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まほらはバディの幸せを願う

商工会主催の合同お見合いパーティーで違法とされる魔法薬物が使用されているというタレコミがあり、初の潜入捜査となったまほら。


その会場に職場からの業務命令で参加していたラリサと鉢合わせをしてしまった。


遠慮がちにまほらへと視線をチラホラと向けてるくるラリサに、まほらは天を仰ぎたい気持ちになる。


───ラリサさんにハウンドさんとの仲を誤解させたみたい。


しかしここで変に取り繕っても却って怪しいだろうし、潜入捜査中なのであまり目立つような事はしたくない。


なのでここは自然に振る舞っておくしかないと思い、まほらは捜査に専念する事にした。


お見合いパーティーが始まり、様々な男女が互いに声をかけ合い交流を深めてゆく。


まほらも数名の男性から声を掛けられ、当たり障りなく音楽や本や趣味の話などをした。


ちらとハウンドの方を見れば、やはり彼は沢山の女性に囲まれていた。

モテ男はここでも健在である。

しかし彼の視線は時折ラリサを追う。幾度となく潜入捜査をしているというハウンドの事だからきっと視界は広く会場内に張り巡らしているのだろうが、それでも合間にラリサを見ている。


そしてラリサはラリサでやはりハウンドと意識しているようだ。

切なそうな瞳で時折彼を目で追う姿を見ると、まほらは「なんだかなぁ」と思ってしまうのだ。


二人を見ているとわかる。

互いに互いを今でも思っていることが。


そりゃ故人であるミリサも、側であの二人を見ていたら身を引こうと考えるだろう。

恋人であったハウンドと姉のために自らを犠牲にしてしまったミリサの心情を思うと、まほらはなんとも言えない気持ちになった。


───私がミリサさんだったら……。


まほらはそう考えて足を踏み出す。

ゆっくりとした足取りでラリサの側へと向かい、そしてラリサに声をかけた。


「ラリサさん、楽しんでますか?」


ラリサは突然話しかけてきたまほらに少し驚きつつも返事をした。


「まほらさん……はい、…いいえ、虚勢を張っても仕方ないですよね。私はやはり、ここにいるのは場違いなようです……」


「それは亡くなった妹さんに引け目を感じているからですか?」


「え?いえ、その、……はい…私は……幸せになる資格のない人間ですから……」


そう言いながらも無意識なのだろうか、目線ではハウンドを追ってるラリサを見て、まほらは言った。


「じゃあ、私がハウンドさんとお付き合いしても、問題ないですよね?」


「え……」


「今もああやって女性たちに囲まれているから分かると思いますけど、ハウンドさんモテるんですよ。つい先日も女性職員に告白されてましたからねぇ。それなら私も頑張っちゃおうかな~」


「………」


まほらがそう言うと、ラリサは黙って俯いてしまった。

そんなラリサを見てまほらは彼女に言葉がける。


「ラリサさん、私は一人っ子ですが、家族の情はわかります。亡くなった妹さんは……きっと今のラリサさんの事を見たら悲しむんじゃないでしょうか?」


「……え?」


「私だったら悲しいです。自分に引け目を感じて、人生を諦めて縮こまって生きる姉の姿なんて見たくないと思うな」


「まほらさん……」


「ちょっと意地悪な質問をしますね?じゃあもし逆の立場だったなら、ラリサさんはミリサさんに一生後悔しながら一人ぼっちで生きてほしいと思うんですか?」


まほらのその質問に、ラリサは目をぎゅっと瞑って首を振る。

その姿を見て、まほらは優しい笑みを浮かべた。


「人の気持ちは……簡単には変わらない、変えられない。好きだと想う気持ちを捨てたくて諦めたくて、そのためのプロセスを考えたり色んな事をしても、結局はそんな手順通りにはいかないんですよね……まぁ、時間をかければいつかは可能なのかもしれませんが、ラリサさんとハウンドさんの場合は時間を掛けても距離を置いても変わらないみたいですし。きっとこれからも変わらないんじゃないですか?」


「……変わらない……変えられない……」


「……それなら、もう諦めて素直になったらどうです?………っ」


そこまで言ったまほらが急に胸を押さえて俯いたのを見て、ラリサは驚いてまほらを見た。


「ま、まほらさん……?」


「ごめんなさい、言ってる言葉が全部ブーメランになって自分にぶっ刺さりました……」


「えぇ?」


「はぁ……もういいです。お互い諦めましょう!」


まほらはそう言ってラリサの手を取った。


「何をどうしたって好きな気持ちは消えないんです!それならもう気にせずにずっと好きでいるしかないですよね!そしてそんな好きな相手を他の女性に取られるなんて、やっぱり嫌ですよね!」


「………はいっ……」


まほらの勢いに気圧されながらも、ラリサは頷いた。


よし!と思ったまほら。

だがその時、ラリサ越しに見た光景に一瞬で真顔になる。

まほらのその様子を見たラリサが不思議そうな顔をした。


「まほらさん?どうし…「しっ……」



まほらは真剣な表情で一点を見つめながらラリサが何か言おうとしたのを静かに制した。


まほらは今、確かに見た。


ラリサの後方、少し離れたテーブルの所にいる男が隣にいる女性のグラスに“何か”を混入したのを。


───あれがもし、薬物だとしたら……いえ、薬物でないにしろ他人の飲み物に異物を混入するなんてその時点でアウトよ。


その時、まほらの後ろからふいにハウンドが小声で話しかけてきた。


「まほらさん、……見たかい?」


「はい。見ました。前方の深緑の髪の男が女性のグラスに何か薬剤のようなものを混入したところを」


「僕も見た。仕込んである魔道具にも録画できているはずだよ」


「それなら、」


まほらがそういうと、ハウンドが頷いた。


「とりあえず、任意で事情聴取だ」


「はい」


ハウンドが深緑の髪の髪に近付いて行く。


まほらもその後に続いた。







───────────────────────




なんと当て馬はヒロインの方だったそうな……




あと二話で最終話です。

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