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諸悪の根源


「はぁ……なんつーか、拍子抜けって感じだなぁ」


「そりゃあそうよ、アリスちゃんは侯爵家のご令嬢だもの、ゆう君だってそこんとこ覚えてたからこそ、どう伝えようか悩んでたんでしょ」


「まぁな」



 結局、オレが悩んでもどうしようもねぇから、隠し事無しで全部伝えたら、初代さんの出自と功績が聞けたのはかなり喜んでた。


 でも、アリスの立場だと能力の使い所が無いからって、そっちはあっさりスルーされたんだ。


 んで、忘れない内に記録しとくって言って、アリスはハウザーさんとミトリエを連れていった。


 イレーヌさんは騒ぎの直前までやってた掃除に戻ったし、ルーナとエリナは騎体を整備してる。



 だもんで今、藍華と話してるのはオレだけ、他のみんなには言えない事だって、お互い聞けるし話し合える。


 さっきチラッと見たこいつの様子からして、何か秘密を抱えてるのは明らかだ。


 しかも、今まで箱入りで外の人間との接触なんて千年単位でゼロだった、そんな藍華が抱える秘密って言ったら、まず間違いなく古代魔導文明絡みだし、もしかしたらこの国の王家だって関係してるかもしれない。


 なのに、これでもしこのまま放置して、後で面倒な厄介事にでもなったら、せっかく手に入れた 紋繰騎(クレストレース) の改造とか運用がやりにくくなる。



 そんなの、オレは絶対に嫌だ!



 なら今の内にしっかり聞いといて、対策考えとく方がいいだろ。


 でもまぁとりあえずは、当たり障りのない話題からだ。



「これが例えばね、まだ侯爵まで出世する前の初代さんの頃なら、貴族の当主が率先して最前線で戦うのも許されてたんだろうし、ゆう君みたいに立場も何もない人は有効活用する。でなきゃ、私みたいに他の世界から来たオタな転移者とか転生者なら、チート能力だって喜ぶわ。けど、魔法を好き勝手に使えないアリスちゃんじゃ、そんな能力あっても困るだけよ」



 言われてみりゃ、アリスは毎日魔物とか魔獣と戦う仕事なんてしてねぇ、それどころかむしろそういう人達の上に立って指示する身だ。


 そんな立場のある奴が、魔法使った時だけ幸運になるなんていう、確実に強くなるわけでもねぇ能力に頼ったり、ましてや調子に乗ったりするわけにゃいかないか。



「そっか、そうだよな。 ……ってか藍華って同じロボット好きでも、オレとはベクトル違うのな」


「あはは、ロボットは好きなんだけどねぇ、機械とかプログラミングなんかは苦手だったから、その分趣味にのめり込んだのよ」



 なるほど、だから初代さんが遺した実行式のコーディングについても気付かなかったのか。


 つっても映画とかアニメ、小説にマンガにゲームからのアイディアだけで、とんでもないモンを七体も造ったんだ、藍華本人もそうだけど帝国の技術者達もすげぇよ。



「オレが言うのもなんだけど、趣味の力ってやっぱ偉大だな」


「結果は最悪だったから素直に喜べないけど、その意見には同意するわ。それに、 紋繰騎(クレストレース) だったっけ。千五百年ちょっと後だとしても、今こうして役に立て……」


「は? 千五百年ちょっと後?」



 まただ、また違和感を感じる。


 藍華がこんな些細な嘘吐いて、オレを騙す意味とか理由なんて何もない。


 けど、犯人っつーか黒幕はもう、予想した。


 だから考えるべきなのは、この違和感を生み出した奴の目的とか狙いは何なのかだ。



「えぇ、そうよ。内部クロックの経過時間はそのくらいだけど、それがどうかしたの?」


「……おかしくねぇか? 言い伝えとかおとぎ話だと、古代魔導文明が滅んでから数千年って言われてんだぜ?」



 そりゃ、文明が丸ごと滅ぶレベルのヤバい状況だったんだし、多少のズレや勘違いはあり得るけど、いくらなんでも倍以上のズレは変だろ。



「でも実際、エンペリオンコアに記録されてる連続的に観測された事実だし、もしコアが故障してたら私は今頃生きていないんだから、間違ってないわよ」


「いや、問題はそこじゃねぇ。いいか……」



 歴史は勝者が創るもんだ。



 でも、争いで文明が崩壊するような危機的状況だと、真の勝者はイコール戦いの勝ち負け関係なく生き残れた奴だけだ。


 まぁ付け加えて言うなら、生き残った中でも一番武力や権力が強いとか、更に生き延びる為に必要な物を多く持ってるとか、そういう奴が勝者なんだろうな。


 けどそうなると、人の記憶が頼りだから記録が断片的になるのは仕方ねぇとしても、 “同じ過ちを繰り返さない為に” って理由で語り継いでるだろうに、起きた時期が大きくズレてるってのは明らかにおかしい。



 特に、生き残りの子孫が王家にまでなってるこの国で、その歴史が語られるんだったら尚更だ。



「それは、確かにその通りだけど……」



 んー、オレがホントに言いたい事を分かってるのかそうじゃないのか、区別はつかねぇけどなーんか、話すのを躊躇ってる事があるみたいだな。


 ……ならもう、いっそこっちから踏み込むか。



「それにな、言い伝えと現状の間にある違和感が、妙に気になるんだよ」



 アリスとかトリィやロレットさんにはっきりとは聞いてねぇけど、この国の王家は古代魔導文明からの生き残りの子孫だ、なんて名乗っていない。


 例えばそれが、血筋の長さとか凄さを重要視する王族や貴族らしくない、下の身分の国民にも親しみやすいような印象を狙ってるってんなら、まだ分かる。


 ただし、その可能性はほぼゼロだと思う。


 なにせ、精神魔法の重ね掛けで普通の人間を戦う為だけの奴隷にする機能をエンペリオンコアに備え付けて、その被害者も確実に出てるんだ。


 つっても、そんな事を平気でやらかす奴の子孫だから、ってのだけが疑う根拠じゃねぇ。


 数百年前はまだ下級貴族のウィンズビル家とラクスター家に、痩せて使えない土地を領地に渡したり、莫大な費用のかかる森林地帯の大開拓を押し付けたりと、下っ端いじめをしてたんだ。


 もし、初代ラクスター侯爵がエンペリオンコアを発見して魔導生物を手に入れてなけりゃ、どっちの家もまず間違いなく、今の時代でも貧しくて苦しい生活を領民も含めて強いられてただろうし、下手すりゃ潰されてたかもしれない。


 しかもだ、三十年前には初代さんが遺した最初の研究所を、インガルやその周辺の領地も含めて、ラクスター家から奪いとってやがる。


 数百年前と三十年前、どっちもその当時の王家の連中とか、その取り巻きがやらかした事だ。


 そう言えれば、言い切れればいいんだけどな。


 どうも、オレはそう思えねぇんだよ。


 むしろ、古代魔導文明にまつわる言い伝えに感じる違和感と共通する、一貫した悪意がある。



「そんな悪意を持ってる奴、心当たりねぇか?」


「そ、それは……」


 さぁ、わざわざここまで踏み込んで誤魔化せねぇ状況を整えたんだ、いわゆる諸悪の根源って奴の正体、お前の口からはっきり伝えてもらうぜ。


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