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レギオンマンティス掃討作戦 1


 片っ端から斬り飛ばして、刺し貫いて、蹴って殴って、叩き潰す。


 群れに接触した瞬間から、ただひたすらにそれだけを繰り返す。



 相手は魔獣レギオンマンティス、藍華が初撃に放った強烈な雷属性魔法のおかげで、物理攻撃が届くような手近で生き残ってるのはどれも麻痺したまんまな個体だけの、据え物斬りもいいとこだ。


 それでも、武器とか騎体の不必要な消耗を避ける為に、狙いは頭部をピンポイントで切断か破壊するだけに絞ってる。



 だけど、それにしたって――


『ふんっ! ……数が、多過ぎねぇかっ』


『やっ! はっ! えいっ! そっ、そうですねっ、おかしいですっ!』


――最初っからキルスコアは気にしないつもりだったし、そんなの数えてるヒマもねぇから考えないようにしてたんだけど、そろそろ無視を決め込むのも限界だ。



 交戦開始からこれまでの討伐数はもう、数十とかはとっくに超えてるはず。


 藍華達が今担当してるのは、魔法で分断された内の少数側で、多数側を攻撃してるオレ達二人の背後に取り残された奴らだ。


 そして、そろそろあっちの残党狩りも終わりそうなのに、その間にもオレ達だって休みなく討伐し続けてるのに、全体数が減ってる気がしねぇ。



「「「「【炎槍】」」」」


「「「「【雷槍】」」」」


「【追尾炎弾】……百連射っ! ゆう君っ、こっち終わったわよっ!」



 あれこれウダウダ考えてる内に、とうとう藍華達がこっちの攻勢にも参加してきたか。



『了解だ! エリナっ、武器の調子はどうだっ?』


『たぁっ! ふっ! ……武器より先にっ、地面の状態が悪くなって、きてますっ!』



 そりゃそうだ、さっきから狙いは最小限に絞ってるけど、それでも奴らの死骸から垂れ流されるかなりの量の体液で、草の少ない土剥き出しの地面は、あちこち 泥濘(ぬかるみ) と水たまりだらけになってる。


 エリナの騎体は今のところ問題なさそうだし、両手に持ってる双剣もまだいけそうなんだけど、アルゴーレでやってる 長重槍(ロングヘヴィランス) の長さと重さを活かした、振り下ろしの刺突とか叩き潰しとは違って、軽い剣で斬ったり刺したりするなら、踏み込みの勢いがより重要だからな。


 これほど数が多くなけりゃ、よっぽど油断しない限りは陥らない状況って事だ。



『よし、じゃあそろそろ戦場を変えるぞ。藍華、オレが探索魔法で周囲を探るから、それが終わるまではエリナの支援、行き先を指示したらその方向に火力を集中させてくれ』


「オッケー!」


(【探索】……なにっ!?)



 こいつは一体、どういうこった!?



『藍華っ、この群れなんかおかしいぞっ!』


「どういう事っ?」


『女王がどこにもいないっ! もう探索魔法の範囲内に群れ全体を捉えてるのに、それらしい奴がいないんだっ!』


「なんですってっ!? じゃ、じゃあ群れ全体の動きはっ!?」


『相変わらず統率が取れてるっ! 女王を失ったようには見えないっ!』



 なんだよこれ、一体どうなってる!?



「ならどうするのっ?」


『とにかく戦場を移すぞ! オレとエリナも魔法攻撃に切り替えるから、この群れを中心に反時計回りで移動しながら撃ちまくれ!』


「分かったわっ! みんなっ、ちゃんと掴まっててねっ!」


『エリナっ、藍華から予備の 魔法戦杖(バトルスタッフ) を受け取れ! 動きながらだし狙いは大雑把でいい、オレ達の移動を邪魔されないように牽制するんだ!』


『了解っ!』



 よしっ、まだなんとか出来る!


 今すぐ女王が群れの中に見当たらなくても、これだけの数を抑えて前に進ませなけりゃガルバの街は守れるし、後追いになった本隊だって必ず加勢に来てくれる。



『【雷槍】っ! ……藍華っ、さっきの雷属性魔法はもう無理かっ?』


「ごめんなさいっ、私達もかなり魔力を使ってて、そこまで魔晶供給が回せないのっ……このっ、邪魔しないでよっ……【球炎】っ!」



 そうか、もう他のみんなが使ってる 魔法戦杖(バトルスタッフ) は、魔石の魔力残量が無いんだな。


 普通なら、 紋繰騎(クレストレース) 九騎分に相当する魔法火力があれば、大抵の魔獣はとっくに討伐出来てるだろうし、同じ騎数で物理攻撃も加えるなら、もっと長時間スマートに戦えてるはずだ。


 でも、オレ達の編成は物理攻撃二騎に魔法攻撃九騎分で、言われるまでもなく明らかに偏ってる。


 もちろん、この編成で助かったとは思っちゃいるけど、手数が足りない事実は変わらねぇ。


 魔晶っていう魔力供給源があるから、こんなに偏った少数戦力でもまだまともに戦えてるけど、今後はもっと魔力の貯蔵手段もしっかり整えないと、いつかどこかで躓くかもな。



 って、んな事より移動した先でも上手く立ち回らねぇと――


「……来ましたっ! ヒューガ様っ、領主様の紋繰騎隊から伝令光弾っ、これより全騎攻勢に参加する、とのことっ!」


――よっしゃあっ、これでまだまだいけるっ!



『ありがとっフィラードさんっ! 藍華っ、オレ達はもうちょい回り込んで、挟み撃ちの状況に持ち込むぞっ!』


「でっ、でも女王は……」


『そっちはポジションに着いたら、もう一回探索すっから!』


「分かったわっ! なら加速するわよっ!」


『おぅっ!』



 よしよーしっ、これで十九騎分の物理と魔法の両方の攻撃力が整うっ!


 しかも加勢してくれるのはオレや藍華と違って、これまで山ほど魔獣を討伐してきた、対魔獣戦闘のスペシャリスト揃いだろうしな。



 いいぞっ、これでかなり戦闘に余裕が――


「ヒューガ様っ! 南方を偵察中の巡回騎馬隊よりの伝令光弾を確認っ! 魔獣を多数発見、救援要請も出ましたっ!」


『なにっ!?』


――おいおいっ、ここに来てまた別な群れかよっ!



「まさかっ! レギオンマンティスが、群れを分けてたのっ!?」



 こっちの群れには女王がいないんだし、その予想は十分あり得る話だなっ!



『……くそっ! 虫のくせして、変に戦術じみた事しやがってっ!』


「ゆう君っ、どうしようっ!」


『……みんなとエリナは、このまま本隊と包囲網を維持しろ』


『そんなっ! ユージさん一人で行くなんて無茶ですよっ!』


『でもやらなきゃ街がやべぇ! アルゴーレでオレが全力出して走れば、足止めくらいは間に合わせられるはずだ!』



 悲壮感漂うヒロイズムに酔う趣味はねぇけどな、ここでやらなきゃ誰がやるってんだっ!



『いいかっ、オレがやるのはあくまで足止めだけだ! 本隊にある程度任せられるようになったら、こっちの加勢に来てくれよっ!』


「あーもぉっ! 分かったわよぉっ! エリナちゃんっ、さっさとこっちの数を減らしましょうっ!」


『りょっ、了解っ!』



 さぁいくぜっ、虫共とその女王様よぉっ!


 めんどくせぇ状況にしやがった分、この借りはたっぷりノシ付けて返してやるからなぁっ!


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