03話 愛してるゲーム
休みなので三話目も書いちゃいました。書いてて楽しいので、予定より長めに続けようかな。
ヤバイ………ヤバイぞ………
このままでは自滅確定の策で、最凶最悪のあの女どもの元に、ステラを道連れに死にに行かされてしまう。
とはいっても、すでにステラは【男装スキル】なるものの継承の儀をうけに行っちまったし。
ザコ小娘らしく怯えて震えて『私には出来ません』とか言いやがれってンだ。
臆病モンのフリでもすりゃ、領主様も考えを変えるだろうに。
『やりますッス! 領主様のお願い、このステラが全力全開でかなえてやるッスよォ!!』
とか言って、意気揚々アヤしいスキルをもらいに行きやがって。
スキル継承しちまったら、断れねぇ立場になっちまうだろうが。どうすんだ。
「おそれながら伯爵閣下、私めに提案があります。発言のご許可を」
と、ノエル・アンダースン騎士団団長補佐どのが、待っている間に言い出した。
この人も俺ら自滅同盟のひとりだが、何か思いついたか。
「許す。言ってみよ」
「賊討伐におもむく前に、その男装スキルの効能、私めに試していただくというのは、どうでしょうか。効果のほどを正しく知れたなら、策も正しく立てられるかと存じます」
上手い! ここで団長補佐どのが、まったく効かないサマを領主様に見せつけてやれば、この策は立ち消えになる。
さすが偉い人の無茶ぶりをかわすのは慣れている。
そのカタブツ恋愛皆無一生独身女ヤモメの鉄面皮、とくと見せつけてやれ!
「ふむ。だが、どのようにして試す?」
すかさず俺もアンダースンが起こした良い流れに乗る。
「おそれながら俺さまめは、それを試すゲームを知っております。それをもって効能を試すというのはいかがでしょう」
「ほほう、どのようなものだ」
「『愛してるゲーム』というものでしてね。二人の親しい者が顔を近づけ相手に『愛してる』と告げるんです。照れて顔をそむけた者が負けです。ゲームとわかっていても、好意を持っている相手に言われると、かなり恥ずかしいらしいですよ」
「良かろう。ステラが戻ったなら、それで試すがよい」
ウシッ! これでアンダースンがステラに『愛してる』とささやかれても、まったく顔色を変えなければ、この策は立ち消えだ。
俺とアンダースンは視線を合わせて笑い合う。
心は同じ。偉いヤツのアホな考えを共に叩き潰そう。
やがて謁見室の扉からひかえめなノックの音がした。
「伯爵閣下。スキル継承の儀、とどこおりなく完了してございます。ステラ殿の入室、お許し願えますでしょうか」
「許す。入れて参れ」
許可とともに、どこか妙な恰好をした女官が扉を開く。奇妙なことに、その女官の目はアイマスクで覆われている。
そしてその後ろから、衣装を変えたステラが意気揚々と入ってきた。
「兄ちゃーん、どう?」
「お………」
ステラが小綺麗になっていた。髪は整えられ、服も貴族様の着る上等のものに変えられている。男物だが。
こうしてみると、コイツけっこう可愛いんだな。
まぁ、どこかの坊っちゃんに見えないこともないが、『これで女をオトせるか』と問われれば、『無理だ』としか言えない。さっさと領主様に現実を見せてさしあげよう。
「よう、綺麗になったなステラ。んじゃ、その男装スキルの効果。試してみるぞ」
「試すって、どうやって?」
「『愛してるゲーム』だ。そこのアンダースン様相手にやってみろ。アンダースン様、よろしいです……ね?」
ふと見ると、アンダースンの様子がおかしい。
これまでまったく見せなかった呆けた顔で、ステラをジッと見ている。
おいおい。いくら小綺麗になったからってオドロキすぎじゃないか?
「アンダースン様、男装スキルの効果のほどを領主様にお見せになるんでしょ。『愛してるゲーム』をやります。よろしいですね?」
「あ、ああ、いつでも良いぞルバル。私はいつでも冷静だ」
そんなことを言う奴ほど、冒険者のクエストじゃ危ういんだが……大丈夫か?
俺らの命運が決まる大事なゲームだってのに、しっかりしてくれよ。
ともかく、ステラとアンダースンは間近で向かい合ってゲーム開始。
「なんか照れちゃいますね。こうして近くで見ると、アンダースン様ってすごく美人なんスね」
「そ、そうか。ありがとう……はぁはぁはぁはぁ」
なんだなんだ。頬を赤らめて、モジモジして、瞳潤ませて。
息もメッチャ荒くて挙動不審者だ。
相手は今さっきまで小娘扱いしてたステラだぞ?
それを相手に、イケメン野郎に口説かれてる小娘みたいになるなんて正気か!?
「じゃ、やりますね。アンダースン様、愛してます」
「ううっ!」
「アンダースン様、すごく可愛いッス」
「あううっ! ノエルって……呼んで……」
なァにいいいいッ!! 二言で陥落だと!?
あのアンダースンが? そんなバカなァ!!!
「ふーむ、あのノエルがこうもなるとはな。このスキル、大いに期待できるな。ならば支度を整え、策を立て、疾く出発せよ」
ギャーーッ!!
諦めさせるどころか、期待させちまったぁーー!!
「冒険者ステラよ。見事賊を調伏し、勇者の称号をつかみとるがよい」
「勇者の称号! やります領主様! このステラが、ぜったいぜったい、やってみせるッスよォ!」
あああ……これというのも、アンダースンが不甲斐ないチョロインなばかりに。
ヤツのせいで行くハメになった顛末。
こうなったサマをどんな顔で受け止めているかと見てみると――
「おいおい、死にに行くのも眼中になしか。いったいアンタにはステラがどう見えているんだ」
大はしゃぎしているステラの背中。それをアンダースンは熱いまなざしでジッと見続けていた。その顔は女らしく、すごく嬉しそうだ。
【男装スキル】というのは、意外に強力なスキルなのかもな。
あの激強な女どもが大魔族の封印を解くのを止めにゃ、人類は滅ぶらしいし。
武力で対抗できないとなれば、このスキルに乗るしかないのかもしれん。
しかたねぇ。妹のスケコマシに人類の命運賭けてやろうじゃねぇか!




