01話 冒険者の兄妹ルバルとステラ
『TSラスボス少女』を終えてしばらく書くのを休もうかと思ったけど、なんか思いついたので書きました。異世界転移とか転生とかナシの正統派ファンタジーです。
ざっくり何が書きたいかというと、妹が百合ハーレム作った兄の苦悩をギャグで書いてみようかと。
どうか応援よろしくお願いします。
ここはオードヴィア王国ホロラドル伯爵領。
王国の中でもそこそこ大きく、それなりに歴史もあり、先代伯爵は真竜退治に成功したという輝かしい業績をもった領だ。
その中心地である伯爵館。広大な敷地をすっぽり囲む高い塀。そこから見える館は荘厳で巨大。
そんな場違いの場所の手前に俺と妹ステラはいる。
「うっわー! すっごい! 大きい! やっぱり領主様のお館はすごいね、兄ちゃん!」
はぁ。年頃だってのに、男のガキみてぇな恰好して毎日はしゃぎまわりやがって。嫁さんスキルのひとつも覚えねぇで、どっから相手見つけりゃいいんだよ。
「はしゃぐなステラ。中に入ったら、その脳天気は引っ込めておとなしくしてろよ。中には恐い姉ちゃんが居て、そいつに怒られるからな」
「え? 中でパーティーじゃないの? 昨日やった賊討伐の戦勝パーティーの」
「負けた。見事なまでにな。パーティーどころじゃねぇよ」
「ええ!? 兄ちゃんも行ったんでしょ? なのに?」
「ああ。俺は自分が思っているほど強くはなかったらしい」
俺の名前はルバル。伯爵領ギルド所属の冒険者だ。
冒険者といっても上から下まであるが、その中でモンスター退治や盗賊退治、危険地帯の遠出なんかを引き受ける上の方。ランクは白銀。
そしてステラの言う賊討伐戦。
その事件の発端は、伯爵領のとある禁足地に数名の賊が侵入したというものだ。
そこの警備兵からの報告では、賊はおそろしく強く、最高レベルの戦力出動を要請されたとか。
事態を重く見た領主様は、剣聖スキルを継承した息子を筆頭に、腕利き従士数名を小隊長とし、冒険者の武闘派連中を集めて討伐隊を編成。その中に俺もいた。
これは、ちょっとした領をあげての軍事行動。他国の軍にも、災害級の巨大モンスターにも戦える戦力。たかが賊数名の討伐など問題ない……はずだった。
だが結果は大惨敗。討伐隊の大半は死傷者となって撤退した。
「えーと……あっそうだ! 若様が討伐隊の総大将だったんでしょ? たしか【剣聖スキル】って、すごいスキルを持っている」
若様とは、この伯爵領の跡取り息子。次期領主様だ。
「ああ。たしか先代の領主が、そのスキルで真竜討伐を成し遂げたって逸話があるな。若様はそのスキルを継承している……はずだったんだがな」
「ええっと、聞きにくいんだけど、その若様はどうなったの?」
「若様も負けた。しかもその賊のうちの、たった一人にな。殺されてはいないが、人質に取られた」
「えええええーーッ!!!?」
たしかに「えええー!?」な事態だ。
一対一で負けるなんて、【剣聖スキル】ってな何だったんだ。
仮にも伯爵家の誇る【剣聖スキル】が、凶悪モンスターでもない、軍隊でもない、賊の一人に敗れたなんて、伯爵家の矜持は地の底まで失墜だ。
「ってことで、領主様に昨日の敗戦報告だ。ステラ、お前は何もしゃべらず大人しくしてろよ」
「んじゃ、なんでアタシをここに連れてきたんだよ。ぜんっぜん関係ないじゃん」
「知らん。領主様の召喚状にお前の名前まであったんだよ。ったく善後策を考えにゃならんのに、何でこんなうるせぇ妹を」
「ハッ! もしかしてアタシに特命が? 若様奪還の秘策を命じられるとか?」
「あるか。お前のランクはプロンズの下。ゴールドやシルバーで編成された討伐隊が全滅喰らったんだぞ。ものの役に立つかよ」
「ううう、夢を見たいんだよう。領主様に大役を任されて活躍して勇者になるっていう」
「夢見てんじゃねぇ。たわ言は終わりにして行くぞ。俺たちの領の危機だ」
はぁ。そんな夢見てやがったのか。どうりで、ちっとも女らしくならないはずだぜ。
そんな場合じゃないのは分かっているが、コイツの将来をどうしても心配しちまう。親の役背負った兄はつらいぜ。
だがしかし――
恐ろしいことに、妹の白昼夢でのたまった戯言は、すべて現実になってしまうのであった。
領主様は、なにをトチ狂ってしまったんだろうな?




