G07「ナンバープレートが赤い」R06
人見知りじゃなくても、初日から接客するのは難しいっすよね?
うちは昼と夜の営業だから、放課後は夜の開店準備から。
昼より作業は少ないけど、それでも一通り、掃除からやるっす。
飲食はクリンリネス、お店がキレイなこと、は必須条件。
「真宵さん、テーブル拭き終わりました!」
ちとちゃんは何やらせても優秀っすね。ちゃんと呼び方も変えてるっす。
「お疲れ様です。次は備品の確認と補充です。」
棚の扉をいくつか開けるっす。
「まずグラスはこの棚、コーヒーと紅茶のカップ、ソーサーはこっち。それから……。」
1つ1つ頷きながら頭に入れるちとちゃんの表情は、とても真面目っす。
「……はい、じゃあ次はカトラリーとナプキンの場所だけど……」
備品の場所は、真っ先に覚える必要があるっす。
「テーブルセッティングをしますね。ポケットから白手袋を出して手に着けてください。」
そんなに慌てて手袋を出さなくても、だいじょぶっすよ。
「もし汚れていたら引き出しに入ってるんで、すぐ交換してください。」
引き出しを開けて箱を見せるっす。
「はい!」
「次にカトラリーセットとショープレート、ナプキンをトレーに載せます。」
「結構、重いですね。」
ちとちゃん、載せすぎ。
「基本的に4人席なので、8セットを1回に運べば大丈夫ですよ。」
「あ、そうですね、確かに。」
テーブルに移動しながら説明。
「ホールに余裕がある時に、カトラリーセットを作ったり、ナプキンを折ったりします。後でそれも教えます。」
「お願いします。」
「まずプレートを置いて、その上にナプキンを載せます。」
実際にやりながら見てもらうっす。
「プレートの左はフォークで、外に小さい前菜用、内に大きいメイン用です。」
「これで良いですか?」
ちとちゃんは、少し不安そうに真宵の目を見るっす。
「そうですね、もう少し手前で。プレートの中心を見てください。」
「あ、そこに合わせると綺麗ですね。」
納得してくれたっす。
「右はナイフで、内にメイン、外が前菜です。刃先はプレート側に向けてください。」
「こう、ですか?」
「はい。最後に、前菜用ナイフの外にスープスプーンを置いて、完成です。」
「確かにレストランのテーブルはこうなってますね……。」
テーブルマナーを思い出せば、カトラリーは分かるはずっす。
「2番テーブルを1人でセッティングしてください。」
「やってみます。」
ちとちゃん、猛烈に物覚えが良いし動作が速いっすね。
剣道で鍛えられたっすかね?
パパッと置いていくっす。
「よくできました。」
ちとちゃんが、ふーっと息を吐いたっす。
「ありがとうございます!」
準備してたら、窓からの日差しが作る影が伸びたっす。そろそろ夜の営業開始っす。
「接客全般を担当するのはシフトに何回か入ってからです。まず挨拶は必ずしてください。」
「はい!」
「私をよく見ていてくれれば良いので、今日は一緒に動きましょう。」
「よろしくお願いします!」




