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帰り道での話し合い


「いやはやまったく、魔導生物でこんな乗り物をあっさり造ってしまうなんて、本当にユージ君はすごいねぇ!」


「いやその、オレ一人で造ったわけじゃ……」


「しかも! その上だ! 初代様から代々受け継いできたけれど、父が実物を守るだけで精一杯になって、過去の記録も使い方も全て喪われたはずの、古代魔導文明時代の遺産! それもちゃんと使いこなしている!! これぞまさに奇跡だ!!! それにしてもまさか、スライムにこんな使い方が……」


「えっ~と、フェリエルさん……」


「ごめんなさいね、ユージさん。この人ったら今みたいに興奮し過ぎると、お喋りの歯止めが効かなくなっちゃうのよ」



 いや、うん。


 侯爵さんは、オレとは畑違いだけど同じ 趣味人(フリークス) らしいし、好きな分野について語り始めたら止まらないってのは、よぉ~っく分かるんだ。


 けどさ、フェリエルさん。


 わざわざそっちに話振ったのは、謝ってほしいからじゃなくて、旦那さんを止めてほしいからなんだよ。


 ……でもこの感じだと多分一度スイッチ入ったら、例え奥さんでも止められないんだろうなぁ。



「……仕方ないわね。ユージさん、侯爵の代理である私で申し訳ないですけれど、話を進めさせて頂きますね」


「あー、この場なら貴族としてのアレコレには問題ないと思うんで、お願いします」



 オレ達は今、領都に戻ってる真っ最中。


 アルゴーレを含む 紋繰騎(クレストレース) を六騎も積んだ大型運搬台車六台プラス、アリス達や侯爵さん達が乗ってた馬車二台が連結されて、この世界じゃ全長も総重量も怪物級な乗り物になってかなり遅いけど、それでも騎馬の全力よりちょい速くらいは出ている、エアクッションモードだ。


 オレ達のやり取りを知らない誰かに見られる事はないし、ここに居るのはお互いに命を預け合って一緒に戦った仲間達だけ。


 情報が漏れる心配なんてないからな。



「まず最初は、お礼からね。ユージさん、私達の娘に出会ってから今まで、色々と助けてくださって、本当にありがとうございます」


「いや、それはお互い様ってとこもあるんで、ちょっと話が長くなるんですけど、聞いてもらえます?」


「えぇ、もちろんです」



 で、オレは少し長い自己紹介を改めてして、今までとこれからの状況もきっちり伝えた。


 なんせ、この世界の女神様に転生させられてからこっちは、情報も伝手も何もかも、ほぼないない尽くしだったんだ。


 そんな時に、タイミングが合ったから少し手助けしたっつっても、いきなり見ず知らずな奴を信用して同行させてくれたんだし、お返しくらいには協力するさ。


 まぁそのおかげで 紋繰騎(クレストレース) は五騎も手に入ったし、 騎装士(スキナー) の五人娘とか 造師(ビルダー) の爺さんや魔導具を造れるルーナに、同じ畑の 趣味人(フリークス) なトリィや転生者の藍華とも出会えた。


 代わりに、かなりデカくてヤバい厄介事も抱え込んじまったけどな。


 ただ、ここまで深くアリス達と関わっちまったし、流れのままに巻き込んじまった。


 その上でオレには 紋繰騎(クレストレース) の改良に、エンペリオンコアや古代魔導文明時代の厄ネタに作物の話と、やりたい事とかやるべき事も山ほどある。


 こんな厄介で面倒でヤバい状況で、それでもアリス達は味方でいてくれるんだ。


 なら、お礼はむしろ、オレが言うべきだろ。



「……まぁなんつーか、オレもみんなにはかなり助けられてるんで、ホント感謝してます」


「あらあら、こちらがお礼を言う立場なのに、逆に感謝されてしまうなんて。アリスちゃん、ユージさんはとても素敵な殿方のようね」


「はいっ! とっても!!」



 うぐ……。


 ここまでいい笑顔でストレートにベタ褒めされても、オレには返せる言葉がねぇんだよな。


 しかも、まだテンション高い侯爵さん以外のみんなが揃って頷くとか、なにこの公開処刑……。


 すっげぇこっ恥ずかしいっての!



「あー……その、今後の予定とかラクスター侯爵家との連携とか、他にも色々と話し合いたいネタがあるんですけど、そっちはどうします?」



 ちくしょう……無理矢理でも話題変えなきゃ恥ずかしかったのは事実だけど、だからってみんなして微笑ましいもの見る目を向けるなっ!


 んでアリスっ!


 お前クスクス笑ってんじゃねぇ!!


 フェリエルさんっ、何とかしてくれよっ!



「そうねぇ……あなた! アール! そろそろこっちに戻ってきてくださらないかしら!」


「……っ! エル、呼んだかい?」



 えぇぇー……。


 きちんと声かけたら、普通に戻ってくるのかよ!



 だったらなんでーー


「ユージさん。あの人、アールは一度ああなったら止まらないけれど、それでも永遠に喋り続けるなんて無理なのよ。だから後は、ねっ」


「はぁ……」


ーーさいで。



 そりゃまぁ、いくら好きな分野でもずっとハイテンションで語るのは疲れるし、後は限界見極めていいタイミングで止めりゃいいんだろうけどさぁ。


 そうやって目線でオレの思考が読めるならせめて、せめてオレが恥かく前にやってほしかったよ……。



「あなた、ユージさんのお話は後で教えてさしあげますから、私達侯爵家としての誠意を伝えてくださるかしら?」


「あぁ、いつもすまないね、エル。さて、ユージ君。我がラクスター侯爵家は、君と君の発言や行動の全てに対し、貴族としての責任をもって全面的に支持し、また必ず協力する。約束しよう」



 おいおい、突然とんでもない約束が出たぞ。


 いいのかよ、侯爵家っていう上級貴族が全部の話も聞かないまんまで、まだ知り合って間もない根無し草な旅人身分のオレ相手に、口頭だとしてもそんな重い約束持ち出すなんてさ。



「あの、そんな簡単に……」


「いいや、簡単ではないよ。先に領都へ来ていたトリアーボ君とゴロンゴ殿から、可能な限り話は聞いていてね。その上、今回の掃討作戦での活躍に、 紋繰騎(クレストレース) の改良や魔導生物の活用まで加わるんだ」



 なるほどな。


 トリィと爺さんから話を聞いたなら、実はこの二人って出発前にはオレの正体を知ってた、と。


 んで、ナーキスまでの話プラス、ラクスター侯爵家として出せる功績への褒美、ってとこか。


 ただ、ちょっと出し過ぎだと思うけどな。



「それとだ。君がまだ全てを話していないように、我がラクスター領でもまだ君の知らない問題が色々とある。それらを加味した上で私達は君と手を組むと決めたんだよ」



 あぁ、こういうとこはやっぱ、人の上に立って政治とか経済とかを回す、指導者って奴なんだな。


 先見性っつーか、将来性っつーか、そういうとこまで見据えて計算してるらしい。


 上級貴族の当主ってきっと、かなり高い能力が求められるんだろうな。



「まぁ、そういった煩わしい事を抜きにしても、君とは仲良くしたいんだ」



 はぁ……最後にそんな、どう考えても貴族らしくない言葉でとどめとか、ズルいよなぁ。



「……よろしくお願いします」


「それはこちらこそだよ、ユージ君」


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