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日常に潜む悪魔  作者: ガクル
3/3

第3話 阿南という男

 私は異世界転生捜査班の班長に任命された午阿。任命されて歓迎会を開かれることも無く早々に利理子君に連れ出されることになった。

 現場へも利理子君で無く私の運転で行く、なんとなく利理子君は私付きの秘書かと思っていて期待していたのだが・・・。

 私の歓迎会はやってくれるのだろうか?

 暫く走り車をコインパークに止め、とあるマンションの前まで連れてこられた。

「利理子君、ここは?」

 正直何の説明もされてないので何でここに来たのかも知らない。

「午阿さん、ここは異世界転生のパイオニアともいえるニート転生異世界無双の作者が住んでいるマンションです」

 どうも利理子君は俺が就任される前から調査を進めておいてくれたようだ。このまま事件が解決したら私の手柄になるのだろうか?

 しかしパイオニアという割には質素なマンションだな。オートロックも無く部屋の前まで簡単に行けてしまう。人気作家が住んでいるようなマンションには見えない。

「ほう、ちなみに内容は?」

「ニートの主人公が家でMMOをしてくるとトラックが突っ込んできて死亡。実はそれは女神の手違いで、お詫びに主人公に数々の能力を与えて異世界に転生させてあげるのが物語の発端で、その後はその能力を使ってやれやれいいながらハーレムを築いていく、異世界転生作品の先駆けであり雛形とも言える作品です」

「ふ~ん、そんな風になれるなら確かに死んでもいいかもね」

 人生は苦労した方がいいと言うが、しなくていいならしない方がいいに決まっている。あれは苦労したことが悔しいから自分を慰める為に言う自己暗示だな。

 しかしハーレムか、男の夢、キャバクラでちょっと奮発すれば簡単に気分が味わえる。歓迎会で連れて行ってくれない者だろうか。

「作者はこれで一躍ヒットを飛ばして、作品はアニメ化までしています」

「それは羨ましい。彼は名実ともに勝ち組の仲間入りという訳か」

 印税でうはうは、残りの人生は働くていいとは羨ましい。

 俺も小説書いてみようかな。

「だがそれにしては質素なマンションですね」

「まあ税金とか二作目とか色々あって傍から言うほどではないようですが」

「税金か、税金は辛いよね。でもそれでもしがない国家公務員の私よりは勝ち組だろ。

 そんな彼が某国の工作員というのはどうなのかな?」

 裏切るのは大抵現実に不満を持っている敗北者。勝ち組である彼がこの国を裏切るのは考えにくい。

「パイオニアということと、ヒットの仕方が少々不自然なので、成功を妬む気持ちもあるでしょうがネットでは色々と細工細工と噂されています」

「つまりヒット事態が某国の策略だと」

「現状では何とも、ただ一度は会ってみる価値があると思いますが」

 なんだ確たる証拠があるわけじゃ無い単なる憶測の域なのか。困るな~そういうのはもっと確信を得てから上司に相談するものだろ。

 まあ仕方ない。部下の能力不足は上司である俺が補ってやらねば。


 部屋の前まで行きインターホンを鳴らすが、返事は無い。

 留守のようだ。

「帰ろうか利理子君」

 私は帰ろうとしたが、そんな上司である私を無視して利理子君はお構いなしにドアのノブを握り締め回す。

「空いてますね」

「鍵を閉め忘れるとは不用心だな」

「居留守かもしれませんよ」

「しかし勝手に入るわけにはいかないだろ」

 それでは空き巣になってしまう。この歳で失業はしたくない。

「いえこれも国家のためです。我々にはその権限が与えられています」

「しかしだね」

 権限と責任は表裏一体。何かあれば責任を取らされる。尤も上級国民になれれば権限だけを甘受できるようになる。

 なりたいな~上級国民。

「国民を自殺から救うためです」

 そう言われてしまうと反対しずらくなる。

 この娘ってこんなに正義感に燃える娘だったんだ。目から鱗の驚き。

「それに何か異臭がしませんか?」

「ん?」

 一瞬独身男性孤独死が思い浮かんでしまった。

 いやいや、死体の第一発見者になんか成りたくないぞ。そんなの喜ぶのは名探偵だけだ。私には犯人を見抜く推理力はない、名探偵並みの名誉欲はあるけど。

「なら警察に・・・」

 っと言っているうちに利理子君はずかずか部屋に入って行ってしまうのであった。

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