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G07「ナンバープレートが赤い」R07

からんからん。


早速1組目のお客さん、あ、常連の石川さんっす。


「「いらっしゃいませ。」」


ん。ちゃんとちとちゃんも挨拶できてる。

ちょっと笑顔がぎこちないっすけど。


「本日は1名様でいらっしゃいますね?」


「やだよー、真宵ちゃん、そんなかしこまって。」


「今日からバイトの佐倉さんが入ったから、研修中なんですよー。」


「おや。ホントだ。またずいぶんと美人さんを探して来たねー。」


「あ、ありがとうございます……。」


ちとちゃん、真面目に受け取らなくていいっすよ?

いや、ホントに美少女っすけど。


「いいんですよ〜、石川さん。もっと来てくださって。」


ここで真宵スマイルっす!


「真宵ちゃんに言われたら、かなわないな。」


苦笑してるけど、刺さってるっす!


「あれ? 制服変えたのかい?」


「はい! 可愛いでしょ?」


ここで真宵ターン!

スカートがふわって膨らむっす。

あ、これはちとちゃんにはムリっすね。


「イイねぇ。来る回数増やさないとね。」


「ありがとうございます、絶対ですよ? いつものお席でよろしいですか?」


「うん、そうだね。」


「1番テーブルにご案内しますね。」


「ありがとう。しかし2人も美人さんがいると、なんだかうれしくなっちゃうね。」


「そんなにほめても何も出ませんよ?」


「真宵ちゃんも客あしらいがうまくなったねぇ。」


石川さんは小さい頃から真宵を知ってるっす。

お客さんだけど、親戚のおじさんみたいな感じっす。


「どうぞお掛けくださいませ。」


「ありがとう、真宵ちゃん。」


「すぐにお水をお持ちしますね。」


ちとちゃんと一緒にカウンターに戻るっす。


「話を聞いてて分かったと思うけど、石川さんは常連さん。でも、態度を崩しすぎないように注意してください。」


「はい! すごかったです!」


真宵への尊敬の眼差し、気持ち良いっす!


「グラスをお持ちするのをやってみましょう。」


「分かりました。」


「ミネラルウォーターをグラスに8分目まで入れて、トレーに載せます。」


「は、はい!」


ちとちゃん、ちょっと緊張してるっすね。

手が少し震えて、グラスがトレーの上でカタカタ鳴ってるっす。


「落ち着いてやれば大丈夫です。ではテーブルに行きましょう。」


ちとちゃんの足取りが、心なしかスムーズじゃないっす。

もっとスーッと滑らかに歩くのが、普段のちとちゃんっす。

1番テーブルに行くと、いつものように石川さんはメニューを開いてないっす。

前菜2品と、石川さんがお気に入りのキノコとチーズのリゾット、白ワインかな?と考えてたっす。


「お、お水をお持ちしました。」


ちとちゃんがグラスを置こうとした瞬間っす。


「きゃ!」


グラスが運悪く倒れちゃったっす。


「ご、ごめんなさ……」


ちとちゃんが言いかけたところを遮って対応するっす。


「大変申し訳ございません。お手元にはかかっておりませんでしたか?」


「おー、真宵ちゃん、だいじょぶだいじょぶ。」

ん。石川さんは温厚な人だから、怒ってる表情ではないっすね。

クロスでテーブルを拭きつつ、指示を出すっす。


「佐倉さん、ポケットから紙おしぼりを出して、お客様にお渡しして。」


「あ、はい!」


ちとちゃん、少し青ざめてるっす。

初めての失敗っすもんね。


でも、そんなに慌てなくて良いっすよ。


「す、すいません、こちらお使いください。」


よし! 正解っすよ、ちとちゃん。


「ただいま、すぐに新しいお水とクロスをご用意いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」


一度カウンターに戻って、ちとちゃんを勇気づけるっす。

ふー。

ちょっと息を吸って、落ち着くっす。


真宵が焦ったら、もっとちとちゃんが緊張するっす。


「だいじょうぶ、ちとちゃんは絶対出来るっす。今から言うの、覚えるっす。」


「お待たせいたしました。新しいお水をお持ちしました。お手元、お洋服などに問題はございませんか?」


「できるっすよね?」


「はい!」


「石川さん、怒ってないっすよ。」


「ほ、ほんとですか?」


親指と人差し指で丸を作って見せるっす。


「問題が無さそうなら、石川さんの目を見て『ご迷惑をおかけしました。』って言ってから、お辞儀っす。」


「分かりました!」


ちとちゃんは1番テーブルに行って、完璧にこなして戻ってきたっす。


「あ、あの、お客様が真宵さんを呼んでます……。」


ちとちゃんが少し震えてるっす。


「分かりました。ちょっと行ってきますね。大丈夫ですよ。安心して。」


1番テーブルに行くと、石川さんはニコニコしてたっす。


「真宵ちゃん、見る目あるねぇ。佐倉さん、ありゃ、可愛いし使えるよ。」


「ありがとうございます! どうしてそう思われましたか?」


石川さんは顎の下に手を当てながら言ったっす。


「あれは訓練じゃないね。根っから誠実なんだよ、あの子。応援したくなっちゃうもの。真宵ちゃんと2枚看板でイケるよ。」


「え? 真宵、いつから看板娘だったすか?」


「アハハハ、真宵ちゃんにはかなわねーや。」


カウンターに戻ってきたら、ちとちゃんが不安そうな顔で前のめりに聞いてきたっす。


「あ、あのクレームとか……。」


「べた褒めっす。」


「はい?」


「ちとちゃん、おじさんキラーっすよ!」


「え、えー? 意味が分からないよー。」


「誰でも失敗はするんすよ。大事なのはリカバリーっす。」


「大事なのはリカバリー……。」


「誠実に、迅速に、お客さんを第一にっす。ママの受け売りっすけどね。」


ピースしたら、なんか自然と笑顔になってたっす。


「はい!」


ちとちゃんも、いつもの美少女に戻ったっす!

最初の一歩を踏み出したっすね、ちとちゃん。


ちとちゃんに説明したことで、真宵も自信がちょっと増したっす。

伝えることは、自分の中をもう一度通すことなんすね。

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