第三話 うさぎのカグヤさん登場!
「…………ここは!?」
不意に意識を取り戻し、ガバッと起き上がると、洞窟の中で横になっていたみたいだ。
私は、洞窟内でシーツのような布の上で寝かされていた。
「目が覚めたかい?全然目を覚さないから心配しちゃったよ」
声がした方を見ると、一人の女性が座っていた。
その女性は、長い黒髪にとても整った顔立ちをしている。
鮮やかな銀色の鎧に身を包み、ただ者では無い気配を漂わせている。
「まさか!?でっかいサソリとか全部夢だったの?」
「ん?サソリかい?それならあんたがさっき倒したじゃないか。ほれ、そこに素材が落ちてるよ」
その女性が親指でくいって指し示した方向を見ると、サソリのハサミやら、甲羅やらが落ちている。
やっぱり夢じゃなかったみたいだ。私があんな巨大なサソリをぶっ飛ばしたなんて今でも信じられないや。
「ど、どなたですか!?」
「ああ、あんたがサソリをぶっ飛ばしたまま気絶しちゃったからさ、治療と寝てる間の番をちょっとね。お隣のお友達の方も勝手に治療させてもらったよ」
そう言われると、あれだけ満身創痍だった体がすっかり治っている。
「一体、どうやって?」
「どうやって?……ああ、回復魔法だよ。あたしはどちらかというと苦手な方だけど、それくらいの傷なら問題なく治せるさ」
なるほど、回復魔法か。
隣では、歩美が口を大きく開けて熟睡している。
あれ?あんたさっきまで熟睡してなかったか?
「歩美、歩美!起きなよ、ほら!」
「……うーん、これもあまり美味しくなかったから都ちゃんにあげるよ」
「いい加減その夢やめてくれないかな?」
瀕死の状態だった歩美だったが、現在は熟睡しているようだ。
ふざけた夢を見ているみたいなので、大丈夫だろう。
「あの……助けて頂いてありがとうございました」
女性は手のひらをひらひらと振りながら応える。
「これくらいお安い御用さ。こちらこそ、危ない時に間に合わずすまなかったね。まさか、こんな所まで飛ばされるとは思わなくて……急いできたんだけど、着いた時には二人とも気絶してたんで肝を冷やしたよ」
女性の口ぶりに違和感を覚えた私は疑問をぶつけてみた。
「あの……その話し方だと、私たちがここに飛ばされるのを知ってたみたいですけど……」
「ああ……それはね、あたしのスキルの効果だね」
「……スキルですか?」
「あたしのスキルを使えばあんたたちがどこへ飛ばされたかくらいはわかるさ」
その女性はスキルを使って私たちの行方を追ってきたようだ。
「あの……あなたはいったい?」
「ああ、名乗るの遅れたね、あたしの名前はカグヤ、とある事情であんたたちの行方を追っていたんだ」
「……私たちを!?一体どうしてですか!?」
このカグヤさんっていう女性は私たちを追いかけてここまできたらしい……いやいや!異世界に呼ばれて早々こんな綺麗な女性に追いかけられるって、どんな状況なんだ!?
「まあ、それは追々説明するからね……まずは、ここから脱出しないとね、そのお友達が目を覚ましたら一緒に脱出しようか」
カグヤさんは、また手のひらをひらひらと振りながら話した。
その手を振る仕草はクセなのかな?かっこいいから私も今度歩美に見せてやろう。
「それにしても、あんたたちがあの【地獄サソリ】を倒しちゃうなんて本当に驚いたよ、スキルも目覚めたばかりだろうに、さすがに獣の特性持ちなだけあるね」
カグヤさんが、さっきの私たちの戦闘を褒めてくれた。
まあ、本当に紙一重で運よく倒せたと言える、ギリギリの勝利だったが、今度また同じようにあのサソリを倒せと言われても倒せる気がしない。
っていうか、あのサソリ【地獄サソリ】っていうんだ、なんて物騒な名前なんだ。
ちょっとかっこいいじゃないか!
……そうこうしている内に歩美が目を覚ました。
起きた瞬間に目をこすりながら「都ちゃん好き嫌いとかしちゃだめだよー」とかほざいていた。
好き嫌いしてないわ、ってか早く起きろ。
一応、歩美にもカグヤさんのことを紹介しておいた。
私たちの怪我も治してくれたことを知ったら深々とお辞儀をしてお礼を言ったが、礼の手のひらをふりふりと振る動作をされていた。
「さて、お友達の目も覚めたみたいだしそろそろ脱出するかね……二人ともあたしの近くに来てくれるかい?」
言われるがままにカグヤさんの近くに集まる。
「よし……それじゃあいくよ! 【兎跳び】発動!」
カグヤさんがスキルを使用すると、私たちは赤い光に包まれた後に、一瞬でワープした。
気付けば、町のようなところに移動してしまっている。
「……ワープや、すげえ……」
「この国は、【ダルシアン王国】っていうんだよ。さあ、これからクランハウスへ向かうから付いてきな」
「はい……クランですか?」
「ああ、あたしが所属しているクランだよ、仲間がそこで待ってる」
カグヤさんにも仲間がいるのか、そこでさっきの話の続きを聞ければ……そんなことを考えながら付いていくことにした。
「あの、カグヤさん、一つ聞いていいですか?」
「ん?なんだい?」
「さっきの洞窟からの脱出の時に使ったスキルですけど、確か【兎跳び】って言ってましたよね?そのスキルってひょっとして?」
「ああ、意外と鋭いね。 そうだよ、あたしもあんたたちと同じ獣の特性持ちさ、あたしのは【特性:うさぎ】だよ。 まあ仲間同士改めてよろしく頼むよ」
やはり、そうだった。
私が【特性:ねずみ】で歩美が【特性:うし】でカグヤさんが【特性:うさぎ】ときた。
ん?何か引っかかるんだけどなんだろう?
しばらく考えたが思いつかなかったが、気になるなぁ。
「よし!着いたよ!ここがクランハウスだよ!」
カグヤさんに案内されて着いたところは、少し大きめのカフェのような場所だった。
「……さて、ここに入る前に一応言っておきたいんだけど……」
「……はい?なんですか?」
「……あんたたちさ、あたしたちのクランに入るつもりはないかい?」
「「えええ!?」」
唐突なカグヤさんからの勧誘に私と歩美は驚くことしかできなかった。
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