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出発前のひと揉め


「ダ・メ・だ! アリス達は領都に居残りっ、行くのはオレと藍華とエリナだけ! 戦場に非戦闘員を連れてくなんて、危険過ぎるんだよっ!」


「私達は非戦闘員じゃありませんっ! 全員何かしら魔法が使えますしっ、ハウザーさんとイレーヌさんとミトは武器で戦う事だって出来ますっ!」


「いーやっ、非戦闘員だね! もう 紋繰騎(クレストレース) の予備は無いし、有ってもミト以外は乗れねぇんだ! なのに人間が使う魔法とか武器が届く範囲に、生身で行かせるわけねぇだろっ!」



 はぁ……。


 なんで出発直前になってオレ達は、こんな不毛な言い争いしてるんだろうな。


 今の状況は、単体とか少数の魔獣を倒せばそれでいい、そんな狩りみたいなもんじゃねぇ。


 敵は馬と同じサイズの魔獣の群れ、デカいせいで単体でも結構タフだろうから、 紋繰騎(クレストレース) で繰り出す高威力の攻撃でなきゃ、一撃必殺は難しいはず。


 なのに、そんな厄介な奴が数十~百以上いる戦場で、一体倒すのにモタモタしてたら、あっという間に囲まれてあっさり殺られちまう。



 アリスにそれが解らないはずがねぇんだけど――


「でっ、でもお父様もお母様だって紋繰騎は使えませんけど、街や村に住む人達の為に戦いに行ったんですっ! それなら私達だってっ!」


――領都に居残るのを頑なに拒む理由が、これだ。



 領主の娘としてなのか、でなきゃ貴族としてか、相当に強い責任感がアリスを突き動かしてる。


 つか今初めて知ったけど、アリスだけじゃなく両親も、 紋繰騎(クレストレース) への適合は無いのか。


 ひょっとして、あの超能力が影響してるとか……って、そんな事よりまずは説得からだ。



「……あのな、よく考えてみろ。ラクスター侯爵は領主でこの領地の責任者、つまりこういう状況だと戦場では指揮官だ。んで、その奥さんは領主の次に偉い立場の、いわば副指揮官だ。どっちも先行した紋繰騎隊には必要、それは解るよな」


「はい、だから私も二人の娘として……」


「けどな、アリスの役割は違う。お前は領主の一人娘で侯爵家の次期当主だ。こんな事言いたくねぇけど、もし両親に万一があったら次の領主として、領地と侯爵家を守らなきゃならないんだ」


「そ、それはそうです、けど……」


「えーっと……話の途中で悪いんだけどユージ君、ちょっといいかな」



 なんだよルーナ、そっちは台車に紋繰騎用の武装を満載するよう、指示しただろ。


 つか、一緒に作業するよう頼んで離れてた、藍華までこっちに戻ってきたのか。



「どうした、何かあったか?」


「うん、少し相談があるんだ」


「そうか、分かった。アリス、ちょっとここで待っててくれ」


「はい……」


「そんな顔すんなよ、黙って出発したりはしないから」



 あーもう、時間に余裕がないってのに、出る前に問題が起きたって嘆くべきか、それとも現場に行く前に対処出来るって安心するべきか……。


 ん、三人で話すからオレだけじゃなく、ルーナも同時にダイレクトリンクするんだな。


 さて、一体どんな問題やら。



『で、何か問題か?』


『うん、このまま私とゆう君とエリナちゃんだけで向かっても、大幅な火力向上にはならないって分かったのよ』



 どういう事だ?


 オレが事前に提案したのは、オレとエリナは 紋繰騎(クレストレース) で戦って、藍華は積み込んだ武装で遠距離攻撃を連射して援護する、そんなプランだ。


 まぁぶっちゃけ、剣と魔法のファンタジー世界らしい戦い方、物理系の前衛二人と魔法系の後衛一人で組んだ、単なるパーティー戦法だけどな。


 っつっても、今のところ二騎だけの改良騎を持ってるオレとエリナの二人で戦うより、積み込んだ武装の手数と、エアクッションモードの素早さを活かした、かなり効果的な戦法のはずだぞ。



『それなんだけどね、ユージ君も魔法を発動する瞬間に唱えてる“ 命令言(トリガーワード) ”って、紋繰騎用の武装だと暴発を防ぐ為に必ず必要なんだよ』


『暴発防止に必須……って事はまさか……』



 山ほど積んだこの武装、藍華一人じゃ一回の魔法攻撃で一つしか使えないのか!?


 なんてこった、武装に付いてる魔石が空っぽになっても、魔力を直接供給すれば魔法攻撃し放題って考えてたのに、これじゃ火力激減だ。



 いや、待てよ……。



『なぁ、藍華……エンペリオンは広域制圧殲滅兵器だよな』


『えぇ、そうね』


『ならさ、色んな攻撃魔法用の武装も装備してたんだし、コアの性能で解決出来るはずだろ?』



 エンペリオンはその兵器カテゴリに相応しいって言ったら物騒だけど、とにかくしこたま攻撃魔法用の武装を装備してたんだ。



 なら、その中枢だったコアの性能ゴリ押しで――


『コンセプトが違うから無理よ。エンペリオンやセンチネリオンは、補給が期待出来ない敵地で、可能な限り戦闘を継続する為に、あれだけ大量に武装してただけなの』


『武装の統合制御システムとかは……』


『そんなの無いわよ。というか、私や周りの技術者達が片っ端から操り人形されてて、そういう高度なシステムを造れるわけないでしょ』


――ルっ、ルカールのクソバカ野郎っ!



 なんでこんな中途半端な代物で世界征服とか異世界侵攻なんて、成功するって考えたんだよっ!


 ホンっト、どこまでもろくでなしな奴だなっ!



 くそっ、どうするか。


 到着するまでに武装の実行式を改良するなんて時間はねぇし、エンペリオンコアに統合制御システムを組み込むなんて、もっと無理だ。



 どうする、一体どうすればいい――


『ねぇユージ君、ボク達も一緒に連れて行ってよ』


『それは……』


『ルーナちゃん、アリスちゃん、ハウザーさん、イレーヌさん、ミトリエちゃん、トリアーボさん、ゴロンゴさん……ついでにフィラードさん、これで八人分、私も含めたら九人分の高火力な魔法攻撃が手に入るわよ』


――くっ、確かにその提案は魅力的だ。



『けどよ、もしみんなに何かあったら……』


『そうならないように、群れとの距離は一定以上に保つし、もし囲まれそうになったら一気に離脱する、約束するわ』


『……私達は対等な立場の仲間、そう言ってくれたのはユージさん、貴方ですよ』


『なっ!? アリス、お前……』


『アリスちゃんがこっそりダイレクトリンクして最初から聞いてるって、今ようやく気付いたのね』



 藍華も、それにイタズラ成功みたいな笑顔のルーナも、最初からアリスに気付いてたのかよ。


 あぁ、ちくしょう……村とか街とか大勢の人達の命がヤバいって聞いて、無意識に心の余裕が無かったんだな、オレは。



「あーっ、分かったよっ! もう悩むのは止めだ止めっ!」



 こうなったら全員で殴り込みに行って、魔獣の群れなんざ蹴散らしてやらぁっ!


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