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謎の魔導具


「で、あれが例の魔導具か?」


「はい」


「でも、特に変わった様子はないね」



 なんかこう、三人揃って物陰から顔半分だけ出して、状況を探りながらボソボソ喋ってるのって、実際にやってみたら絵面がアレだな……。


 オレ達の視線の先にあるのは、アリスが言ってた古代魔導文明の遺産らしい魔導具なんだけど、見た目は単にデカいだけな無地のサイコロだ。



「おかしいですね、インガルに向かう直前はこう……幻視魔法のように、何も無い空中に見た事もない色々な景色が映し出されていたんですよ」


「なるほどな、最初にこの話持ち掛けた時に、説明が難しいって言ったのはそういう理由か」


「そうなんです、幻視魔法って自分の周り全体に幻を出して、それを誰かに見せるのが一般的な使い方ですから、ユージさん達が鑑定の魔導具や魔導レーダーユニットで見せてくれるまで、あの方法は知りませんでした」


「そっかぁ、もう遥か昔に誰かが……うぅん、多分ユージ君と同じ異世界人らしい皇帝さんが、あの発想を実現してたんだね」



 ルーナの読みは、ほぼ間違いなく正解だろうな。


 高度に発達してた文明が滅亡して大分経ったこの世界で、そんなアイディアいつ誰が思い付くか予測も立たないし、この魔導具の出所は過去の文明だってのはもう判ってる、なら誰がやったかも明らかだ。


 けどそんなの、気にする必要なんてねぇ。



「そう落ち込むなよ、もし今手に入るとしたら遺跡で発掘するしかねぇし、そんなのあっても解析されて新しい魔導具として普及するかも分からねぇんだ、それより人の役に立つ道具を造れたんだって、胸張っとけ」


「うん、そうするよ。ところでさ、なんであれが止まってるかの予想だけど、もしかして魔力切れじゃないかな」



 ……あぁ、幻視魔法で色んな景色を映し出してたからか。


 けどそれ言ったら、造られてもう何千年も経ってるんだろ、なのに今さら動いたなんてどういう仕組み――


「あっ、見てくださいっ」


「え、なにあれ……」


「……ん?」


――アリスが言った通り、何もしてないオレ達の目の前で勝手に動き出した魔導具は、やっぱ幻視魔法を使ってるらしい。



 でもそれより、いくつか気になる点がある。


 次々に映し出される景色は静止画じゃなくフルカラー動画で、しかも監視カメラ風に一定時間が経つと切り替わっていくし、更に言えば内容に纏まりっつーかパターンみたいなのが無い。



 なんだろうな、まるで夢でも見てるような――


「……【鑑定】……ダメだこりゃ」


「なになに、どうしたのっ?」


「鑑定結果がめちゃくちゃな表示でさ、文字なのはギリギリ判るけど、何も読めねぇんだ」


「ひょっとして、壊れているんでしょうか?」


「んー、どうもそうじゃなさそうなんだよなぁ、壊れた魔導具ならナーキスでも鑑定したけど、その時はこんな結果表示になんてならなかったし」


――魔導具の動作に生き物っぽさをなんとなく感じたから、試しに鑑定魔法使ってみたんだけど、何か分かるどころか逆に謎が増えちまった。



 ただし、混乱させない為に二人にゃ言ってないけど、表示が文字だって解った理由はある。


 今までそんな事一度も試してないけど、もし結果が二重に表示されたら、オレが見た状態と同じになるかもしれなくて、ちょうど物とか人の名前の書かれる辺りが、文字を重ねた風に見えたんだ。


 っつってもこれ以上は、鑑定魔法だけじゃ分からねぇんだよなぁ。



「このまま離れて眺めてても話にならねぇし、運良く動いてるとこが見られたんだ、触ったりしてもっと調べてみるか」


「あのっ、それって危なくないですかっ?」


「今のところ特に害は無いし、何よりオレの身体は特別製だぜ、それでもなんか被害が出るとしたら、着てる服がダメになるくらいだろ」



 それに万が一マジでヤバそうなら、それこそ神体能力フルパワーで何とかするさ。



「なんだかユージ君の考え方って、服が要らない蛮族っぽいけどさ、それはそれでどうなんだろ」


「あ、あの……流石に、裸は……」



 お前らなぁ、これから謎の魔導具を本格的に調べるってのに、これじゃ雰囲気台無しじゃねぇか。



「オレは蛮族とか裸族なんかじゃねぇんだから、二人とも茶化したり恥ずかしがったりするより、もっと緊張感持てよ……」


「ごめんごめん、ついね」


「あうぅ……ご、ごめんなさい」


「ったく……とにかく、まず触ってみるぜ」



 さて、どんな材質なのかも解らない魔導具だけど、表面の見た目は金属っぽい感じだから冷たいか、でなきゃ動作してる電化製品みたいに少し温かいかの、どっちかだろ。



 うん、流石は魔導具だ、魔力で動いてるからか、冷たい方だった。



 感触はツルツルしてるけど、やっぱ材質が――


[未登録ユーザーによるエンペリオンコアへのダイレクトリンクを感知]


「……は?」


[未登録ユーザーのエンペリオンキー所持を確認]


「え、ちょ……え、エンペリオン!?」


――待て待て待てっ!



 何がどうなって、今どういう事が起きてるっ!?



「わっ!? なにこれっ!?」


「何をしたんですかっ!?」


「えっ、なんだ……これ……」



 オレ達の周りには、さっきまでの色んな景色が全部消えて、その代わりわけが分からねぇ何かのデータらしい、そんな表示がいくつも出てた。



[未登録ユーザー エンペリオンコアのイグニッションを実行しますか?]


「はぁっ!?」



 え、そんな事言われても、いつの間にか開いた鍵穴らしいスリット見せられても、何をどうすればいいのか――


[未登録ユーザー イグニッション実行にはエンペリオンキー経由のダイレクトリンクが必要です]


「…………これが必要、か」


――こいつ、オレの思考を読み取れるのか?



 強制されたわけじゃねぇけど、謎の魔導具と見比べる為にって持ってきた、あのエンペリオンキーをポケットから取り出す。



 このキーを挿した途端に、爆発とかしねぇだろうな?



[未登録ユーザー 自爆シークエンス実行は不可能です]


「……やっぱオレの考えてる事が、読めるのか」


[ダイレクトリンク中の情報交換は双方向設定です]


「設定の変更方法は?」


[各種設定の変更にはイグニッション実行が必要です]



 つまり、エンペリオンキーとやらを挿せば、この先何か解るのは確実って事だな。



 だったら――


「よし、イグニッションってのを、これから実行するぜ」


「わ、分かったよ」


「……お願いします、ユージさん」


――開いたスリットにキーを挿した瞬間、白くて強い光がオレ達三人を包み込んだ。


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