表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/49

02:アーチャー家追放、甦る悪夢

「どうした」


 重く低い声で、私の方を向かずに口だけ動かす父。本革のイスに深く腰かける父は、目線を少し上の方にずらした。


「お父さま……私、冒険者をやめました」


 服の布がこすれる音、ガタッとイスを引く音、私はとっさに体を強ばらせた。


「な……なんだと」


 弓で鍛えられた上半身が、私の目の前に迫る。


「なぜだ、なぜやめたんだ」


 ……ちゃんと言うしかない。もしここでうそをついても、きっと数日後には(うわさ)で父の耳にも入ってしまうだろう。


「できる限り頑張ったのですが、昨日、パーティのリーダーから追放されてしまいました。『他のパーティに入っても迷惑になるだけだから、冒険者をやめた方がいい』と言われて……」


 言葉が続かなくなり、沈黙が流れる。数十分前に止まったばかりの涙がまたあふれてくる。


「そうか」


 だが私は知っている。父は冷たく感情的な人だ。


「お前……弓の名門・アーチャー家に泥を塗ったな」

「申し訳ございません!」

「小さい頃からお前だけが低能で、せっかく上級ギルドに入ったと思ったら、つ、追放だと!?」


 ガシッ


 胸ぐらをつかまれた。その拳がふるふると震えている。


「私は、あの時の武術大会で、やっとお前の才能が目覚めたのだと思った! 私の子どもである以上、実力がないわけがないからな!」


 拳が強く胸に押しこまれ、真後ろに突き飛ばされた。まだ治りきっていないアザと床が直撃し、思わず声をあげてしまう。


「やっぱりお前では無理だったのか。他の三人の評判はよく耳にしたが、お前のだけは入ってこなかった。そこでもう分かってはいたがな」


 金縛りにかかったのか、体を動かすことができない。ジリジリと父は近づいてくる。


「ああ、こんな娘を上級パーティに入れてしまった自分が情けない。むしろ、こんな娘に振り回されたメンバーのことを思うと、同情すらわいてくる」


 目を見開いたまま、かろうじて動く指先だけを震わせていると、父は両手を腰に当て、ディエゴたちと同じ冷たい目で見下して言い放った。


「アーチャー家の名誉を汚すヤツは、この家にいる資格はない。クリスタル、お前を追放する」


 お手伝いさんにドアを開けさせ、父は下ろしていた私の荷物を廊下に放り投げた。

 嫌な金属音と何かが折れるような音がする。


「早く出ていけ」


 足を踏み鳴らして急かす父。私は「あぁ……」と嗚咽(おえつ)を漏らしながら、()って体を廊下に出した。

 この姿は限りなく滑稽(こっけい)で、無様であった。


 父によってドアが思いっきり閉められ、投げられた荷物とともに廊下に一人ぼっちになる。

 再び荷物を背負うと、止めどない感情があふれ出し、涙を拭って家から飛び出した。


 悔しいというか、情けないというか、たくさんの思いが心の中でごちゃ混ぜになっている。


 私はただひたすらに、王都の方へと逃げるように駆けていった。






 走りながら、私はこんなことになってしまったあの悪夢を思い出していた。


 あれはつい半年前、父に無理矢理参加させられた、冒険者の中の武術大会のことだ。

 本来そういう大会には実力がなければ出られないが、アーチャー家は優秀な家系ということで、私を父の権力で出させることができたのである。


「わ、私なんかが武術大会に⁉︎ そんなのむ――」

「無理とは言わせない。冒険者になって一年以上は経ったんだ。そろそろ出てもよい頃だろう」

「いえ、私なんかが出てよいものでは……」

「出るからには、アーチャー家の名にかけて一番をとること。よいな?」


 確かに兄や姉も、冒険者になってから一年で武術大会に出ていた。父の命令に逆らうことはできない。


「は、はい。分かりました」

「いつもはダメなお前でも、大会でうまくいけば上級パーティに入れるかもしれないからな。これで成功させるしかないんだ」

「はい」

「アーチャー家の名に傷をつけることのないようにな」

「はい」


 頭が締めつけられそうだった。何がなんでも父を怒らせないように……、そう考えるのが精一杯。


 武術大会に向けて、討伐のすきま時間に集中して練習した。一般的な的にでさえ当てられるかというところだが、ダメ元で最難関の距離と的でやってみた。

 ……もちろん、当てられるはずもないのだが。

「面白かった!」

「続きが早く見たい!」


と思っていただけましたら、評価・ブックマーク・いいねをぜひお願いします!

作者のモチベに繋がります٩(*´︶`*)۶


○評価→☆☆☆☆☆を押す

 つまらなかったら、星一つだけでも結構です。

 面白かったらたくさんつけてください!


○ブックマーク→『ブックマークに追加』を押す


○いいね→『いいねで応援』の右にあるマークを押す

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー 小説家になろうSNSシェアツール script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] もっと作品を理解したくなるような主人公ちゃんだと思います。 アーチャーがメインは少ないので今後の展開も気になります。 タイトルで見て他の武器の適正素晴らしいと思いますので楽しみにしています…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ