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02話 男装スキル勇者に命じる

 領主館正門にて『領主様召喚により参った』と衛兵に告げると、一人の年若い銀髪の女騎士が出迎えに来た。

 伯爵家騎士団団長補佐の【ノエル・アンダースン】だ。


 「来たかルバル。その娘が妹か?」


 「ははっ、コイツが俺の妹のステラっす。アンダースンさま。領主さまのお召しにより来ましたッス。どうぞお取りなしよろしくッス」


 「まったく、相変わらずムチャクチャな敬語だな。まぁいい。ヤゴーエフ閣下も、お前に正しい言葉づかいなど求めてはおらぬだろう。何より今は拙速が求められるゆえ、言葉づかいに修正を入れるのはやめておく」


 「ははっ、ありがとうござんす」


 「次の策が決まった時、その現場指揮を執るのはおそらく私だ。ゆえにお前には期待する。来い。間を置かず、すぐに謁見だ」


 「あ、その前に。アンダースンさまは、領主様が俺……いえ、わたくしめの妹ステラまでお召しになられた理由をご存知でしょうか?」


 「まったくに知らん。昨日の報告だけなら、貴様の妹など不要なはずなのにな。まぁ、その理由もお聞かせくださるだろう。娘。なにを命じられるかは知らんが、閣下の(めい)はつつしんで受けるのだぞ」


 「はいっ、もちろんッス! もし『若様をお救いに行け』とお命じなられたなら、命かけて!」


 「お命じなられるわけなかろう。おそらく下職の手伝いでもあるのだろう。さ、無駄話はここまでだ。ついて来い」


 『下職の手伝い』ね。たしかにステラに用なら、そのあたりだろうが。

 しかしその程度の人事の手配、伯爵閣下がする事かね。

 まぁ考えてもしかたない。領主様の命令は絶対。何を言われてもやるしかない。

 ハラくくってご対面願おうか。



 さて、一通りの手順を踏むと、俺とステラは謁見室に通された。

 そこで御対面したのは、我らが領主様ヤゴーエフ伯爵閣下。

 御老体にもかかわらずスルドイ目つきと貫禄の塊、その中にクセ者っぽい雰囲気をもったお方だ。しかしこんな年になって跡取り息子がさらわれたのだから、気が気じゃないだろう。


 「ふむ、ルバルよ。やはり賊はたった三人の女どもで間違いはないのだな? 早馬で報告を聞いたときには信じられなかったが」


 「はっ。集めた討伐軍の皆々は、ギルドでも最高の腕を持った冒険者でしたッス。それがこうも無残な結果になるとは思いませんでしたッス」


 「そして賊どもは今も【アクロライア聖碑】に立てこもったままか。マズイな」


 「はい。囚われた若様のご安否が心配ッス」


 「たしかにそれもあるが、な。さらに心配せねばならんのが、その場所なのだ」


 「はぁ? そのアク……ナントカが、なにか問題でも? 禁足地ってことに関係が?」


 「アクロライア聖碑じゃ。そこには大いなる厄災、いにしえの大魔族が封印されておるのだ。賊がそのような場所に立てこもっているということは、目的はそれの解放の可能性が高い」


 「いにしえの大魔族ですか。それが解放されるとマズイことになるんで?」


 「うむ。人間世界はそれに滅ぼされると思われる」


 「なんですって!?」


 なるほど。討伐軍編成が迅速だったのも、最高戦力を惜しげもなく投入したのも道理だ。そんな激ヤバな事件が隠されていたとは。


 「マズイですね。早いとこ、どうにかしないと」


 しかし、わが領の最高戦力をぶつけても、どうにもならなかったんだ。

 となれば、国王陛下に頼んでより強力な戦力を融通してもらうしかないのか?

 しかし時間が………


 「ゆえに、わが家に秘されたもう一枚の手札を切る。娘、名は何という」


 はぁ? ここでコイツの出番?

 このザコ小娘が、こんな非常事態に何の役に立つんだよ。


 「は、はい! アタシッスか? ステラと申しますッス!」


 「ステラよ。そなたに、我が家の保存する【男装スキル】を与える。それをもってアクロライア聖碑に立てこもる賊を調伏してまいれ」


 なにィィィィィィィィィ!!!!!!!?

 声を出さずに絶叫した俺を褒めてくれ。


 本当にステラに勇者の真似事をさせるだと!?

 しかも何だ、【男装スキル】って!

 そんなもん無くても、ステラは毎日男みてぇなナリで勇者ゴッコしているぞ!


 「か、閣下! ご質問の許可をいただきたく存じます!」


 アンダースンがあわくって質問だ。

 無理もない。

 こんなワケわからん策の現場指揮をとらにゃならんのなら、そうなるわな。


 「許す。何を聞きたいかは予想できるがな」


 「だ、男装スキルとは何でしょう? 私は聞いたことがありませんが」


 「『男装』とは、女が男の恰好をすることだ。そのスキルである」


 バカにしてんのか、このジジィ。初めてこのお方をそう思った。


 「い、いえ、ですから! 何故そんなスキルを保存などしているのです? 女が男の恰好をするだけのスキルで、どうやって恐るべき賊を調伏せよと?」


 【スキル】とは、長年ある技能を磨き続けたり修行したりなどをしていると発現する特殊な能力のことだ。

 たとえば俺なんかは、小さい頃から剣の修行や仕事をしてきたおかげで【剣閃】【スラッシュハンド】【強撃】なんかが発現した。


 さて、本来はそういった技能の積み重ねがなければスキルは発現しないわけだが、例外的に高度な魔術によるしかけで、他人が獲得したスキルを自分のものにする方法が存在する。

 それが【スキル保存】と【スキル継承】だ。


 なんらかの魔術的触媒にスキルを保存しておき、高位の魔術師が儀式によって獲得したい者にそれを与えることが出来るらしい。高位魔術らしいので概要しか知らんが。


 ただしスキルの保存や継承には高位魔術士が必要なことと、かなりの魔力量が必要らしいので、そうとう貴重なスキルでなければ保存は行われない……はずなのだが。


 なんで『男装』なんかにスキルが存在する!?


 なんでそんなものを、わざわざ保存なんかしている!!?


 それをステラに継承させて、どうやってあの恐るべき賊を退治せよと!!!?


 アンダースン。俺とお前は、きっと今同じ気持ちだろうよ。


 「騎士団団長補佐ノエルよ。そなたの疑問に答えよう。このスキルを得た女は、異常に女人に好かれるようになるのだ」


 は?


 「そこでそれを利用し、聖碑に立てこもる女賊どもをスケコマし、翻意をうながすのだ。さすればわが息子も安全に奪還できよう。ステラよ。この老体の頼み、聞いてはくれぬか」


 こんな事をウチの領主様に思いたくはないんですが…………


 ナニ言ってるんだ、このボケジジイ! 

 真面目な場で痴呆発症してンじゃねェ!!!





 ここまで書いて投稿しました。

 次回でプロローグを終えて、賊討伐に行きたいな。

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