G07「ナンバープレートが赤い」R03
真宵、ちとちゃんがどんなに美味しそうに食べてくれるか、想像つくんすよ。
もっと正確に言うとっすね、絵に描けるっす。
スマホで写真撮るのと一緒なんす、真宵にとっては。
ベルギーチョコを食べた時の感覚を解放したちとちゃん、名画みたいだったす。
なんていうか、キュートで、色っぽくて、素直なところとか、全部出たっす。
あ、キッチンから1品目っす。
「お待たせいたしました。前菜の盛り合わせでございます。イタリア産の生ハムとモッツァレラチーズに、季節のフルーツを添えております。どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ。」
会釈して一旦下がるっす。
あー、ちとちゃん、そんなに目をキラキラして。
生ハムからいったっすね。
モッツァレラもフレッシュなやつだから美味しいはずっすよ。
そうっす、フルーツと合わせるの、正解っすよ!
「お待たせいたしました。こちら、2品目のスープ、ポルチーニ茸のコンソメ仕立てでございます。器が熱くなっておりますので、お気をつけくださいませ。香りもぜひお楽しみくださいませ。」
あれ?
ひょっとしてポルチーニは初めてっすか?
キノコっすよ、トリュフもそうっすけど。
ちとちゃんは性格が素直なんすよね。
言われた通り、目を瞑って香りをめっちゃ楽しんでるっす。
口に入れると……、そうっす!
大きく開きすぎて、おめめがこぼれ落ちそうっすよ。
3品目はコツがあるっすよ。ゆーっくり、皿を置くっす。
香りが立つタイミングで……。
「お待たせいたしました。3品目は、トリュフの香りを添えたカルボナーラ・ビアンカでございます。濃厚なソースと芳醇な香りを、ぜひ温かいうちにお楽しみくださいませ。」
ほら、トリュフの香りに気付いたっす。
また、おめめがこぼれ落ちそうっす。
ビアンカなんで、チーズと卵黄に生クリームも入ってるっす。
うーん、ちとちゃんは間違いなく好きっすよね、この味。
ほら、口に入れた瞬間、『ん〜!』って小さく声が漏れちゃってるっすよ。
あ、フォークで刺してるそれ、ベーコンじゃないっす。
ちょっと違うから不思議っすよね。グアンチャーレ、後で教えてあげるっす。
さて、メイン1品目っす。
「お待たせいたしました。メインの1品目、真鯛の香草パン粉焼きでございます。白ワインとトマトで仕上げたアクアパッツァ風のソースとともに、香ばしい風味をお楽しみくださいませ。お皿が少し熱くなっておりますので、お気をつけくださいませ。」
これも確実に香りから楽しめるっす。
香草、パン粉の香ばしさ、白ワインが混じる複雑な香りっす。
そうっすよね、目を閉じちゃうっすよね。
外はカリッ、中の身はふわっと、あ、ビックリする食感なんすよ。
ちとちゃん、楽しみながら食べてるのに速いっすね。
それでいて、キレイに食べるっす。
キッチンからメイン2品目っす。
クライマックス!
「続きまして、メインの2品目でございます。こちらは、国産牛フィレ肉のタリアータを、香り高いバルサミコソースで仕上げております。お肉の旨みとソースのコクの余韻を、どうぞゆっくりご堪能くださいませ。」
バルサミコの香りがさっぱりした味につながるっす。
赤身だから噛むたびに味が出てくるんすよ。
ちょっとソースを多めに絡めるとまた味が変わって飽きない。
そうっす、正解っす、なんでそんなに食べるの上手いっすか?
「デザートは2品ご用意しております。こちらが、自家製のティラミス。そしてもう1品が、季節のフルーツを使ったタルトでございます。味わいの違いをお楽しみくださいませ。カプチーノもすぐお持ちします。」
ちとちゃんの目はまるで星が浮かんでるみたいっす。
「わ……」
声出ちゃって、両手でほっぺを支えちゃったっす。
目をぱちくりさせて、口元が緩んだっすよ。
「ごゆっくり、お楽しみくださいませ。」
カウンターに戻って、真宵もちとちゃんの反応を堪能するっす。
ティラミスの後にカプチーノで、ほってなってるっすね。
マスカルポーネの滑らかな舌触りにエスプレッソの苦みが、カプチーノで溶けるんすよ。
で、タルトでもう1回、ほっ。
イチゴの赤、キウイの緑、デコポンのオレンジで目も楽しませるっす。
ちとちゃん、愛乃先輩のベルギーチョコより、もっとトロけた顔してるっす!
見てるこっちが幸せになる笑顔っす。
良かったー、真宵も気合い入れて準備した甲斐があるってもんす。
こんな顔してくれるなら、真宵、毎日でも料理を出したくなるっすよ!




