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まほらと違法催淫剤

今回、殺人、遺体を表現するシーンが出てきます。

苦手な方はご自衛をお願いします。




食事の帰りに突然現れたコールガールに告げられた内容に表情を強ばらせたハウンドを見て、まほらはただならぬ事が起きているのだと察した。


以前在籍していた科捜課で魔法催淫剤の分析をした事があると言っていたことからハウンドに力を貸して欲しいと言われ、その鬼気迫る様子に思わず頷いてしまう。


そしてコールガールの案内により、まほらはとある古い逢い引き宿へと連れて来られた。


きっと今の状況をブレイズ一家が知ったら卒倒するだろうなと思いながら、まほらは宿の古びた階段を上がってゆく。


二階客室の最奥、201号室の扉を開けて入室した時にまほらはむせ返るような生臭い匂いとそれに紛れて存在するスイカのような香りをほのかに感じた。


それと同時にベッドの上に横たわる女性の裸体。


「っ……!!」


まほらが思わず息を呑んだのはその女性の痴態を見たからではない。

その女性がすでに死後硬直が始まった状態の遺体であったからだ。


魔法省の職員として数々の事件の捜査に関わってきたまほらだが、実際の殺人現場に足を踏み入れるのはこれが初めてである。


まほらはすでに、これが自殺ではなく他殺であると判断していた。


その理由は………


「被害者がどんな客と宿に入ったか、誰か見ていないか?」


ハウンドが部屋の中に居た数名の女性たちにそう訊いた。

女性たちはそれぞれセクシーな服装をしており、彼女たちもコールガールである事がすぐにわかった。

ハウンドと同じように事件の事を知らされ、駆けつけて来たのだろうか。


「この宿は先払い制だからね、受付の爺さんが宿代を受け取ったらしいんだけど、代金と釣り銭の受け渡しはミカ(殺されたコールガール)がしたから男の顔を見てないんだってさ」


とコールガールの一人がハウンドに答える。

しっかりとした受け答えから、それなりに学のある女性と見受けられた。


「そうか……」


ハウンドはそう言ってから、自身の手に魔術をかけて手袋をはめているのと同じ状態にした。

それから遺体の周りを調べ出し、まほらに告げる。


「まほらさん、この室内にも遺体にも薬を使用した痕跡は見当たらない。だけど僕はこれは薬殺だと考えている。元科捜課として、キミの見解を聞かせてほしい」


ハウンドに促され、まほらは遺体(女性)に近ずき、体の状態を見た後に遺体の()()を嗅いだ。


そしてやはり、と確信する。

まほらが部屋に入った時に感じ、遺体を見てすぐに他殺だと思った理由はどうやら当たっていたようだ。


まほらはハウンドに答える。


「これは、催淫魔術ではなく、魔法薬の催淫剤を用いられて殺害されたものだと思われます。

「なぜ、そう判断した?」


「香りです」


「香り?」


「はい。私が以前、科捜課で違法魔法催淫剤の分析をした事があると言ったでしょう?その時に嗅いだスイカの香りとよく似ているんです」


「スイカ?あの野菜のスイカ?」


「そうです。スイカには媚薬効果があるのをご存知ですか?その効果を魔法により増幅させた物と考えられます。しかしかなり粗悪な薬剤、粗悪な術式で作られたために使用された人間の体内で毒物に変化し、中毒死を引き起こすと分析しています。私が調べた以前の事件で使用されたものもそうでした。三年ほど前の事件です」


「……あの事件の分析と鑑定チームにまほらさんもいたんだね……」


「え?」


小さな声でつぶやくように言ったハウンドの声をしっかりと聞き取る事が出来ず、まほらは聞き返す。

だがハウンドはそれには答えずに別の事を訊ねた。


「今回も()()と同じ違法魔法薬が使われたと考えられるな。しかしその薬の使用方法はどう見る?」


「恐らくは経口摂取か、実際に陰部に香油のように擦り込むか……詳しい事はきちんと調べなくては分かりませんが」


「そうか、ありがとう。この女性が以前からの魔法催淫剤で殺されたと解ればそれで充分だ。後は捜査一課に任せよう。魔法催淫剤の担当も我々ではないからね」


「え?じゃあ何のために……」


ハウンドの言葉にまほらは驚いた。

では最初から捜査一課に委ねれば良かったのではないか。

なぜわざわざハウンドがいの一番に現場に駆けつけたのか。

コールガールたちも魔法省や自警団に通報ではなくなぜまずハウンドに知らせたのか。


まほらの頭の中は疑問でいっぱいである。


そんなまほらを他所にハウンドは宿の店主に魔法省に通報するように指示をし、コールガールたちにも当面は馴染みの客以外取らないように注意をしてからまほらを連れて宿を後にした。


まほらをアパートまで送る道すがら、ハウンドは言った。


「巻き込んでしまったからには色々と話すよ。まぁいずれは巻き込むだろうと思っていたから、まほらさんが科捜課に居たと知った時はラッキーだと思ったんだ。でも今日はもう遅いから、話は明日するね」


「はい……わかりました」


どうやら疑問に思った事は説明して貰えるようだ。


それはありがたいのだが……。


とにかくまほらは心身共に疲れ果て、一刻も早く家に帰りたかった。


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