第四話 挑発の王子
ゴブリンメイジキングの死骸は、黒い煙を上げて消えた。
あの瞬間、自分でも信じられなかった。
――見ただけで、魔法を再現できた。
俺の力は、やはり普通じゃない。
だが、これでようやくスタート地点に立てた気がした。
泣き声が聞こえた側から攫われた子供たちを救出し、ゴブリンの素材を持って村長の家へ向かう。
「なんと! ゴブリン討伐と子供たちまで助けてくださった! 今日は歓迎会です! 村のご馳走を食べて飲んでください!」
村長のご厚意に甘え、腹いっぱいご馳走になった。
村の宿まで世話になり、柔らかい布団に沈みながら、ひさしぶりに安らかな眠りについた。
翌朝、俺は村を出た。
扉を開けた瞬間、ざわめきが起きた。
「おい、あれがゴブリンメイジキングを倒したGランクだってよ」
「マジかよ、あんな若造が?」
視線が一斉に俺へ突き刺さる。
称賛と嫉妬。両方の熱が混ざり合った空気。
受付嬢のリアが駆け寄ってくる。
「シオンさんっ! 本当にゴブリンメイジキングを討伐したんですか!? すごいです! すごすぎます!」
興奮気味なリアに、周囲もざわつく。
そのとき、カウンターの奥から初登場のAランク魔術士――バルドルが現れた。
「やるじゃねぇか。Gランクでメイジキング討伐とはな。なぁリアちゃん、確かあれはBランク以上しか受けられねぇクエストだったよな?」
「その通りです。でも、シオンさんはそれを……!」
リアが誇らしげに頷く。
「これは将来有望な若手が入ったな。先輩の俺もうかうかしてらんねぇ」
バルドルは豪快に笑って頭を掻いた。
「自分でも、勝てたのは奇跡です」
そう謙遜したとき――ギルドの空気が、一瞬で張り詰めた。
「平民、調子に乗るのはSランクに到達してからにしろ」
金色の短髪、目鼻立ちの整った王子というあだ名が相応しい男。
腰に剣、胸当てから剣士に見えるが、魔法ギルドにいるならこの男も魔術士だ。
周りに取り巻きの魔術士たち5人を引き連れてる。
取り巻きの一人が王子の挑発を宥める。
「ランス殿下。挑発をおやめください。メイジキングを倒したのは事実です」
取り巻きの一人が、やや焦った声で言う。
だが殿下は鼻で笑った。
「ふん、倒したと言っても運だろう?平民が調子に乗るのは――」
ランスはゆっくりとこちらへ歩み寄る。
金の髪が光を反射し、周囲の冒険者たちが息をのむ。
「私と闘って一撃でも通せたら認めてやる。……もっとも、そんな奇跡が起こるとは思えないがな」
ギルドの空気が凍りつく。
リアが慌ててシオンの腕を引く。
「シオンさん、挑発に乗らないでください!」
けれど俺は、知らず拳を握っていた。
心の奥で、何かが燃え上がっていた。




