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G08「ガイドがいる」R12

ベルギーチョコの甘さとカカオの香りが、沁みる……。

ちょうど休憩時間になったので、愛乃先輩の"お菓子セレクション"を楽しむ。


先輩も同じチョコを手にとった。


「これ、千登世ちゃんは好きでしょ〜。」


「す、好きですよ。」


恥ずかしい思い出を掘り起こさないでください、先輩。


「ちとにゃん、試合は覚えてるっすか?」


あー、"ちとにゃん"にされちゃった。

まあ、いっか。


「うん。ケニア、イスラエル、マルタ、アルバニア……。」


試合の記憶は鮮明だった。

使ったメタも全部思い出せる。

でも、数分しかプレイしてないような、何時間もやっていたような。

手の平を開いて閉じて感覚を確かめるけど、特におかしな感じはない。


梨沙子先生がチャットを見ながら言った。


「千登世ちゃん、話題をかっさらってるわね、ほら。」


けっこうな速さで書き込みが流れてた。


『ちとにゃん、マジかわえー』


『えげつねー速さでゲスしてたな。ホントに初心者か?』


『言語メタ、強くね?』


ホントだ、なんか言いたい放題言われてる。


「そ、そんなに可愛くなんて無いもん。」


ぎゅっと握った太ももの上の拳を見つめる。


愛乃先輩がほわっと抱きしめてくれる。


「千登世ちゃん、キュートだしジオゲも強いわよ〜」


「真宵はー?」


先輩はまよちゃんもまとめて抱きしめてくれた。


「2人とも、最高の後輩なのよ〜」


先生は湯気が上がるティーカップを置いた。


「千登世ちゃんはもっと自信持つと良いかな。真宵ちゃんは今のまま、まーっすぐがイイんじゃない?」


なんか、オトナの余裕だなー。


パソコンを眺めていた愛乃先輩が、画面を指して言った。


「あら〜、真宵ちゃんの相手だった"Swifter"さん、"Magika"さんに負けたわよ〜」


つまり、"Magika"さんが決勝に進出、そして……。


「ちとにゃんが"Gwalker"さんに勝ったら、"Swifter"さんと対戦っすね。」


2戦連続で、まよちゃんの仇討ちに挑戦することになってしまった。


そろそろ次の試合かなと思ったところで、突然、部室のドアがスーッと開いた。


「ま、間に合ったか?」


スマホを持って、肩で息をしている瑞希先輩がそこにいた。

黒い前髪が額に少し張り付いてて、急いで来てくれたことが一目で分かった。


「先輩!」


「勉強しながら音だけ聴いてたんだ。真宵さん、間に合わなくてごめんな。」


「真宵、来てくれただけでマジ嬉しいっすよー」


まよちゃん、瑞希先輩にぴゃーって抱きついちゃった。


梨沙子先生はハンカチを取り出し先輩に渡す。


「汗かいてるじゃない。拭きなさいよ。」


「聴くだけでガマンしてたんですけど、いてもたってもいられなくて。課題やっつけて来ました。」


「さすが瑞希ちゃんよね〜、いざという時、頼りになるのよ〜」


まよちゃんの髪をなでなでしてる瑞希先輩。


「千登世さん、頑張ってるところを見に来たよ。」


「ありがとうございます! 私もめちゃくちゃ嬉しいです!」


「ちとにゃん、始まるっすよ、準備しないと。」


慌てて席に着いて、カメラをオンにする。


瑞希先輩が来て、みんなと一緒に試合ができるなんて。

これでチカラが湧かないわけがない!


熱が駆け上がっていく。

でも、ただ熱くなるだけじゃない。

氷みたいに澄んだ意識が、その炎の芯に宿っている。


握った指先がカタカタと小さく震える。

けれど、そのリズムはもう怖さじゃない。

耳の奥で鳴る鼓動と、ジオゲのカウントダウンが重なって――。


「……よし、イクにゃ!」

一旦、ここまでで休載します。再開は2026年1月予定です。

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