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初代ラクスター侯爵の正体


「オレと藍華は知らないけど、今のウィンズビル伯爵領での食糧の生産量とかって、誰か分かる?」


「詳しい数字は存じませんが、あちらの領地は王国の食糧庫と称されておりますよ」



 へぇ、そう呼ばれてるなら、初代さんのやった土壌改良はちゃんと上手くいったんだな。



「ありがと、ハウザーさん。んじゃ藍華、初代さんがスライムを創造し始めた頃からの、分布と土壌の情報を一年区切りで表示を切り替えながら、見せてくれ」


「了解よ」



 お、始まったな。


 ……んー、最初の頃はウィンズビル領の土って、農業には使えなかったのか。


 広さだけは国内で一番だけど、土が痩せてて作物なんかろくに育たない土地を領地として渡すとか、ラクスター家の話もそうだけど、この国の王家ってのは下っ端イジメが好きらしい。


 でも、年月が経つ内にどんどん土壌改良が進んでくし、税収は良くなっていったんだろうな。



 ん、百年以上かけてようやく領内全域の土壌栄養素は安定したけど、今度は水分?


 ……おいおい、地下水にまで干渉して土地全体を改造するとか、もうこれ土壌改良っつーよりほぼテラフォーミングだろ。


 一体どんな人物だったんだよ、初代さんはさ。



「これで情報は全部だけど、ゆう君は何か分かったの?」


「あぁ、初代ラクスター侯爵ってとんでもない人だったらしい。土に含まれる栄養素だけじゃなくて地下水の流れも弄ってたし、これもしかしたら作物をダメにする害虫とか病気も、まとめて駆除してたかもしれねぇ」


「何よそれ、帝国時代の私だってそこまでは思い付かなかったのに、初代さんって本当に貴族だったのかしら?」



 本人の素性とか経歴はさすがに分からねぇけど、こりゃ素人の考えじゃなくてプロの仕事ってやつだし、ならその痕跡はスライムの実行式に残ってるはずだ。



「藍華、初代さんが創造したのと原型のスライムの実行式、並べて表示出来るか?」


「はい、どうぞ」


「おう、ありがとよ……って、なにっ!?」



 ちょっと待て、なんで実行式がこんな風になってるんだ!?



「えっ、私何か間違えたのっ?」


「いや違う! ……そうじゃないけどお前、ロボット好きなのにこれ気付かなかったのか?」


「えぇっ!? ロボット好きと何か関係してるの!?」


「ならロボット云々は置いとくけど、初代さんのこの実行式の書き方って、プログラミングの手法と同じなんだよ」


「それってまさか!」



 これだけはっきりした証拠があるんだし、初代ラクスター侯爵は転移者か転生者、そのどっちかなんだろうな。



「ユージさん、何か問題でもあったんですか?」


「あー、まだ確実にっては言えないんだけどな、初代ラクスター侯爵はもしかしたらオレと藍華みたいに、よその世界から来た人だったかもしれねぇんだよ」


「えぇっ!?」


「なんと、まあ……ではユージ殿、その証拠がスライムの実行式にあった、と」


「そうなんだ」



 つってもこれから先を調べるなんて、初代さんの記録が残ってた最初の研究所が吹っ飛んでるから、もうどうにもならねぇしな。


 だったらまぁ、こういう時は素直に頼るか。



 おーい、アルフェ!



『はーい! 呼び出した理由は、ちゃんと聞いたわ』



 そっか、わざわざ応えてくれてありがとよ。


 話す前の確認だけどさ、今回はみんなに直接聞かせるのか?



『悪いんだけど、色々と専門用語が入って話が途切れたり飛びそうだし、勇司君経由でみんなに伝えてくれるかしら』



 あいよ、もう既に思考加速中って事か。


 んじゃ早速、初代ラクスター侯爵について、アルフェが教えていいとこまで頼む。



『分かったわ』



 アルフェ曰く、ラクスター家を興したウィロウ・ラクスターは、オレの居た時代より未来の日本から転生した元日本人だった。


 あっちでの本名は“やなぎ 幸星こうせい”、全世界でも指折りのプロゲームプレイヤーだそうだ。


 んで、どうやってプログラミングとかテラフォーミングの技術を学んだかっつーと、ゲーム知識と学校での授業を通じてだとさ。



 そして本題の、なんでそんな有名人がこっちの世界に転生してきたかってのはだ、本人は気付かなかったけど超能力者だったらしい。



 具体的な能力は、魔法行使時限定の超幸運能力。



 魔法の無いあっちの現実世界だと無意味だけど、ゲームじゃ無意識にでも使えたからプロとして活躍出来たし、その影響で転生した。


 こっちに来る切欠は、直前までプレイしていたフルダイブ型のMMORPGに実装されてた、転生魔法を使ったキャラのリメイクだ。


 でも、あっちの世界でどんな人生だったかは知らねぇけど、こっちじゃ侯爵に上り詰めるまでは相当苦労して、当時のフレメルト公爵家とも対立してた。



 ちなみに侯爵になった主な功績は、前世の知識を活かした数多くの便利な魔導具の開発と普及に、今のラクスター領西部にかつて有った森林地帯の大開拓と、それに伴う大規模な魔獣討伐、これらが理由だ。


 そして、その過程で当時は子爵だったウィンズビル家と知り合って協力しあった結果、ウィンズビル領は王国の食糧庫とまで呼ばれる姿に変わった。



『……とまぁ、柳君と彼に関わる情報はこんなとこね』



 魔法使う時限定の超幸運能力で転生ねぇ……どっちの世界に居れば幸せだったのかは、分からねぇな。



『彼にとって何が幸せか、それは本人以外には誰にも分からないわよ』



 そりゃそうだな。


 あ、そういや初代さんがエンペリオンコアを手に入れた経緯って、やっぱ内緒か?



『うぅん、特に隠す理由も無いから教えちゃうけど、森林地帯の大開拓初期に魔獣討伐してたら、攻撃魔法の余波で地中に埋もれてたエンペリオンコアが出土したってだけの、何の捻りもないただの奇跡ね』



 おいこら女神様っ、奇跡をそんな安っぽく言うなっつーの!


 つかエンペリオンコアを手に入れたのも、超能力が関係してたんだな。



『その後の開拓は、魔導生物を使って凄い速さと規模で進められてたし、幸運だったのは確かね』



 なるほどな。



『あ、ついでに言うと、柳君の子孫であるアリスちゃんやご両親も、その超能力を受け継いでるわよ』



 マジで?



『マジよ。それを伝えるかどうかは、勇司君に任せるわ。それじゃまたねっ』



 おっ、おい!


 そんな人の人生左右しそうな重大情報の扱い、軽く投げ渡していいのかよ……。


 ったく、どうすっかなぁ。


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