Story03 白昼夢 : 続きの言葉は聞きたくないよ
―― ほうら!見てくださいよ。旅人さん旅人さん! ――
長いスカートをヒラヒラ翻して彼女は舞う様にはしゃいでいます。
「そんなにはしゃいでいると転んでしまうよ。」
彼女の子供っぽさに苦笑しつつも、太陽のように笑いキラキラ輝いて光る金糸が綺麗だなんて柄にも無く思う。
そんな事を言っている傍から、彼女は派手に転んでしまいました。
―― うわーん、痛いですよー。旅人さん旅人さん。――
「ほうら、言わんこっちゃない。」
お約束な展開に呆れながらも旅人は手を差し出します。
ふと、合わさった上目遣いの彼女の瞳が怪しく光った様に旅人は感じました。
まるで見てはいけないものを見ている様で背筋が凍ってしまいそう。
今までの彼女は何処に行ったのか、別人のように感じてしまうなんて、妹のように愛してきた彼女に恐怖を感じてしまうなんて
―― ねぇ、旅人さん旅人さん。私と一緒に・・・ ――
言いようの無い不安感が体中を駆け巡り、体中から警報が聞こえます。
これ以上は後戻りが出来なくなってしまいそうで・・・
ねぇ、こんな キミ は シラナイ よ
――――――バチンっ!
突然の音に旅人はハッと我に返りました。
どうやら、彼女が目の前で手を叩いた様です。
よくよく彼女を見るとはしゃいでは居るけれと不思議と転んだ形跡がありません。
あぁ、助かった。なんて悪い夢だったんだ。
相変わらずの彼女を見て思わず小さくひとりごちました。
何も知らない彼女は固まったままの旅人を怪訝そうに見ています。
「あっ、あぁ、すまない。少しボーっとしていたみたいだよ。」
そう言って微笑んだけれどちゃんと笑えていたでしょうか。
続きの言葉は聞きたくないよ
普段通りに綺麗に微笑む彼女に少しだけホッとしただなんて
気を取り直して、旅人は先を急いだ。
03白昼夢
―― あー、待ってくださいよぉ!ねぇ、旅人さん旅人さん。
気を抜いたら引きずり込まれますよ。ふふふっ ――
後ろから追いかける彼女の笑みに含まれたモノに気付く者は誰も居ない。