G07「ナンバープレートが赤い」R01
今日は特別なお客さんがうちに来るっす!
ちとちゃんっすよ。
だから真宵、めっちゃ気合い入れて準備してるっす。
小学生の頃から手伝ってるから、いろんなお客さんを見てる。
常連さんはもちろん、バエるデザート撮ってる大学生とか、別れ話してる高校生とかとか。
でも、ちとちゃんはマジ特別!
だって真宵、こんなに楽しみなの初めてっす。
フィールドワークが終わって、駅のロータリーで先生と別れた後。
ちとちゃんが泣きながらバイトしたいって言ったのは、エモ過ぎ。
実は真宵、小さい頃は人前で話すの苦手だったっす。
だからちとちゃんの気持ち、めっちゃわかるんすよ。
ちとちゃんはポンコツ美少女だから、やっぱり真宵がサポートしないとダメっすね。
朝10時の開店なんで、9時からオープニング業務。
掃除して、備品チェックと補充して、カトラリー置いて、メニューの汚れをキレイにするっす。
最初は、何でこんなことやらないといけないのかな?って思ってたっす。
しばらくしたら常連さんが顔覚えてくれて、ほめてくれるようになるんすよ。
「いつも、真宵ちゃんはエライねぇ、おうちのお手伝いをして。」
「真宵ちゃんはいつも元気だね。良い看板娘だな。」
真宵、それが嬉しくて、お客さんたちと少しずつ話すようになったっす。
最初は簡単なことから。
「いつもありがとうございます!」
「お気を付けてお帰りください!」
みたいな。
そのうち、
「ご注文はお決まりですか?」
「お帰りの際に伝票をレジまでお持ちください。」
になったっす。
中学生になってからはパパたちと相談して。
もっと色々やりたいって。
お気に入りを覚えて、メニューをオススメするとか、お客さんと会話するのが楽しくなったっす。
「エスカルゴをご用意していますが、いかがされますか?」
「今日は白身魚がシェフのオススメです! ポワレでも美味しいですが、新鮮なのでカルパッチョが美味しいと思いますよ?」
そうすると、食べ終わった後に、お客さんが感想を言ってくれるんす。
「真宵ちゃんの言った通り、今日のカルパッチョは最高だったよ!」
おっとぉ、そろそろ開店っすね。
土曜だけど雨降ってるから、入りは6割ぐらいじゃないっすかね。
大社さんに近いから、夏祭りとか11月の七五三、それに桜の時期が忙しくて。その次が節分っすね。
正月は暇なんすよ、人出はあるけど、あまり外で食べないんすよね、みんな。
あれ?
予想より早く最初のお客さんっす。
最初は、まるで雑誌から抜け出てきたみたいなオシャレな女子大生2人組っすね。
「いらっしゃいませ。お足元の悪い中、ご来店いただきありがとうございます。本日は何名様でいらっしゃいますか?」
パパがいつも言うんすよ、来店いただいたことにまず感謝しなさいって。だから、しっかりお辞儀するっすよ。
「うわっ、何この、ちっちゃい店員さん! か、かわいー。」
「おほめいただき、ありがとうございます! 小さいですが、サービスは満足いただけると思いますよ?」
「す、すごくない? に、2名です。」
「2名様ですね。席にご案内いたします。傘はそちらの傘立てをご利用くださいませ。」
入り口から一番離れた窓際の席に案内するっす。
椅子を2つ引いてっと。
「どうぞお掛けくださいませ。」
「何ここ? 高級レストランだっけ?」
「いえ、お客様。当店は味には自信がございますが、決して高級ではございません。ごゆっくり、おくつろぎくださいませ。」
エプロンを整えてから少ししゃがんで、カゴを指さすっす。
「お手荷物をお入れいただくカゴをご用意しております。よろしければ、どうぞお使いくださいませ。」
「「きゃー、可愛い!」」
「こちらがメニューでございます。ご注文がお決まりになりましたら、お手数ですがお呼びくださいませ。ごゆっくりお選びください。失礼いたします。」
見たっすか?
真宵、ホールの天才っす。
ほら、お客さん、チラチラこっちを見てるっす。
これで真宵推しっすよ!




