新たな技術 隠れた資源
「えぇっ!? 全部って、かなり大量にあるのよっ!? のんびり目を通してる暇なんて……」
「いやいや、そんなにゆったり楽しんでる時間なんて、今はねぇよ。ダイレクトリンクした後、神体に直接アップロードして、そこから紋繰騎に使えそうな部分をピックアップするんだ」
「あー、そうだった……ゆう君って、とんでもない身体だったわね」
「ついでに、正式起動してるエンペリオンコアでやれそうな事も、全部教えてくれ」
「はいはい、こうなったらとことん付き合うわ」
さってと、んじゃとりあえずは適当に書き込み許可領域を神体内にセットして、手っ取り早く遥か昔の超兵器を理解するか。
……ん、よしよし来たな。
「って、広域制圧殲滅兵器ねぇ。この世界で最強の生物を素材にして造って、藍華の知ってる地球上に有った全ての兵器を上回る戦力を手に入れる、か。こりゃあロボットの系統としては、スーパーロボット扱いだな」
「剣と魔法のファンタジー世界で、今まで概念すら無かった物なんだから、リアル系は無理だと思ってたんだけどねぇ」
「リビングアーマーとかゴーレムは?」
「それは完全に別系統よ。いわゆる魔法使いのお供、使い魔を創造する魔法が元になっててね、その実行式に手を加えて、素材とか命令内容ごとに分けたらああなったのよ。だから、量産されて規格化まである程度進んでる、紋繰騎は本当に凄いわ」
「ふーん……でもまぁ、紋繰騎は大昔の遺物を参考に出来て、全世界に需要があるんだから、そういう流れになるのは当然だと思うぜ。……って、メインの駆動系はドラゴンの筋肉だけど、補助駆動系が二系統、しかもこれ……」
脳内に取り入れたデータが示してるのは、補助駆動系として使われてる技術。
一つは紋繰騎にも流用されてる、騎導紋。
そしてもう一つ、こっちは意外だったんだけど、魔導生物のスライムが使われてた。
「あぁ、セカンダリーアシストに使ったスライムの事ね。アイディアを出した時点だと、骨格やメインの駆動系は未定だったんだけど、それでもアウタースキン再生時の熱問題ってバカにならなくてね。冷却用に魔法を使用すると魔力不足が起きそうだったし、ならいっそパワーアシストと冷却と衝撃吸収と駆動系や骨格の保護も兼ねちゃえ、って思い付いたのよ」
「はぁー、なるほどなぁ。普通の機械なら個別になる冷却系とか緩衝材を兼用させれば、かなり重量が軽くなるし構造も簡単になる、いいアイディアだな」
「これなら、アウタースキンを筋肉代わりにしてる紋繰騎にも活かせるし、駆動系が増えてパワーアップ、しかも防御力まで向上するわ」
うん……確かに、確かに藍華の言う通りだ。
ただし、別な問題が大きくなるんだよ。
「いいアイディアだけど、そのまま採用ってのは難しいな。魔導生物は魔力で創造されて、魔力で動く……でも紋繰騎の動力源は魔力量に限りがある魔石だ。それに加えて一騎分の全身をカバーするサイズのスライム、その為の魔力が騎体のどこにもねぇ」
「あー、今の世の中だと魔石がバッテリー代わりなのね。紋繰騎はまだ詳しくないから、動力源の情報にはまだ触れてなかったわ」
「だから、エンペリオンとかに使われてた動力源を活かしたいんだけど……」
「今すぐそのまま流用は無理よ、主に騎体サイズのせいでね」
「やっぱそうか……」
エンペリオンとセンチネリオンが、紋繰騎の三倍くらいの巨体な理由。
最初は、藍華のこだわりとか工業技術的なダウンサイジングが未熟とか、他にも色々と考えてたんだけどな。
この世界特有の不思議エネルギー源、魔力。
そいつがあれば、地球上じゃ考えられないくらいコンパクトで便利な道具が、科学的におかしいと思える魔法っていう超常現象が、あっさり簡単に実現出来る。
ところがだ、そんな万能エネルギーが身の回りに溢れてるのに、使う為の手段は今のところたったの二つ。
生物が魔法として使うか、魔獣の体内から得られる魔石を使うかだ。
前にルーナから聞いた限りじゃ、魔晶も一応は魔力が結晶化した物らしいけど、こっちは動力源としては使い物にならねぇ。
鉱物資源として地中から採掘される魔晶は、結晶化するまでに長い年月がかかるらしくって、その間に蓄積されてた魔力がほとんど無くなるそうだ。
じゃあ、“中身空っぽの魔晶に魔力を入れればいい”なんて、過去にどこかの誰かが思い付いて試したんだけど、物の見事に失敗したんだ。
なんでも、ほぼ同じサイズの魔石と比べて十分の一以下くらいしか魔力が入らなかった、そんな実験結果が残ってるんだとさ。
んで、多少なりと魔力を貯められたりよく通すし、鉱物としてはかなり硬くて物質的に安定してる性質から、魔導具の部品の一部だったり、実行式を書き込む記録媒体が、数少ない使い道だ。
そのせいなのか魔晶は、過程が違うとはいえ同じように魔力が結晶化した魔石よりも、安い。
「……っと、ちょいと話が逸れたけどそんな感じでな、それが原因の一つで紋繰騎は今以上のサイズに大型化するのは、正直言って無理なんだよ」
「なるほどねぇ。魔石が動力源だから、活かせるパワーと稼働時間の兼ね合いで、大きさが決まっちゃう、か」
「そういうこった」
……あー、なんかこうちょっとした切欠とかで、そこんとこブレイクスルー出来るような、いいアイディア出ねぇかなぁ。
「ねぇ、ゆう君。魔晶なんだけど、鉱物資源として採掘されるのとその性質ってね、帝国時代にも使われてたマギクリスタルそのものなのよ」
「ふぅん、その呼び方からするともしかして、藍華が見つけて使い道も考えたのか?」
「そうよ。それでね、その時に私にも思い付けた使い道は今と変わらないんだけど、性質を調べる実験中に失敗して報告できなかった、というか立場のせいで実験中止になって、調べようがなくなった性質が有るの」
「なんだそりゃ、まさか実験中に爆発事故でも起こしたか?」
「情けない話だけど、その通りよ。そのせいで実験棟一つが中の魔導具ごと全部ダメになっちゃったし、家族とか周りの家臣達には大目玉くらうしで、もう散々だったわ」
うわぁ……まさかのテロリストはお姫様とか、これっぽっちも笑えねぇ。
「とりあえずお前、今後はオレの許可と立ち会い無しでの実験は、絶対に禁止な」
「うぅっ……ちゃんと従うから、そんな責めるような目で見ないでよぅ……」
んな事言われても、このままほっといてもしこの研究所まで吹っ飛ばされたら、そん時ゃそれこそラクスター家が終わるんだぞ。
甘い顔なんか出来ねぇよ。




