ベテラン航宙士の『タルタロス』非公式ガイド
なんとなく世界のガイドを考えてみました
(ザワザワとした酒場の喧騒。グラスのぶつかる音)
「よう、新人。その顔は、『タルタロス』は初めてか。まあ、無理もねえ。こんな宇宙の吹き溜まり、好き好んで来る奴は、俺たちみたいなワケありか、お前さんみたいな夢想家だけだ。
まあ、座れよ。一杯おごってやる。どうせギルドの安酒だがな。このステーションで生きていきたいなら、いくつか覚えといた方がいいことがある。公式のガイドブックには載ってねえ、本当の歩き方ってやつをな。
まず、ここは**『重力のパッチワーク』**だ。忘れるな。一歩隣の区画に入ったら、床が壁になったり、体が鉛みたいに重くなったりする。通路の隅にある手すりは飾りじゃねえ。次の重力に体を合わせるための、命綱だ。床に描かれた矢印の色をよく見とけ。青なら安定、黄色は注意、赤なら……まあ、近寄るな。ベテランでも、たまに天井に向かって『落っこちる』んだからよ。
腹が減ったら、D-9区画にある**ダイナー『スターゲイザー』に行け。ギルドの連中のたまり場だ。ママ・ベルが出す『ビッグバン・プレート』**は、ここの名物だ。分厚いプレスハムのステーキに、山盛りのポテト。これを食わなきゃ、『タルタロス』での仕事は始まらねえし、終わらねえ。ただし、毎日は食うなよ。破産するか、成人病で死ぬか、どっちが先か賭ける羽目になる。
小腹が空いたら、通路でやってる**『ゼロG・ヌードル』**の屋台を探せ。低重力エリアで、親父が器用に栄養麺をさばいてる。味? まあ、腹に入れば何でも同じだ。だが、あの粘り気のあるスープは、無重力作業で冷えた体には悪くねえぞ。
絶対に近づいちゃいけねえのが、上層区画だ。**『アルカディアの窓』**なんて気取ったレストランがあって、そこじゃ本物の水がワインより高い。時間通りにしかメシも出さねえ。俺たちとは住む世界が違う。見物くらいならいいかもしれんが、あそこの空気に当てられると、ロクなことにならねえ。
仕事を探すなら、ギルドの掲示板が一番だ。だが、もっとヤバくて儲かる話が欲しけりゃ、D-7セクターに行ってみな。通称**『墓場』**。あそこのジャンク屋の爺さん……ゾルタンっていうんだが、あいつはただの修理屋じゃねえ。ステーション中の情報が、壊れた機械と一緒になだれ込んでくる。最近、腕のいい若い娘が一緒に店をやってるらしい。無愛想だが、腕は確かだ。愛機の調子が悪けりゃ、訪ねてみる価値はある。ただし、あそこの連中に舐められたら、船のパーツまで剥がされると思え。
そうだ、交易の話もしておくか。
『タルタロス』は、宇宙のガラクタが集まる場所だが、それだけじゃ食っていけねえ。俺たち航宙士が、外からいろんなモンを運んでくるから、この街は成り立ってる。
例えば、隣の宙域にあるステーション『ケレス・ファーム』。あそこは、農業に特化したステーションでな。遺伝子改良された穀物や、養殖タンパク質を大量に作ってる。『スターゲイザー』のハムやポテトも、元はと言えばあそこから来てるんだ。
逆もある。こっちからは、ゾルタンの店でリサイクルされた再生金属や、腕利きのメカニックが組み上げた改造パーツを輸出する。あっちには、それを作る技術がねえからな。持ちつ持たれつってわけだ。
もっと貴重なのは、**小惑星『アクエリアス』から採れる氷だ。あれが、この辺りじゃ一番きれいな『水』**になる。輸送は危険だが、当たればデカい。金持ちどもは、その水で風呂に入りやがる。信じられるか?
結局、俺たち航宙士は、この宇宙の血管を流れる赤血球みたいなもんだ。酸素や栄養……つまりは、物資と金を運んで、こういうステーションを生かしてる。危険で、報われねえ仕事かもしれん。
だがな、新人。たまに、『ビッグバン・プレート』を食いながら、窓の外の星を眺めるのは、悪くねえぞ。この宇宙で、俺は確かに生きてるって、そう思えるからな。
……さて、俺の話はここまでだ。次はお前さんが一杯おごる番だぜ。歓迎の印だ。ようこそ、『タルタロス』へ。」
統一感のある世界を背景にしていきたいですよね




