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ガルバへ


「ゆう君、見つかった?」


「いや、まだ先行隊は探索魔法に引っかからねぇ」


「そんな……」


「落ち着けよアリス、ガルバの街にはちゃんと近付いてるんだ、心配すんな」


「はい……」



 領都から出発したオレ達は今出せる全速力で、ガルバの街に向かう街道沿いを突っ走ってるんだけど、もう何回も使ってる探索魔法には、先行した紋繰騎隊はまだ捉えられていない。


 研究所から領都に来るまでより、荷物が増えて速度が落ちてるから、合流が遅れてるんだ。


 それでも先行隊が魔獣の群れに追い付くより、かなり早く出会えるはずだけどな。



「【探索】……ん? ……【遠視】……あれは魔獣だな、ゴルウルフが五匹」


「こっちに来そうなのっ?」


「いや、領都方面に向かって逃げてるけど、あっちの冒険者に任せて大丈夫だろ」



 あの必死そうな様子だと、レギオンマンティスの群れに遭遇して、命からがら逃げて来たのか。


 出発前にトリィから聞いた話だと、魔獣の群れが移動してる時は、その群れより弱い魔獣が逃げ散って、周辺地域の魔獣の活動範囲とか種類が大幅に変化する事もよくあるそうだ。


 そして、その一番デカい規模がスタンピード、けど今回はそこまで大事にはならないらしい。


 まぁ、何事にも絶対ってのはないから、油断大敵だけどな。



「【探索】……おっ……よしっ! よしよしよーし! 先行隊の最後尾を発見したぜっ!」


「本当ですかっ! よかった……」


「……向こうもこっちに気付いたな」



 って、さっさとこっちから連絡しないと、下手に警戒させたら余計な手間取らせちまう。



「んじゃ早速……【遠話】……」


『おっ、おいっ! 後ろからっ、後ろから何か来るぞっ!』


『何かって……なんだ、あれは……っ!』


『紋繰騎用のっ、大型運搬台車か、あれ!?』


『そんな馬鹿なっ! こっちだって全速力で動いてるんだぞっ! なのに同じ台車でなんであの速さになるんだっ!』



 ありゃ、領都付近で周囲の偵察してた巡回騎馬隊の人達と、似たような反応になっちまったな。



「あー、前方を移動中の紋繰騎隊、聞こえるか。こちらは後方より接近中の大型運搬台車。繰り返す、こちらは後方より接近中の大型運搬台車だ。前方の紋繰騎隊、誰か答えてくれ」


「ねぇアイカさん、ユージ君って何だかこういうやり取り手慣れてるみたいだけど、どうしてなのかな?」


「それはね、ゆう君や私が好む物語だと、こんな会話がちょくちょく出るからなのよ」


「うーん? それだけで、こんなにしっかり受け答え出来るの?」


「上手い下手は人それぞれだけど、私だってそれなりにこういう会話も出来るから、ルーナちゃんにも今度教えてあげるね」



 おいおい、同じ趣味人として理解はするけど、だからってルーナを無理矢理こっちの沼に引きずり込むのは、さすがにダメだろ。



「こら藍華、ルーナを染めるのは……」


『後方の大型運搬台車、こちらはラクスター家所属紋繰騎隊だ。何用か?』


「おっと……こちらは領都駐騎所から出発した、ユージ・ヒューガだ。オレ達もこれから、レギオンマンティス掃討作戦に参加する」


『それは私では判断出来ん、領主様にお伝えするのでしばし待たれよ』



 んー、巡回騎馬隊分隊長のラムガさんはオレの事知ってたけど、紋繰騎隊は知らされてないのか?


 それとも聞いてはいても、一応の手続きとして領主様に取り次ぐってだけなのか?


 まぁ、どっちにしても作戦参加は決定だから、向こうが断っても先に行くけどな。



「待つのはいいけど、こっちはこの速さだ。このままだと先行隊を追い抜きそうだし、なるべく急ぎで頼むよ」


『りょ、了解した! おいっ、急ぎ領主様にお伝えしろっ! 後方より、ユージ・ヒューガ様が参られた、信じられない速さだ、となっ!』



 あーなるほど、来るって聞かされてはいたけど、まさかこんなに早いなんて半信半疑ってか。


 さてと、それはともかく藍華の存在は出来るだけ秘密にしときたいし、ダイレクトリンクで減速指示しとくか。



『先行隊に近付いたら、なるべく向こうに速度合わせてくれ』


『それはいいけど、どっちも急ぎなんだから、こういう時は電話が欲しくなるわ。有線タイプは工夫して魔導具造って普及させたけど、無線方式は無いのよね』


『無線方式は有線と違って、通信先端末の指定とか通信電波の暗号化とか、色々と複雑で難しいからなぁ』



 まだ地球に居た頃、有線と無線の両方でそれぞれ操縦出来るロボット造った事あるけど、無線用の電子回路も自作しようとしてかなり苦戦したし、そういう概念すら無いこの世界だと、もっと大変なんだろうな。


 それなのに、無線よりはまだ簡単つっても有線タイプの電話造って普及までさせたなんて、当時の地位はともかく藍華はホントすげぇ奴だよ。



『もしかしてゆう君って、無線関連の技術にも詳しいのっ?』


『自作ロボット組んでる時に、ちょっとかじった程度だな』


『なら今度一緒に、無線通信用の魔導具造りましょ! それで完成したら、もちろん 紋繰騎(クレストレース) にも搭載するのっ!』



 あちゃー、変なトコで妙なスイッチ入っちまったなぁ。


 んー……でも待てよ。


 もしこれで魔導レーダーユニットに加えて、専用の無線通信機能も実現出来れば、その先は確実により一層紋繰騎が便利になる。


 各騎同士の緊密な連携も、遠隔地にある拠点との迅速で正確な連絡も、更に技術を洗練すれば無線操縦式の完全無人騎だって、可能になるのか。


 こりゃあ、下手に紋繰騎の新しい武装を追加するより、相当有意義かもしれないな。



『……よし、決めた。今回の騒動が終わったら、無線通信の魔導具を試作しよう。んでその時は、ルーナもトリィも爺さんにも参加してもらおうぜ』


『わぁ、それ楽しそうっ! みんなでワイワイしながら色々造るのって、やっぱりいいわねっ!』



 そうか、藍華は昔も自分一人から始めて色んな物造って世の中便利にして、どんどん大勢の人達を惹き付けながらいいサイクルを回してたんだな。


 なのにそれを、人でなしなクソバカ野郎に全部台無しにされて、強引に魔法で戦う為だけの奴隷にされて、こんな箱の中に魂だけ閉じ込められて、それでもこうして物造りの楽しさと希望は、これっぽっちも失っちゃいないんだ。


 なら、オレは会った事なんか一度もないし、直接的な恨み辛みだって今のところ何一つないけどさ、必ずルカールのクソ野郎は仕留める。


 オレ達全員の邪魔になるなら、魔獣も人も組織も国も……相手が何でも構わねぇ、全力で排除してやるよ。


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