第四話 世界を救うためのスキルですか!?
「さて、ここだよ、入った入った」
カグヤさんの案内でクランハウスの中に入る。
クランハウスの中はものすごいお洒落なカフェって感じだった。
下校中にチョコモ◯カジャンボかじってる私たちにはまぶしすぎるぜ。
リビングで、カグヤさんはソファに腰掛ける。
「あんたたちも遠慮せずに座りなよ」
カグヤさんに勧められるままに、向かいのソファに腰かける。
「ああ、そういえばまだ名前を聞いてなかったね、二人の名前を聞かせてもらっていいかい?」
「はい、私は、子々津 都っていいます」
「私は、牛乃 歩美です」
「なるほど……じゃあ、都と歩美だね!よろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします!」
カグヤさんは、手慣れた手つきでコップに入れた水を出してくれる。
こっちの世界にきて、飲まず食わずだったため、喉がカラカラだったのでとても有難かった。
二人で、水を飲んでいると――
「あら?帰ってきたのね、カグヤ」
リビングの奥から女性の声が聞こえてきた。
「ああ、今帰ってきたところだ、ちゃんと例の二人は連れてきたぜ、紹介するぜ、こっちが都でこっちが歩美だ。」
「それはご苦労様、都ちゃんと歩美ちゃんね、よろしくね。なるほど可愛い子たちじゃない、怖がらせたりしてないでしょうね?」
その女性は金色の長髪を後ろで束ね、眼鏡をかけていて、とてもおしとやかな感じがする。
目の前のカグヤさんの豪快な感じとは、真逆のイメージの女性だった。
「はじめまして、私はアデリナ・シャーフ、アデリナって呼んでね。このクランの副団長をしているわ」
アデリナと名乗った女性は、このクランの副団長らしい、副団長ってことはクランで二番目に偉い人ってことだ。
確かに、話し方が落ち着いていて皆をまとめたりするのが得意そうな感じがする。
「急に連れてこられてびっくりしたんじゃない?」
「い、いえ!大丈夫です!こちらこそ急にお邪魔してしまってすいません!」
「あらら、謝ることはないのよ、あなた達を連れてきたのはこちらなんだから、えーと、カグヤからどこまで聞いているのかしら?」
アデリナさんは、とても優しくて穏やかな口調で話しかけてきてくれる。
こちらの世界にきてから、ほとんど優しくされてなかったので、優しさがとても身に染みる。
「はい、カグヤさんからはうちのクランに入らないか?って勧誘を頂いています」
「……えーと、それじゃあ、詳しいことは何も聞かされてないのね……カグヤ、私はちゃんと説明して納得してもらってから連れてきてほしいって伝えたわよね?」
アデリナさんに突然、詰められてカグヤさんはギクリとした感じで言い返す。
「い、いや!そんなもんはこのクランに連れてきてから話せばいいと思ってよ!その子たち、腹も減ってそうだったしよ」
「……あらそうなの?あなた達、お腹が減ってるの?」
「い、いえ!大丈夫です!そんなお構いなく!」
さすがに少し厚かましすぎると考えて咄嗟に否定すると――
隣の歩美のお腹がぐーっと大きな音を奏でてしまった。
「あらら、やっぱりお腹がすいてるんじゃないの、それじゃあ先に食事を用意しましょう、話はその後でゆっくりしましょうか」
アデリナさんはそう言いながら、くるりと踵を返し、奥の方に戻っていった。
しばらくすると、パンとスープ、ソーセージやサラダなどが人数分用意された。
召喚されてから、かなりの間、何も食べていなかったため、涙が出そうなくらい美味しかった。
ていうか歩美はずっと泣きながら食べている。
「都しゃん……私、生きてて良かったぁ……」
そうだね、良かったね。
歩美は食べることが何より大好きな女の子だ、その歩美がこんな見ず知らずの土地で飲まず食わずで長時間いることがどれだけのストレスなのか。
あまり普段と変わらず、通常運転な歩美だが、友人の私にはかなり無理をしているのがわかるので、心苦しい限りだ。
「ご馳走様でした、本当に美味しかったです」
「ありがとうございました。お腹も心も完璧に満たされましたー」
食事も食べ終わり、アデリナさんとカグヤさんにお礼を述べる。
歩美は心の底からお礼を丁寧に述べている。
「さて、食事も終わったことだし、さっきの続きを話しましょうか、あなた達も状況が気になるでしょうし」
「はい、お願いします」
「何から話そうかしら?まず私たちはあなた達をクランに勧誘したい。ここまでは聞いているのよね?」
「はい、一つ聞きたいんですけど、何で私たちなんか勧誘したいんですか?」
「ええ、単刀直入にいうと、私たちにとってあなた達の持つスキルがとても重要だからよ」
アデリナさんの意外な言葉に思わず歩美と顔を見合わせる。
「本当ですか? さっきの賢者たちは、私たちのスキルを使いものにならないって言ってたのに……」
「そんなことないわよ、あなた達のスキル、【特性・ねずみ】と【特性・うし】は、私たちにとっては本当に貴重なスキルなの」
「ああ、それは間違いない、私たちはそのスキルの持ち主が現れるのをずっと前から心待ちにしてたんだ」
アデリナさんとカグヤさんが真剣な顔で私たちのスキルが貴重だと話しているが、にわかには信じ難い話ではある。
「そう言って頂けるのは嬉しいんですけど……ちょっと信じられないっていうか」
「そうね、直ぐには信じられないかもしれないわね……それじゃあ、カグヤのスキルは何か聞いたかしら?」
「はい、カグヤさんは【特性・うさぎ】ですよね」
「その通りよ、ちなみに私は【特性・ひつじ】、これで少しは信じられるかしら?」
何と、カグヤさんだけではなく、アデリナさんまで動物の特性スキルを持っていた。
「あの私たちを召喚した賢者たちは、動物の特性スキルは野蛮で使いものにならないって……」
「ああ、あの何も知らないじじいたちの言うことなんて無視しときゃいいんだよ」
カグヤさんが毒を吐いている。
その後にアデリナさんが告げた言葉に私たちは驚愕した。
「あなたたちのスキルはね……【世界を救う】ためのスキルなのよ」
……何ですと?
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