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第三話 眠れる力 ー ゴブリンメイジキングとの闘い



ゴブリンメイジの死体が、地に転がっている。

まだ煙を上げる焼け焦げた匂いが鼻を突いた。


「やった……勝てた……のか……」


全身が震えていた。

火傷の痛みも、汗の塩辛さも、全部が生きてる証拠だった。

ほんの数分前まで、死がすぐそこにあったのに。

それでも俺は、生きている——。


けれど、体の奥——胸の中心だけが、妙に熱い。

まるで、何かが“動き出した”みたいに。


……その時、森が静まり返った。


風の音も、虫の声も止まる。

世界が息を潜めた。


「……嫌な感じだな」


茂みが揺れ、三体のゴブリンが飛び出してきた。

棍棒を振り上げる腕をかわし、剣で一閃。

二体目の喉を突き、三体目を蹴り飛ばす。

前なら震えて動けなかったのに——今は、体が勝手に動いた。

火の玉が掌で弾け、残りを焼き払う。


「……やれる。俺でも……!」


そう呟いた瞬間、死体がずるりと動いた。

闇の奥から、巨大な影が姿を現す。


黒いローブ。長い杖。額には歪んだ角。

ゴブリンメイジを巨大にしたような存在——いや、それ以上。


「ゴブリン……メイジキング……!」


唸るような声。

そして、奴は倒れたメイジの死体を掴み、手のひらを押し当てた。


「グルルル……吸ウ……」


青白い煙が立ち昇り、空気が震えた。

魔力が、音を立てて吸い上げられていく。

ゴブリンの体がみるみる干からび、灰となって崩れた。


「まさか……魔力を吸収してるのか!?」


恐怖が背筋を走る。

同時に、胸の熱が強くなった。

何かが、俺の中で“共鳴”している。


「貴様……見タナ……我ノ魔法ヲ……」


キングの瞳が赤く光った。

次の瞬間、炎の塊が放たれる。

俺は咄嗟に転がって避けたが、左腕が焼けた。


「ぐっ……うわああッ!」


痛みで意識が飛びそうになる。

地に伏しながら、叫んだ。


「クソッ……俺は、また無力なのか……!」


爺ちゃんの声が頭の奥で蘇る。

——『シオン、お前には“感じ取る”力がある。魔法の流れを掴む才能じゃ。』


その瞬間。

俺の視界に、奇妙な光が走った。


メイジキングの体から“流れる魔力の道筋”が、線のように見える。

空気を伝い、俺の体に触れようとしている。


「……見える。魔力の流れが……」


俺は無意識に、同じ動きをした。

手を前に出し、魔力を“掴む”ように。


ドクン、と心臓が跳ねた。

掌に黒い紋様が浮かぶ。


次の瞬間、ゴブリンメイジキングの炎が吸い込まれた。


「なっ……!? 奪ワレタ……!?」


森が、一瞬静まり返った。

風も止まり、焔の残光だけが揺れる。


俺は立ち上がり、低く呟いた。

「今度は、俺の番だ……!」


吸収した炎を逆流させ、掌から解き放つ。

炎の渦がキングを包み込み、轟音と共に爆ぜた。


「ギギギィィィィィィィ!!!」


爆炎の光が森を照らし、静寂が戻る。

灰だけが残った。


俺は立ち上がり、掌を見つめた。

黒い紋様が微かに光を放ち、やがて消えた。


「今の……なんだったんだ。敵の魔法が……分かった気がした」


胸の奥で、まだ熱が脈打っている。

まるで、眠っていた“何か”が目を覚ましたように。


ドクン、と一際強い鼓動が鳴った。


その時の俺は、まだ知らなかった。

——自分が、“全ての魔法”を扱える存在だということを。


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