!」
猫又の大剣が振り下ろされる瞬間、突然に妹の声が岩肌に響いた。
ステラ? バカ野郎! ラインを越えて来やがったのか。
猫又は俺の顔面手前で大剣を「ピタリ」と止めた。
「なんだ、ずいぶん可愛い声のお客さんだね。あんな子を始末するのは気が重いな」
「お前………! まさかやる気か!?」
「看板に書いてあったろ。誰であれ殺すって。そうだね、君ともう一回ゲームをしようか。ボクがあの子を殺すのを止めてごらん」
猫又は大剣を肩に下ろし、俺の上から「スッ」と移動した。
俺が体を起こすと、猛然とダッシュで駆ける。
ヤツを追って俺も駆けだすも、猫又のスピードは半端なく速い!
糞ッ、とても追いつけやしない!
――「兄ちゃああああん!」
「来るな! ステラ、逃げろぉ!!!」
ステラがこの声を聞いて、逃げても無駄だ。
こんなに速い猫又から逃げきれるとは思えない。
糞ッ、こんな事でステラを、妹を失っちまうのかよ……!
「…………え?」
やっと追いつき、奴の背中が見えた。
その光景は、猫又が大剣を振りかぶり男装姿のステラにそれを振り下ろさんとする瞬間だった。
だけど奇妙なことに。
猫又はその態勢のまま固まっていた。
「どう……したんだ? なんで奴はステラを殺さない? ………まさか!?」
猫又の感情の一切が死んだような冷酷な目。
あれを見続けるうちに、たとえ男装スキルのタラシ能力であろうと、奴をオトすのは不可能だと思っていた。
だけどもし、スキルの能力が俺の想定を上回るなら――
「わぁっ、ビックリした。ぶつからなくて良かったよ。君は大丈夫?」
しかもステラは、殺されかけたことに気づいてない!?
だから雑魚なんだよ、お前は!
「う、うん。ボクは大丈夫……だよ」
猫又は慌てて振り上げた大剣を背中に隠す。………隠しきれてないけど。
いやしかし、なんなんだ? その可愛い声は! 顔は!
さっきまでの冷酷な殺戮者の顔から変わり過ぎだろう!
「あ、そうだ。この先に兄ちゃんが行ってるんだけど、君は知らない? スゴイ剣が打ち合っている音が聞こえてきて、思わず来ちゃって。賊はすごく強いらしいから心配になっちゃって」
そいつだ、そいつ! 俺はそいつに殺されかけたンだよ!
「お兄………さん? ああ、彼か。さっきボクと友達になった」
友達ってアレか? さっき殺害して思い出にしてしようとしてたアレなのか!?
「あ、じゃあアタシとも友達になってよ。アタシはステラ」
「あ、女の子………なんだ。なのにどうして………ボク、どうしてしまったんだ」
猫又は顔を真っ赤にして顔をそむける。仕草はモジモジと乙女だ。
そんな奴の顔をステラはのぞきこむ。
「どうしたの? きみ、名前は?」
「あ、うん。あんまり………見ないで」
男装スキルすげぇ! あの殺戮の猫又が、あんな恋する乙女になるなんて!
領主様、ボケジジィなんて思ってすみませんでした。
あなたこそは聡明で英邁な領主様!
――「ルバル、無事だったか。激しい剣の打ち合いが聞こえてきたが、戦いになったのか」
と、そこに白銀の鎧をまとう女騎士が俺に声をかけてきた。
騎士団団長補佐のノエル・アンダースンだ。
「アンダースン様、そうです。あの猫耳族の娘が話も聞かず殺しにかかってきまして。交渉なんて無理だと思われたのですが」
「そう、か。あのネコ耳がすさまじいスピードでステラを殺そうとした時はあせったが」
「あ、アンダースン様には見えたんですか。なのに当のステラは、まったく気づいてないなんて………どこまで雑魚なんだ、アイツは」
「だが、そのおかげで交渉は出来そうだ。当初の予定と違うが、策を進められる」
「ですね。進めさせましょう」
案外あのニブさや雑魚さがスキルと上手く嚙み合っているのかもしれない。
とにかく、あの猫又がステラにハートを射貫かれ焦がれまくっているなら、このままステラに交渉させよう。
本来ならアンダースンの役目だが、ヤツの言葉を猫又が聞くとは思えん。
「おい、ステラ」
「あ、兄ちゃん」
「そいつが問題の賊だ。交渉はお前がしろ」
「ええっ、この子が? でもアタシが交渉って……そんなのしたことない」
わかってるよ、お前が交渉なんて高度な仕事に無縁だったのは。でもな。
「これはお前にしか出来ない重要な役目だ。俺たちの領と領主様のために、しっかり役目をはたしてみろ」
「わ、わかった! えっと、じゃあ、賊さん。領主様がお前たちに、ええっと、ハァッ、フゥッ、ハーッ! 言いたいことがあって、それで………ホワアァッ!」
早よ、しゃべれ!
話のときどきに奇声あげるのは、どんな高度な交渉テクニックだ。
「領主様の……えと、お言葉をお前たちに………あれ? あれれ? ああっ! や、ヤバイ! やばいッス、兄ちゃん!」
「…………なにがだ」
「領主様がなんて言ってたか覚えてないッス! あと冷や汗が、冷や汗がすごくてぇ!」
ウアアアアアアアアッ! 思ってた以上に雑魚でポンコツだったァ!
冷や汗がすごいのは俺もだァァ!
なんということだ。せっかく交渉まで進んだのに。
しゃべりが出来なくて終わるなんて、そんなアホな話があるかよ………
「うんうん、ゆっくりでいいよステラちゃん。ボクはいつまでも待っているから」
ええっ!? 交渉相手の猫又から優しい言葉がかけられただと?
…………いや、ステラを観察したいだけか。
『話なんかどうでもいい』って顔をしている。
「あ、ありがとう! アタシ、大事な役目なのに、ぜんぜん上手くできなくって。ええと、それできみの名前は……」
「ボクは【おやつ】。本当の名前は忘れちゃったんで、それが名前の代わりだ」
「おやつちゃんか。アタシはステラ。ええっと、すぐ思い出すから、ちょっと待ってて」
グワアアアアアッなんだか優しい空間になっている!
奥にいる奴が大魔族の封印を解く前に話つけなきゃなンねえんだろうが!
このポンコツに人間世界の命運を託すなんて、イヤすぎる!
「アンダースン様、どうします。このままじゃ話が終わるのは、大魔族の封印が解かれた後になってしまうッスよ」
「うんうん、困っているステラちゃんも可愛いなぁ♡」
おいコラ不審者。このヤバイ危機に、アンタまで優しい空間の住人になってどうすんだ。
人の妹で悶えてんじゃねぇー!!
「アンダースン様! あんま時間なんじゃないッスがね。奥の奴が大魔族の封印を解くまで、どれだけ猶予があるのか」
「ハッ! そうだった。団長補佐としてお役目をまっとうせねば。おっと、ヨダレを拭いて……っと」
この変態騎士め。ヨダレが垂れるほど、人の妹でどんな妄想くり広げてたんだ。
「ああ、おやつ君。彼女が言わんとする話なら、私が熟知している。私から交渉内容を話そう」
ギロリ
「黙ってて。ステラちゃん以外の話を聞く気ないから」
ぐわああああっ! やっぱりステラ以外はダメかぁ!!!
このまま俺たちは、ステラの『えーと、えーと』を聞き続けるしかないのか?
ステラが交渉内容を思いだす奇跡を信じて!
答えよ神!!




