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短編集

ある日突然ゴブリンに

作者: よぎそーと
掲載日:2024/04/16

「こんなもんか」

 今日の稼ぎを手にして家へと向かう。

 迷宮で得た魔力結晶はそこそこ。

 今日明日の食い扶持には困らない。

 ささやかだが、着実な稼ぎが手に残る。

 それだけで十分に思える。

 ゴブリンなのだから。



 ある日突然、地球はファンタジー世界になった。

 突如現れた迷宮。

 そこから飛び出す怪物。

 これだけでも十分驚く事だろう。

 だが、変化は世界だけに留まらなかった。



 人間の変化。

 こんな現象も発生した。

 これにより人類の多くは様々な存在に変わっていった。

 動物や植物、昆虫など。

 更には伝承で語られる妖魔などに。

 そんな事が一瞬にして起こり、人々は恐慌状態に陥った。



 とはいえ、姿形が変わった事以外は大きな違いは無い。

 竜や巨大鳥などへの変化はさすがに度肝を抜かれるが。

 言ってしまえば見た目が変わっただけである。

 中身の人間性にまで変化があるわけではない。



 しかし。

 能力などには大きな違いが出る。

 これが悲喜こもごも様々な出来事を発生させていった。



 迷宮から家へと向かうゴブリンもそんな一人だ。

 世界が変わったその時、男はゴブリンへと変化した。

 最初は驚いた男がだが、すぐに慣れていくようになった。

 見た目以外にこれといった違いはなかったからだ。

 日常生活に支障は無い。



 ゴブリンは人間型である。

 獣や植物、虫型といった人を大きく逸脱した形をしてるわけではない。

 なので、人と同様の生活が出来る。

 妖魔や妖怪、怪異と呼ばれるのは避けられないが、言ってしまえばこれだけが違いとなる。

 人と同じように行動出来る。



 もっとも、獣・植物・虫といった姿になったとしてもだ。

 人間化という能力で人の姿をとる事は出来る。

 なので、文字どおりの人外になってもさして大きな問題にはならない。

 これが分かるのは、世界が変化してから何日かしてからになるが。



 だが、全く問題がないわけではない。

 ゴブリンは伝承や創作物において最弱に分類される存在だ。

 能力は基本的には低い。

 悲しい事にゴブリンはこの特性をしっかりと持っていた。

 一般的な人間よりも能力が総合して低い。

 体力も知力も気力も。



 これが分かった時、ゴブリンになった男は絶望した。

 男だけではない、他のゴブリン達もだ。

 衝撃のあまり寝込むのは当然として。

 中には自殺すらする者も出てしまった。



 ゴブリンになった男も最初はどうすれば良いのか分からなかった。

 途方に暮れてしまった。

「これからどうすりゃいいんだろ」

 そう思ってため息を連発するほど吐き出していたものだ。



 だが、いつまでも落ち込んでいられなかった。

 能力が低くても仕事はしなくてはならない。

 黙っていても食い扶持が流れ込んでくる有閑階級ではないのだから。

 それに世界は新たな脅威にさらされている。

 迷宮だ。



 人間の変化と共にあらわれた場所、迷宮。

 そこから溢れてくる怪物によって、人類は危機に陥った。

 これらを排除するために、人は戦うしかなくなった。

 幸い、現代兵器が通用するので、怪物の撃退そのものはどうにかなった。



 だが、怪物が出てくる迷宮。

 これの排除はまだ出来ていない。

 幾つかの迷宮は軍隊によって攻略されはした。

 しかし、それはほんの一部だけ。

 世界各地にはまだ多くの迷宮が残ってる。



 これらの攻略が新たな仕事になる。

 正確に言うなら、怪物を倒すと得られる魔力結晶を手に入れること。

 魔力という新たなエネルギーの塊。

 これを手に入れるという仕事が新たに誕生した。



 ゴブリンになった男も、魔力結晶を手に入れるために迷宮に入ってる。

 命がけの危険な仕事だが、それでも良かった。

 それまで勤めていたブラック企業に比べれば。

 死ぬ可能性はあっても、怒鳴りつける上司はいない。

 無駄に厳しい達成目標(実態は強制)もない。

 売り上げのために自社商品を無理矢理買わされることもない。



 それに、死ぬ可能性であるなら、ブラック企業に勤めてる時にだってある。

 いつ過労死するか分からないのだから。

 あるいは発狂するのが先になるか。

 これらに比べれば、負担が減る迷宮の方がよっぽどマシというもの。



 かくてゴブリンとなった男は迷宮に向かうことになった。

 命がけの危険を覚悟して。



 なお、余談であるが。

 似たような境遇の者達が一斉に迷宮へと向かい。

 世の中に数多あったブラック企業の多くが倒産した。

 一時的に失業問題が増大した。

 しかし、あぶれた者達は迷宮へと流れていった。

 さして時をおかずに、失業問題は解決した。



 ただ、ブラック企業の経営に携わっていた者達は軒並み没落した。

 奴隷として酷使できる社員が消えたのだから当然だ。

 ならば迷宮へと向かえば良いが。

 環境の変化に合わせる事が出来るほど器用ではない。

 これらは破産して没落し、やがてどこへともなく消えていった。



 そんなかつての職場の事を忘れ、ゴブリンは日銭を稼いで暮らしていた。

 手取りはそう多くはない。

 様々な経費を差し引いて、毎月20万円程度の手取りになるくらいだ。

 だが、ゴブリンはこれに満足していた。

 ブラック企業時代より8万円は収入が増えたのだから。



 もちろん、ここが限界だというのも分かってる。

 能力が低いゴブリンなのだ。

 強力な怪物と戦えるほど強くはない。

 怪物が落とす魔力結晶の質もそれにあわせたものになる。

 弱い怪物が落とす魔力結晶は、魔力の質量共にそれなりにしかならない。

 クズとまでいかないが、端切れのような魔力結晶。

 それを集めるのがゴブリンの限界だった。



 だが、それでもゴブリンはかまわなかった。

 以前よりは生活が楽になってるのだから。

 仕事環境も確実に良い方向に向上している。

 上司からの罵声もない。

 同僚が足を引っ張る事もない。

 その他諸々込みで、迷宮に挑んでる今の方が良くなっていた。



「ま、分相応だよな」

 自分の能力を鑑みてそう思う。

 無理や無茶をしなければ食っていけるだけの稼ぎがある。

 これ以上は望めなくてもそれはかまわなかった。

 下手に無理すれば体を壊す。

 下手したら死ぬ。

 そうなるくらいなら、ほどほどに頑張る程度で良かった。



 そんなゴブリンは6畳ワンルーム、月5万円のアパートに帰り。

 帰り道の途中で買った漫画とラノベに目を通していく。

 終電帰りの始発始業の日々ではありえなかった贅沢だ。

 こんな事が出来る今は、とても恵まれてる。

 そう思いながらゴブリンは眠くなるまで漫画を読んでいった。



 変わらない日々。

 だが、平穏でのんびりした毎日。

 これが種族変化を起こすまで続く。

 上位の存在になり、能力が軒並み底上げされ。

 今まで以上の活躍が出来るようになるまで。



 その時が来るまで、このゴブリンはのんびりとした暮らしを続けていく。

 特に何かを望む事もなく。

 出来れば平和なこんな時が長く続くと良いなと思いながら。

 良くも悪くも、この願いは破られる事になる。



【あとがき】


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