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04話 デッドラインの猫又

 ともかく策は立った。

 ステラを交渉役の貴族の坊ちゃんという体にして連中と対面。そこで男装スキルのモテ効果に期待するというものだ。

 アクロイア聖碑へ行くメンバーは俺とステラとアンダースン。ステラは貴族っぽく馬車で行くので、御者と護衛数名。

 表向き戦闘じゃなく交渉だから、警戒させるような戦力を連れてくるわけにはいかない。



 「戻って来たな…………」


 到着したのはゴツゴツした辺境の小高い岩山。この奥の先に目的地のアクロライア聖碑はある。

 多くの冒険者仲間を失い、最強戦力の冒険者と数えられた俺のプライドを完膚なきまで失わせた場所。


 「ふぃーここがスゴイ賊がいるって場所なんだね、兄ちゃん。なんかゾクゾクしてきた」


 「ああ、そうだ。ここから先は俺の指示に従えよステラ。アンダースン様も」


 「うむ。お前の冒険者としての判断に期待する。私は必ずステラを守ってみせよう」


 「守っていただくのはありがたいんですが………そんなにくっついては、かえって守りにくいでしょう。護衛対象は自分の歩幅一歩から二歩の間隔に置くものです」


 「それにそんなに背中さすらなくていいッスよ、アンダースン様。『ゾクゾクしてきた』って言っても、寒いわけじゃないッスから」


 このセクハラ騎士め。立場利用して人の妹にナニしてくれてる。

 ともかく俺たちは岩山を登り、アクロイア聖碑を目指して進むのだった。

 

 「ずいぶん無警戒に進むな。大丈夫なのか?」


 「この辺りは大丈夫なんスよ。連中は、まだここでは襲わない。問題はこの先………ほら、アレです」


 「む? 立て看板か。なにが書いてある?」


 「まぁ読んでください」


 その看板にはこう書かれている。


 『足元の線はデッドライン。ここを越えた者は誰であれ殺します。女でも子供でも赤ん坊でも』


 その文が示すように地面には赤い線がハッキリと引かれている。


 「足元の線………これか。警告のつもりか。ずいぶん律儀な賊だな」


 「ええ。本当にこの線を越えて入った連中は殺されまくりましたし、この線から逃げた者は追撃しませんでした」


 「ふむ。だが、われわれの目的は交渉だ。この線を越えて、賊と接触しないわけにはいかんぞ」


 「ですがおそらく、この線の先に入ったらステラもアンダースン様も奇襲でやられるでしょう。腕利きの仲間が、なすすべなくやられましたから」


 俺が生きているのは、偶然位置が良かったからにすぎない。

 このデッドラインの先に行けるのは、腕と覚悟と連中の恐ろしさを知る者だけ。

 つまりこの中ではたった一人だけだ。


 「まずは俺が中に入って、ヤツラの一人をここまで連れてきます。そこから先は交渉役のステラとアンダースン様にまかせます」


 「それしかないが………大丈夫なのか。おそろしく凶暴な賊を信用させ、ここまで連れてこられるのか」


 「俺が五体満足で帰れたのは、ヤツラの一人に何かしら気に入られたせいらしいんですよ。それに期待して話を聞いてもらいます」


 「兄ちゃん………」


 「行って来るステラ。連中を連れてきた後は頼むぞ」


 妹の切ない視線が痛い。それでも行かないと。

 デッドラインの内側に一歩足を踏み入れる。

 その瞬間、ヤツラと戦った記憶がよみがえる。


 一人は大きな帽子をかぶり片目に眼帯をした女魔導師。

 一人は【ネコ耳族】と呼ばれる猫の耳と髭と尻尾を持つ女。

 一人は【ウサ耳族】と呼ばれる兎の耳と尻尾と足を持つ女。


 その中で俺が戦ったのは――


 キュピーーン

 

 背中に走る危険察知の悪寒に、思考を中断する。

 その場から素早く飛び退った場所に、剣の衝撃が響いた。


 ズッドーーン


 「おいおい、こっちはたった一人だぞ。やる前に話くらい聞けってんだ」


 俺に居た場所の地面は深くえぐれていた。

 少しだけヤツラの理性に期待していたが、無理な話だったか。


 ――「立札は読んだよね。デッドラインを越えたら殺すって。だから面倒な話なんかしないよ。君を殺す」

 

 この声には聞き覚えがある。

 声だけ聞けばあどけない女の子の声。

 されどその小柄な体格に合わない大剣を軽々振り回し、その戦闘力は一軍にも匹敵するほどの脅威の猫娘。


 「お前か、猫又。俺だ。先日戦ったろう」


 奴の尻尾は先が二つに割れている。こういった特徴はネコ耳族の中でも珍しく『猫又』と呼ばれているので、それにちなんで俺もそう呼ぶ。


 「んん? ………ああ、君かぁ。どうりでボクの不意打ちをかわして、驚きもしないで冷静に会話なんか出来るわけだ」


 「そうだ。俺とお前はいわば旧知の仲だ。話くらい聞いて………」


 「見損なったよ」


 「ああ?」


 「ボクが君を見逃したのは、君の戦闘センスに非凡なものを感じたからだ。いつかすごく強くなって、ボクに挑戦してきてくれることを期待してね。なのに修行もしないで戻ってくるなんて。勝ち目なんか無いの、わからないかなぁ?」


 「だから! 戦いに来たんじゃないっての。交渉だ。領主様は、そちらの要求に、ある程度は応えるお考えだ。とにかくウチの交渉役と話しあって………」


 「そんな無駄なことしないよ。ボクらが大魔族の封印を解くのを止めたけりゃ、力で来なよ。それこそ国王様から軍隊でも借りてさ」


 ガキィィン ギャリリィィ カーーン


 猫又は話しながら切り込んでくる。

 本当に自然に殺しにくる奴だ。


 「おお? すごいね、君。けっこう本気なのに、まだ死なない。君のセンスが非凡じゃないと視たボクは間違ってなかった」


 糞、どこが本気だよ!

 こっちは全力で防御して、息すら出来ないってのに!

 お前はゆるく会話しながら、こんなスルドイ剣撃をいくつも放って!


 ガッキーーン ギャリリリィィ ギャリッ


 糞ッ、息が………!

 呼吸をしなけりゃ死ぬ!


 俺はあえて大きく踏み込み、ヤツの強撃をまともに受ける。

 そのまま踏みとどまらず、後ろに全力で飛び退る。

 強撃の威力と全力後方ジャンプの相乗効果で、ヤツから大きく距離をとることに成功………のはずだった。


 「なにィ!!?」


 なんとヤツは、後ろへ跳ぶ俺の体について来る! 駆け足で!


 「あははは、甘いよ。やりたい事は、もっと隠さなきゃ。そら!」


 ギーーン


 振った大剣の一撃を肩当てで受ける。

 ダメージはないものの、バランスを崩して転倒。


 「くっ………」


 倒れた俺の真上に覆いかぶさるように、猫又はそびえ立つ。

 真上に大剣を振り上げて。


 「ああ、もう終わりかぁ。ひさびさに楽しかったなぁ」


 「………最後に教えろ。お前らは何で大魔族の封印を解く?」


 「そりゃ戦いたいからだよ。人類を滅ぼす大魔族とバトルなんて、すっごいスリルあるじゃない?」


 「バカな……いくらお前らが強いからって、大魔族と戦って勝てるかよ!」


 「だからいいんじゃない。君らやモンスターなんかといくら戦っても、まったくスリルがないもの。たまに君みたいに過程を楽しめる奴もいるけどさ。やっぱり死ぬのを実感できなけりゃ、生きてる実感もない。ボクたちはみんなそれを感じたいんだよ」


 「そんなことのために……大勢を殺したのか。たかが退屈しのぎのために! お前らが殺した連中は、毎日を必死に生きて家族を養って。そんな人間だったんだぞ!」


 「ああ、そうだろうね。ボクらのやった事もやろうとしてる事も、たかが退屈しのぎ。ひどい傲慢だ」


 なに?


 「でもね、傲慢であろうと悩みは悩み。人類を滅ぼすほどのスリルがなきゃいられないほど、ボクらは病んでいるんだ。心が飢えて渇いてしなびているんだよ」


 「何を言って………」


 「じゃあね。すごく楽しかった。君はボクの永遠の友達だよ」


 ブウゥゥゥン――


 

 サイコパスキャラを書くことに挑戦。上手くできたかなぁ。

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