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魔晶の持つ可能性 前編


 つかこいつまさか、魔晶の性質を活かしたエンジンみたいに動く内燃機関でも造れ、なんて言うつもりか?



 一応は種類によるけど、はっきり言ってエンジンとロボットの相性は、最悪だぞ。


 車両系の移動手段を持つタイプなら、車とか戦車みたいな使い方も出来るけど、脚で歩くタイプだとエネルギー効率が極端に悪くなるんだ。


 回転か往復の運動エネルギーで発電して、そこから駆動系に電力を供給するから、エンジンと燃料の重量に各種ロスも合わせた以上の駆動力を生み出す電力が必要だし、大きくて重くて複雑な動力源はそれだけで、開発から保守整備まで全てに負担がかかる。


 そんな面倒な代物をわざわざ造って、空きスペースの余裕が無い紋繰騎(クレストレース)に載せるなんて、考えるだけ無駄ってもんだろ。



 そして何より、紋繰騎に必要なエネルギーは魔力だ。


 魔晶が爆発する性質から魔力を発生させたり、でなきゃ電力から魔力に変換したりだなんて、オレじゃ方法すら思い付かねぇ。



 ……ただなぁ、聞いてて思ったんだけど、藍華の持ってる発想力はすげぇんだよな。


 アニメに漫画、ゲームにラノベと、色んな元ネタ有りだけど、エンペリオンとセンチネリオンの為に、全体の重量を軽くしつつ、複雑化しないように全く別な複数の機能を重複させた、そんな補助駆動系を思い付いてるくらいだ。


 今回だって何かとんでもない発想があるかもしれねぇし、とりあえず話聞くだけ聞いてみるか。



「んで、魔晶が持ってる爆発する性質なんて、何をどうやって動力源に活かすんだ?」


「まず最初に言っとくけど、魔晶が爆発する性質、それはゆう君の勘違いよ。あの時起きた爆発事故はね、周囲に有った魔導具が暴走した結果なの。そして、魔導具の暴走を引き起こした魔晶の隠された性質は、魔力への還元だと推測してるわ」


「魔力への還元?」


「そうよ。地中から採掘された魔晶は、長い年月を経て結晶化してるから鉱物として安定した物質、だから魔力が殆ど入らないんだけど、見方を変えればそれって魔力がほぼ一杯に詰まっているからもう追加出来ない、私はそう予想して魔晶を魔力に還元出来るか、実験してたの」


「なるほどな。で、それを証明して魔晶を魔力に還元出来れば、紋繰騎で使えるスライム用の魔力を賄える、ってわけか」



 にしても、周囲にある魔導具の暴走を引き起こすほどの魔力、か……。


 電気使ってる機器の暴走だったら、電磁波の影響か、ハッキング、でなきゃ電力の過剰供給が原因なんだけどな。


 魔力ってのは、ホント不思議エネルギー源だな。


 でもこの仮説が正しけりゃ、今は安価で使い道の少ない魔晶も、有望なエネルギー資源になる。


 その実証データと 紋繰騎(クレストレース) の改良と新しい魔導具、こりゃあいい取引材料になりそうだ。



「それで、実験中に使ってた魔晶の量は、どのくらいだったんだ?」


「細かな粉末に砕いた状態で、5gよ」


「はぁっ!?」



 おいおい、それマジか。


 だとしたら、むしろヤバいネタだろ。


 たったそれっぽっちの量で、建物中の魔導具を暴走させるレベルの魔力を生むとか、直接爆発はしなくてもかなりの危険物じゃねぇか!



 ……でもよく考えてみりゃ、地球上にあった化石燃料みたいに、直接燃えたり爆発したりはしないんだよな。


 しかもだ、結晶化して鉱物のまま安定した状態なら、核物質みたいな毒性だって無い。


 後は、周囲に影響しないよう安全に扱えるなら、ひょっとしてイケる……のか?



 ってそれよりも、ちょっと待てよ。



「なぁ、藍華が魔晶を発見してその性質を予想してから、もう千五百年以上経ってるよな?」


「そうね」


「なら、ルカールのクソ野郎とか、魔導具関連の協会牛耳ってたフレメルト家の連中とか、他にもこの世界の誰かが、それに気付いてるはずじゃねぇのか?」



 そう、魔晶が発見されて利用法が確立してからそれだけの年月が過ぎてるんだし、新しい使い道が見つかる切欠は、星の数ほどあったはずだ。



「そう言われてみれば……」


「けど少なくとも、ルーナからはそんな技術とか、それを利用した魔導具の話なんて、今まで聞いてねぇんだよ」


「もしかして、この事もまたルカールの奴が……」


「いや、さすがに何でもかんでも野郎のせいってわけじゃ……」


「お邪魔しまーす!」



 うぉっ!!


 二人で真剣に話し合ってたら、いきなり勢いよくドア開いて乱入されたから、ちょっとビックリした!



「ル、ルーナちゃんっ! いきなり入ったら失礼だよっ!!」


「だいじょぶだいじょぶ、ユージ君はこのくらいじゃ怒らないから」



 ……ってなんだ、ルーナとエリナか。



「もう……あの、お邪魔しますね、ユージさん」


「おぅ、二人とも騎体の整備が終わったのか。ならルーナに聞きたい事あるし、ちょうどいいや」


「なになに?」


「魔晶なんだけどな、魔導具の部品とか実行式の記録以外で、新しい使い道って知ってるか?」


「うーん?」



 ルーナは勉強熱心な努力家だから、魔導具についてもかなり詳しいはずだけど、こうやってうんうん唸りながら悩むくらいだし、やっぱそんな技術なんてないのか?


 そうでなきゃちょいとヒントでも出さないと、思い出せないのかもしれねぇな。



「例えばさ、魔晶の形を整える途中に出る、削った粉を使ってる物とか、なんかないか?」


「粉? ……んー、そういえばユージ君には魔晶の加工手順って、説明した覚えないね。ずっと昔からそうなんだけど、魔晶を削る時には粉って一切出ないんだよ」


「は? 魔晶は鉱物としてはかなり硬いって、ルーナから聞いたはずだけど、削る時に粉すら出ないって、どういうこった?」


「それはね、加工する時にまずは水刃を発生させる魔導具で大雑把にズバズバ切って、その後はずっと水研ぎで細かな整形をするからなんだよ」


「な……水流成形加工ウォーターフローシェイプ、だと……」



 オレが居た時代だと当たり前に使われてたけど、この世界の工業技術って、まだまだ未熟じゃなかったか?


 いや、逆に言えばまだ未熟な分野があるのは、魔法っていう便利な超常現象があるからだろうし、魔法が使われてるならこういう先進的な加工技術が突然現れる可能性も、あり得るのか?



「まぁ、これって魔晶だけじゃなくて他の宝石加工にも使われてるんだけど、その方が石に熱が伝わりにくくて品質を保ちやすいんだって。確か一番古い加工品は、古代魔導文明時代の物だよ」


「……あっ!」


「……おい藍華、お前今“あっ!”て言ったよな? 何か思い当たるんだろ、いやむしろ確実に心当たりあるよな?」


「えっと、ねぇ……」


「今すぐ、洗いざらい、全部吐け」


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