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新たな問題とその解決策 その4


 だってなぁ、初代さんが遺した最初の研究所が三十年前に消し飛んでからは、使い方不明なエンペリオンコアと、あらかじめ用途が決められて登録されてた魔導生物しか造れない、バックアップグリモワールしかなかったんだ。


 その上、研究所の事件のきっかけになった宮廷闘争でラクスター家が筆頭の派閥が崩壊して、それ以来ずっと身内だけで領地運営してたんだろ。


 そんな厳しい状況で当主になって、今の今まできちんと領内を管理してたからこそ、まだ次期当主に過ぎないアリスだって敬われるような、いい状態を保ってきたんだからさ。


 アールさんは人の上に立つ役目を、しっかり果たしてると思う。


 でもまぁ、そんな役目を背負った事なんてないオレが言っても説得力無いから、口には出さないけどな。



「すまない……私としたことが、あまりに魔導生物好きが高じて、ついそんな弱音を……」


「あなたの事だからきっと、そうだと思ったわ。ごめんなさいね、ユージさん」


「いやその、オレだって紋繰騎(クレストレース)の事だったら似た者同士だから……」



 実際、アリスが重量増加対策の騎体強化案を出した時は、その場じゃすぐに実用性とか応用例とかアレコレ考えてたけど、オレが出した足裏スパイク案と後から比べてみて、すっげぇ悔しい気持ちになったもんなぁ。



「うふふ、そう言ってくれるのは助かるやら困るやらねぇ……あなた、魔導生物技術の研究は、ユージさん達にお任せした方がいいんじゃないかしら」


「うん、そうだね。きっとその方が、もっと良い魔導生物が創造出来るだろう。紋繰騎(クレストレース)の改良もそうだが、ユージ君、アイカさん、宜しく頼むよ」


「分かりましたっ、任せてください! ゆう君、紋繰騎(クレストレース)の改良と強化に、魔導生物もどんどん絡めていくわよ!」



 なんだなんだ、特に変わったお願いとか言葉ってわけでもないのに、藍華が突然テンション上げて気合い入れてるけど、何がどうしてそうなってんだ?



「なんでそんな急に乗り気になってんだよ」


「だって! エンペリオンの時にはもう操られてて造れなかったし思い付けもしなかった……オプション装備とか変形合体が出来るかもしれないのよ! そんなの燃えるしかないじゃないっ!」



 うっ……そ、そいつぁ確かに魅力的だっ!


 普通はオプション装備って言えば、防御力強化の追加装甲とか、攻撃力強化の大出力な大型武器とか、速度強化の巨大バックパックスラスターとかだろう。


 でも魔導生物技術なら、そういうリアルロボット寄りな物だけじゃなく、スーパーロボット寄りの奇想天外な装備だって造れる!!


 しかも、今は紋繰騎(クレストレース)に備わってる唯一の操作系、騎導紋(ガイスト)の特性でどうしても避けられない、“人型からの形状変更が不可能”って問題も、魔導生物を変形合体のパーツに使えれば、克服出来るかもしれない!



 ……まぁ、騎導紋(ガイスト)から別な操作系に造り変えて、適合の問題を解決するのが優先だけどな。



 それはともかく、紋繰騎(クレストレース)と魔導生物の組み合わせでどんな改良が出来るか、楽しみだ!



「あーあ、なんだかんだ言って、結局ユージ君とアイカさんが乗りと勢いで、侯爵様のお仕事を増やしちゃうみたいだね。ボクと爺ちゃんも、しばらく忙しい日が続くんだろうなぁ」


「まぁまぁ、いいじゃありませんか。ああしてユージさんがやりたい事を楽しんで取り組む、それだけで私達騎装士(スキナー)紋繰騎(クレストレース)の為になりますし、それがひいては領内の人々やラクスター侯爵家の為にもなるんですから、ね」


「もしフィナさんが結婚したら、旦那さんを甘やかすお嫁さんになりそうだよ」


「なっ!? ななな、何を急に……私とユージさんは、別にまだそんな間柄じゃ……」


「ボクは結婚したらって言っただけで、ユージ君とだなんて言ってないんだけどなー」



 うん?


 なんかフィナ達がワイワイ騒いでるけど、面白い案でも出たのか?


 藍華に情報共有させたし、みんなで一緒に色々考て誰かがいい案出してくれたのかもしれないな。



「フィナ、ルーナ、なんか思い付いたのか?」


「えっ! ……えぇと、その……」


「あのね、ユージ君。アイカさんと楽しそうにしてるのはいいけど、侯爵様のお仕事が増えちゃうよ?それはいいの?」



 あー、それはなぁ……。


 正直な話、ラクスター家の問題と領内の問題、両方を解決する為にはやらなきゃいけない事ばっかだし、アールさんの仕事が増えるのは仕方ないっちゃ仕方ないんだけど――


「レウルーナちゃん、と呼んでもいいかな?」


「は、はいっ! なんでしょうっ!」


「あぁいや、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。それでだ、私がラクスター家の当主である以上、その仕事が増えるのは避けて通れない。ならせめて、ユージ君達には不自由なくのびのびと、紋繰騎(クレストレース)の改良や魔導生物技術の研究を進めてほしいんだ。もちろん、レウルーナちゃんの魔導具造りもだ」


「ボクもですか!?」


「そう、君もだ。繰り返しになるけれど、私達はユージ君達を信頼し、そして期待しているからね」


――オレ達がアールさんの仕事を増やしちまうからには、その苦労に釣り合う……いや、それ以上の成果を出す!



 一蓮托生、持ちつ持たれつ、困った時はお互い様……。


 そういう言葉を誰にでも安易に口走るつもりはないけど、それだけ強く信頼されてるんなら、こっちも真正面から受け止めるさ。



「ゆう君、そろそろ領都に着くわよ。このままじゃ駐騎所には入れないから、一旦外壁近くで止まるね」


「あいよ。なら藍華はそこで一度、アリス達の馬車に隠れてくれ。んで爺さん、騎体を全部駐騎所に納めたら、整備より先に錬金師のとこに案内頼むよ。こういうのは、さっさと片付けるに限るからな」


「分かった。ルーナ、整備は任せるぞ」


「うん! ボクに任せてっ!」



 さーてと、問題も課題も山積みだけど、そいつは一つ一つしっかり解決していけばいい。


 その為にも、錬金師は必ず味方に引っ張りこんでみせるぜ!


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