まほらはプロセスを考えた
この報われない想いを断ち切るためのプロセスをまほらは考えた。
側に居て、顔を合わせていては到底忘れる事なんて無理だろう。
「まずは引越しか……」
亡き両親との思い出が詰まるこの家を出るのは辛いが、ここに居続ける事でもっと辛い思いをしていれば、いつかはその良い思い出も上書きされてしまう。
それならばいっその事出ていく方がいい。
「どうせこの家は一人で暮らすのには広すぎるのよね、賃貸だし」
決まりだ。
まほらは手帳に“引っ越し”と記入する。
「それから、どうしよう……」
引っ越ししても職場で顔を合わせるのなら意味がないのではないか。
まほらとブレイズは同じ科捜課だ。
事件の証拠品の立証や復元など、ありとあらゆる調査を魔術を用いて行っている。
案件によってはブレイズと同じ解析班として組まれる事もある。
「それじゃあせっかく引越してもあまり意味がないわよね」
完全にブレイズとの関係を断つ。
そのくらいしなくてはこの年季の入った恋心は消えてくれそうにない。
「となると異動、転属か……」
王都の本省から地方局への異動を願い出てもいいがそれには時間が掛かりそうだ。
それならば転属、別の課に移る方が良さそうだ。
まぁ慢性的に人手不足の課を希望すれば迅速に転属出来るだろう。
「よし、それでいこう」
まほらはまた手帳に“転属願いを出す”と記入した。
そして思いつく限りの手順を手帳に書き出していく。
一つ作るのも二つ作るのも一緒だからと渡していたお弁当も打ち切る。
そしてもう二度と一緒に食事に行ったり映画に行ったりして遊ばない。
「後は何か……あったかな?……」
まぁ後は写真やら、誕生日やクリスマスに贈りあったプレゼントの処分だ。
これは向こうにもちゃんと処分するように伝えねば。
結婚前提に付き合っている彼が、腐れ縁の幼馴染から貰ったプレゼントを後生大事に持っているなんて嫌だろうから。
「……はは、まるで自分が生きてきた痕跡を消すみたい」
ブレイズの人生から、彼の人生からまほらという存在を消すのだ。
残るのは思い出だけでいい。
それなら形としてルミアの目につくこともないし、いずれ風化してゆく。
そう、いずれ消え去ってゆくだろう。
「早くこの想いも消え去って、風化してほしいよ……」
まほらはひとりぼっちの部屋の中でそうつぶやいた。
そしてまほらは次の日から早速自分で立てた手順に沿って行動をはじめた。
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明日の朝、今度こそサラっと読める読み切りを投稿します。
今度こそ、今度こそ片手間に読めるようなアッサリした物語です。
朝ごはんを召し上がりながらお読みいただけると嬉しいです。
あ、(꒪◽︎꒪)でも内容はどちらかという朝向きでないかも。
タイトルは
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
内容はタイトルになってるセリフを付き合いたてだと思っていた彼が他の女に言っているのを聞いちゃったヒロインのお話です。
よろしくお願いしまーす!